第3章102話:竜人2
悠々と舞いながら、敵を切り伏せていくルミ。
斬撃を受けた竜人兵が次々と倒れていく。
(すごい……)
来花は、その圧倒的な剣技に、ただただ見惚れた。
魅せる戦い方というだけじゃない。
ちゃんと威力があり、敵の目を撹乱しながら、効率よく殺していってる。
(あたし、すごい人と探索してる……)
かつてここまで極まった個人を見たことがない。
滅茶苦茶なダンジョン攻略。
圧倒的な武力。
剣術の美しさ。
どれを取っても、隔絶している。
(いいな……)
来花は思う。
なるほど。
配信者として、あっさり抜かれてしまうわけだと。
だって……来花自身も、ルミの配信を追いかけたいと思ってしまった。
きっと自分は、この探索が終わったあと、ルミのチャンネルを登録してしまうだろう。
彼女がこれからどんな攻略をするのか、
彼女がどんなふうに来花たちを驚かせてくれるのか、
観てみたい。
――――でも。
逆にルミは、来花のチャンネルを登録してくれるだろうか?
……しないだろうな。
仮にしてくれたとしても、それはきっと義理だ。
心から来花の配信を見たくて、登録してくれるわけではない。
……悔しい。
来花は強く思う。
追いつきたい。
負けたくない。
置いていかれたくない。
そう思っても、追いすがることさえ出来ない。
どこまでも突き放されていくのだろうと想像できてしまう。
でも……。
(わかってるわ。あたしは凡人だもの)
来花は、自分が平凡だと理解している。
それでも、天才がひしめくダンジョン配信の世界で、上を目指したいと思った。
最初からわかっていたことだ、とんでもない怪物がいることなんて。
だから腐らない。
学ぼう。
この才能から。
そして一つ一つ、丁寧に積み上げていくのだ。
知識を、技術を、経験を。
それこそが、新条来花の配信道である。
来花はルミを注視する。
ルミは、既に30体近くの竜人兵を蹴散らしていた。
そろそろ全滅する。
「ハアアアッ!!!」
ここにきてギアをあげる。
残った竜人兵は2体。
もはや対抗する術もなく、闇雲に剣を振るうが、ルミは余裕でそれらを回避し、ジャンプして空中斬りを放った。
2体の竜人兵は首を裂かれて死滅する。
竜人王を残し、殲滅完了である。