第4章121話:バーベルとベンチ
あらかた試用してみた後、ルミは言った。
「私、バーベルとベンチ、欲しいです!」
お姉さんは微笑んで答えた。
「そうかい。じゃあ一つずつ買っていくかい?」
「はい!」
「君のパワーは規格外だからね。ジムでは出していないぶっ壊れ重量のバーベルと、それに耐えられるベンチを用意してあげないとね」
「本当にお手数おかけします。ちなみにいつごろ受け渡しができますか?」
「すぐにできるさ。モノはあるんだ。ただ、持ち運びに手間がかかりそうというだけでね」
「そうなんですか。あ、お金は家にあるので、今から取ってきますね」
「うーん。そういうことなら、バーベルとベンチを家に届けさせるよ。支払いはそのときにしてくれたらいいさ」
「なるほど。じゃあそれでお願いしてもいいですか?」
「了解。すぐに手配しよう」
話が済んだので、ルミはマンションに帰ることにした。
ルミがマンションに着いてから10分ほどして、小型トラックが訪れ、バーベルとインクラインベンチを運んでくれた。
支払いを済ませ、ルミはアイテムバッグにバーベルとベンチを放り込む。
部屋のリビングに立って、ルミはつぶやく。
「よし、筋トレグッズ、ゲットです! ……あれ?」
そこで首をかしげる。
私、何をしていたんでしたっけ……?
というわけで、仕切り直しだ。
結局、ひとけがなく、それでいてフルパワーでトレーニングができるところというのは、なかなか存在しなかった。
実家で暮らしていたときは、山の中で鍛錬を行っていた。
山ならば存分に暴れても、問題になることはなかったからだ。
なら、鞘坂の近くにある山でも探して、そこで鍛錬をしようか?
うーん、何か違う気がするな。
もっと、基本的なことを忘れている気が……。
「あ……そうでした」
そのとき、ルミは名案をひらめいた。
「ダンジョンでやればいいじゃないですか! それなら、いくら暴れても問題にはなりません!」
灯台下暗しである。
ルミはさっそく近場のダンジョンを探し始めた。
すると【鞘坂第三ダンジョン】が、最適そうだとわかった。
【鞘坂第三ダンジョン】はそこそこ上級者向けのダンジョンであり、人が少なく、ひっそりトレーニングを行うには向いているようだ。
しかもマンションから20分ほどの距離であり、そんなに遠くもない。
よし、ここに決めた。
さっそく明日、いってみよう。