第1章10話:星石
3Fも楽々と突破した。
3Fはそこそこ長く、ドラゴンウルフやタイラントオーガをたくさん狩ることになった。
特にドラゴンウルフは数が多く、ドラゴンウルフゾーンと言ってもいいフロアだった。
ここでルミはドラゴンウルフを斬殺しまくり、リスナーを驚嘆させた。
ただ、この3階の突破にはそこそこ時間がかかった。
フロアが広かったことと、かなり入り組んだ迷路であったからである。
しかし踏破に手間取ったあいだにSNSでは大きなバズの波が起こっていた。
それによって4階への階段を下りるころには、同接10万を超えていた。
と、4Fに到達してすぐ。
正面に続く通路。
その右側の壁に堂々と宝箱が置いてあった。
さっそくルミは開けてみる。
すると、宝石らしき石が入っていた。
「おお。宝石でしょうか。これは高く売れそうですね!」
ルミはその石をストックしておくことにした。
アイテムバッグに放り込む。
コメント欄がまたもや狂乱する。
なぜなら、ルミがストックした石は、ステータスを一時的にアップさせる【星石】
……のフェイクだったからだ。
つまり偽物。
宝石によく似ているが、地上に持ち帰ると、ただの石ころに変わってしまう。
クソみたいな石である。
『それ持っていくんかよw』
『それ宝石ちゃう。星石の偽物や……』
『よく出てくるやつやろコレ』
『星石の偽物は頻出だよな』
『偽物やんけ!!』
『ゴミに引っかかっててワロタw』
『スキプラを捨ててゴミ石を拾うのかよwww』
『見分け方しらんのやなwwww』
『【悲報】最強配信者、まんまとゴミに引っかかるww』
『つーかそこらの宝石よりスキプラ売ったほうが儲かるやろ』
『あかん……この配信者、面白すぎるwwwww』
『まあ俺もたまに引っかかるからな……』
ルミは剣術だけなら天下無双といえる達人である。
しかし、ダンジョン探索は初心者であり、世間知らずでもあるため、ところどころポンコツな攻略をしてしまうのだ。
剣術は凄いのに、攻略が下手。
その絶妙なギャップが、視聴者の心をわしづかみにしていた。