第1章14話:優勢
(むむ……さすがボス。なかなか手強いですね)
ルミは鎧騎士の剣術に感嘆する。
敵の攻撃が早すぎるし、重い。
いや、それだけじゃない。
フェイントや瞬間移動を織り交ぜて撹乱してくる。
しかもコロコロと剣撃の威力やタイミングを変えるチェンジオブペース。
魔物とは思えない戦略的な戦い方。
ルミは、まるで達人と死合っている気分になった。
だが……
それゆえ、高揚した。
「面白い……!」
ルミもまたギアを上げる。
彼女は、ここまでは弱い魔物ばかり倒してきた。
……本当はそれらは弱くもなんともないハイランクの魔物なのだが、ルミにとってはただの雑魚モンスターでしかなかった。
しかし、このダンジョンボスは違う。
互角に打ち合える強敵。
そこそこ本気で殴りあえる相手。
ルミは不敵な笑みを浮かべて歓喜する。
「ハアアアアァァッ!!」
裂帛の気合を込めて、ルミは魔物騎士と剣を交える。
火花と激しい衝突音が鳴り響く。
しかし。
徐々に。
ルミが騎士を押し始める。
鎧騎士の攻撃――――
特に瞬間移動攻撃に、ルミが対応し始めたのだ。
鎧騎士は嫌なタイミングで瞬間移動スキルを使ってくる。
しかし逆に言えば、タイミングが読みやすいともいえる。
鎧騎士にとって、ここぞという場面で瞬間移動を行うのだから。
それをルミが読み切って、カウンターへとつなげだしていた。
「フッ!!!」
呼気を一つ。
カウンターの攻撃が鎧騎士を襲う。
クリティカルヒットであった。
騎士の鎧に大きな傷が入り、その巨体がよろめく。