第6章155話:瞬間移動
しかし、彼女は次の瞬間、ニッと笑みを浮かべた。
「そやけど、見切ったわ!」
「!!?」
ルミが回転しながら斬りかかったとき、チサトンが急に間合いを詰めて刀を振りかざしてきた。
チサトンの間合いの詰め方は、実に絶妙なものであり……
ルミは攻勢だったはずの状態から、一転して守勢に回される。
チサトンの攻撃を、ルミは受けた。
(お、重い!?)
チサトンの攻撃は、さっきとは段違いである。
どうやら、さきほどはルミと同様、本気ではなかったようだ。
とてつもなく重い斬撃を、剣の腹で受けたことで、ルミは10メートルは後退させられる。
腕がビリビリとしびれた。
(うーん……さすがに強いですね)
とルミは分析する。
しかし、わかったこともある。
チサトンの剣術の技量は非常に高い。
だが根本的な戦闘能力はそこまで高くない。
攻撃力、防御力、敏捷……そういった基本的なステータスでは、ルミのほうが上回っている感じだ。
(瞬間移動を解禁しましょうか)
瞬間移動を使って押しきる―――――
それができなければ、少しずつ全力を出していく。
まだルミは全力の4割程度しか出していない。
それを5割、6割、7割と段階的に引き上げていけば、いつかチサトンがついてこれなくなるはずだ。
「瞬間移動、使うんか?」
「!!」
チサトンが指摘してきて、ルミは眉をぴくりとさせた。
チサトンが言った。
「ええで――――使えや。瞬間移動を使ったあんたの剣技、打ち破ったるわ」
「……」
チサトンが剣を構えつつ、精神統一で集中力を高める。
ルミは言った。
「わかりました。では、遠慮なくいかせていただきます」
そして、瞬間移動スキルを発動する。
次の瞬間。
「!!」
ルミはチサトンの背後に瞬間移動。
そのまま回転斬りを放った。
「くっ!?」
チサトンが慌てて刀を振るって合わせる。
……防がれた。
しかし、チサトンの表情から余裕が消えた。
さすがに瞬間移動の対処は難しいのだと理解する。
「はっ!!」
ルミはステージを上を滑りながらチサトンに高速接近する。
そして回転斬り――――
と見せかけて、瞬間移動。
チサトンの側面に現れて、剣を放った。
「ぐあっ!?」
ついにチサトンに攻撃が入る。
だがここで止まらない。
ルミはさらに瞬間移動でチサトンの背後へ移動する。
その背中に剣を放つ。
「くっ!!」
チサトンがなんとか気配を察して避けた。
背中をかすめたものの、ヒットにはならない。
チサトンが笑う。
「ふう……さすがに瞬間移動は手強いな」