第3章104話:竜人4
ルミの斬撃。
そこに竜人王の斧がぶつかる。
さらに斬撃。斬撃。斬撃。
激しい火花が散った。
剣と斧がぶつかるたびに、空気の圧が周囲に広がり、壁や床に損傷を負わせていく。
「ふンッ!!!」
そのとき、竜人王の気迫のこもった下段からの一撃が炸裂した。
ルミが剣で受ける。
しかし勢いを殺しきれず、ルミは宙にすくいあげられた。
空中に飛ばされたルミを、竜人王が跳躍によって追いかける。
だが空中戦はルミの領域だった。
竜人王がルミに斬りかかるも、ルミは【瞬間移動】を使って竜人王の剣をかわし、側面へとワープした。
「なんだと!?」
さすがに予想外だったのだろう、竜人王は目を見開いた。
まんまと側面を取ったルミは、竜人王に強烈な斬撃を叩き込む。
驚きに意表を衝かれる形となった竜人王は、身体をそらして回避を試みるも、肩口を大きく切り裂かれた。
血がほとばしる。
「くく、ははははは!! 我に傷をつけるか!? 面白い!!」
互いに床へ降り立つ。
ルミも竜人王も、着地してノータイムで踏み込み、得物をぶつけ合う。
細かく移動しながら、位置を変えながら、あるいは疾駆しながら。
致命の攻撃を放ち続ける。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
『いけええええええええええええええ!!』
『達人同士の殺し合いwwwww』
『ルミいいいいいいいいいいいいいいいい!!』
『ルミ強すぎるわ……』
『敵もやべえなコレ』
『魔王騎士レベル?』
『ルミの強さは変態的だな。どうやったらここまで強くなれる?』
『速すぎるwwwwwwww』
『高速再生して観ているようなスピード感だな』
『ちょっとルミが押してるか?』
「なんて戦いなの……」
隅のほうに避難し、観戦していた来花はひそかにつぶやく。
戦いの余波がここまで飛んでくるほどの激戦だ。
尋常ではないエネルギーのぶつかりあい。
形勢は、互角に見える。
しかし――――わずかにルミが押していた。
戦闘に瞬間移動を織り交ぜはじめたからだ。
瞬間移動を効果的に使うことによって、ルミは、形勢を優位に進めている。
わざと吹っ飛ばされたように見えて、即座に瞬間移動で同じ場所に戻り、カウンターを繰り出す。
高速で瞬間移動をして残像を作り、攻撃の位置を定ませない。
フェイントや撹乱、攻撃にフェイクを作ることによってルミは、竜人王を翻弄しはじめていた。