第5章126話:相談
その日の夕方。
ルミはコトリをマンションに招く。
それから、バトルアリーナの件について相談することにした。
コトリはルミの話を聞くなり、仰天した。
「ええ!? ルミちゃん、バトルアリーナに出場することになったの!? しかも大阪大会ってすごいね!」
ルミは答える。
「いいえ。参加のお誘いが来ただけで、まだ出場するとは決めていません。出るかどうか悩んでいて……」
「うーん? なにか出られない理由でもあるの?」
「そういうわけではありませんが……ただ私は、ダンジョン配信者ですし、本業と関係ないことに取り組むのはどうなのかと思いまして」
「それは……気にしすぎじゃないかな? 別に本業じゃなくても、いろいろやってみていいと思うよ。たとえばサークルの活動だって、本業と関係ないでしょ?」
「ん……確かにそうですね」
「それに大会に出ることで、ルミちゃんねるに興味を持ってくれる人も増えると思うよ! チャンネル登録数もさらに拡大するんじゃないかな?」
なるほど……
大会で活躍すれば、ルミちゃんねるの宣伝にもなるというわけか。
確かに大会の映像はテレビ・ネットなどで大々的に放送されるので、知名度の向上にはつながるだろう。
「だから、絶対に出るべきだよ! 私も、ルミちゃんの一ファンとして、アリーナで戦ってる姿を見てみたいなぁ」
う……
そんなふうに言われたら、やるしかないという気持ちにさせられる。
まあ、でも、出てみてもいいかな。
別に出場したくないわけじゃなかったし。
せっかくのお誘いなのだから、断るのももったいないかもね。
「わかりました。じゃあ、出場してみます」
「おお! やったぁー! 楽しみ!」
「あはは……まあ、あっさり負けないといいんですが」
「ルミちゃんなら絶対負けないよ! というか、優勝候補だよ! だってルミちゃん、めちゃくちゃ強いんだもん」
「い、いや……私なんて、全然」
褒められて、顔が熱くなってしまう。
コトリが尋ねてきた。
「あ、大阪大会っていつ開催だっけ?」
「えっと……今月末ですね」
5月末の休日二日と、祝日を使った三日間にわたって開催される。
「なるほどぉ……なら予定あけておかないといけないね。今からチケット取れるかな?」
「え……? 現地にくるつもりですか? 大阪ですよ?」
「ふふ。そういう旅行も、大学生っぽくて良いと思わない?」
コトリはそう述べて笑った。
それからコトリが帰ったあと、ルミは、大会出場に関して、運営のメールに返信を出した。
これで大阪大会への出場が確定する。
(わざわざコトリが観にきてくれるなら、無様な戦いはできませんね)
せっかく大阪まで観戦しにきてくれるのに、一回戦敗退なんてしたら最悪だ。
負けられない。
負けるつもりもない。
(どうせ出るなら、狙うは優勝です)
ルミはそう意気込んだ。
そして、その日からルミはダンジョンでの修行やトレーニングに励むことになった。