第5章130話:町を発つ
5月下旬。
朝
晴れ。
いよいよ大阪大会を目前に控える。
マンションの前に立つルミ。
彼女は、鞘坂市を発つことにした。
「んしょ……」
アイテムバッグから自転車を取り出す。
新しく買ったロードバイクである。
実は……
ルミは、趣味として、自転車を始めることにしたのである!
なので、このロードバイクを使って、大阪まで向かう。
電車は使わない。
現在、ルミがいる長野県から、大阪府までの距離は300~400kmといったところだ。
これぐらいの距離であれば、ロードバイクなら1日で辿り着く。
……が、そこまで急ぐつもりはなく、のんびり2~3日かけて走行するつもりだ。
(自転車旅行……楽しみです!)
ルミにとっては、初めてのロングライド。
ウキウキの気分である。
既に、服装はサイクルウェアである。
あとはヘルメットをかぶって……。
サイクリング、スタートだ!
河川敷沿いの道を走って、国道に出る。
そこからはひたすら国道に沿って走り続ける。
走る。
走る。
走る。
うん、速い。
クロスバイクとは段違いだ。
さすが速さに特化したロードバイク。
車と大差ないんじゃないか?
あまりスピードを出しすぎると危険だ。
さっさとサイクリングロードに移動してしまおう。
というわけで数分後。
サイクリングロードに到着した。
サイクリングロードとは、自転車用の道路のこと。
川沿いなどに設けられた直線的な自転車道。
視界が開けており、うっかり歩行者とぶつかったりする危険も少ない。
ここだと思い切り走ることができる。
ルミはロードバイクを加速させた。
ぐんぐんスピードが上がっていく。
一般的な自転車の速度を遥かに上回り、なおも速度を上げていく。
「これは……良いですね」
風を切る感覚が気持ちいい。
視界を過ぎていく景色がめまぐるしく変わる。
このスピード感。
爽快感。
最高だ。
ルミは、思わず微笑みをこぼしながら、ひたすらサイクリングロードを駆け続けた。