第6章151話:決勝前のあいさつ
―――最終章・第6章―――
午後13時。
控え室。
いよいよ、決勝戦が始まる時間だ。
ルミは、立ち上がって、控え室を出る。
廊下を歩いていくと、選手入場口の前に、袴姿の女性が立っていた。
チサトンである。
「いよいよ決勝やな」
声をかけてきた。
ルミは答える。
「……はい」
「あんたのことは、メイが敗れたあとからずっと注目してたで。めちゃくちゃ強いやんか。こんな新人がおったなんて、知らんかったわ」
「えっと……恐縮です」
「決勝は、正々堂々、勝負や。よろしくな」
チサトンが握手の手を差し出してくる。
ルミは、その手を握り返した。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「うん! ほな、いこか!」
互いに手を離す。
チサトンが、選手入場口を歩いていった。
その後に続くように、ルミも入場口を通過していく。
会場に入る。
その瞬間、爆発するような歓声が炸裂した。
鳴り止まぬ拍手。
喝采。
フラッシュを焚く報道関係者たち。
その中を悠々と歩いていくチサトン。
ルミも、静かに歩く。
やがて二人はステージの上にあがった。
歓声が上がり続ける中、実況の司会が始まった。
神埼『さあ、みなさん、いよいよ、大阪大会も最後の一戦となりました!』
神埼『大阪大会決勝……開幕でございまああぁぁす!!』
オオオおおおおおおおおおおっ……!!
……と、歓声が轟く。
観客席は満席であり、活気も熱気も尋常ではない。
神埼『実況は引き続き、神埼リツナと、新田恭子の二人でお送りして参ります! ヨロシク!』
神埼『決勝戦を始める前に、新田さんから、決勝戦についてコメントをお願いしたいと思います』
新田『ん……私か』
新田『そうだな。もう、みんな理解していると思うが、今年の決勝戦を争う二人は、別格だ』
新田『東京大会でも、これほどの強者がぶつかり合うことはないだろう。バトルアリーナ史上、最高の一戦になることは、間違いない』
ふぉおおおおおおおおおおおおっ……!!
……と、観客たちが盛り上がる。
誰もが予感していたことだ。
今年の決勝は、例年にない熱戦になると。
戦闘のプロが集まる魔法局の局員、新田さえ言うのだから、いよいよ予感が確信に変わる。
新田『このような戦いに立ち会えたことを、喜ばしく思う。純粋に私も、この戦いを楽しんで観させてもらおう。……以上だ」
神埼『ありがとうございました! 私も、決勝の開始が楽しみでなりません! さっきから心臓がバクバクです!』