桜の木はいつもより綺麗だった
次の朝起きたら、隣にリオさんはいなくて
森「!!……リオさん…
リオさん!!」
松「ただいま。
あ^_^さやかさん起きましたか?
どうしましたか?」
森「…リオさん…
その…消えてしまったのかと…
すみません…。怖くなって( ; ; )」
松「ごめんなさい…。
冷蔵庫に、食材があまりなくて
買いに行ってて…
不安な思いさせてすみませんでした。
(ぎゅっ)(抱きしめる)」
本当に怖かった。
朝の日差しが私の頬の涙をキラキラと照らしながら、一人になってしまったんだと
思わせられた。
朝の朝食を二人で食べるのは、久しぶりで
いつもはバラバラだから、新鮮だった。
松・森「「いただきます」」
森「ぅん!この玉子焼き美味しいです!」
松「そうですか^_^よかったです!
これ、隠し味入ってるんですが、何か
わかりますか?^_^」
森「隠し味?…
う〜ん……ちょっと香ばしい感じがするから、お味噌?とか?」
松「ブブー。違います^_^」
森「じゃあ…お醤油?」
松「ハズレです?
正解は、おせんべいです!」
森「えー?!Σ੧(❛□❛✿)おせんべい?
わかりませんよ〜 (笑笑)
おせんべい入れたんですか?」
こんな楽しい朝ごはんは初めてで、
リオさんと笑い合って食べたご飯が
とてもおいしかった。
松「食感がいいかな?と思って入れたんですが…ないですね笑」
森「ふやけちゃったんですよ笑」
こんなに笑って、たわいもないことでたくさん笑って、笑って…
この時間がいつまでも続けばいいのに…
松「そうだ!夕方、一緒に桜の木を見に行きませんか?」
森「え?
桜咲いてませんよ?いま、冬ですから^_^
私は構いませんけど…今日は雪降りますし…大丈夫ですか?」
松「はい!大丈夫です!
いいんですよ!桜は咲いていなくても
それに、なんかすごく見に行きたいんです!冬の桜の木ってどんな感じか見てみたいですから!」
こうして、夕方に二人で
桜の木を見に行くことにしました。
そして、天気予報通り雪は降って
しばらくしてやんだ。
公園の近くにある桜の木を観に…
森「うわ〜!冬の夕方ってくらいですね!
でも、雪止んで良かった^_^
結構積もったみたいで…」
松「そうですね^_^
キラキラしてて綺麗です。
足元気をつけて下さいね^_^
僕もまさか、冬の夕方がこんなくらいとは
桜の木の横に街灯があってよかったですね!街の方に感謝です」
夕方というより、まるで夜。
時間帯ももう夜になる。
桜の木の下についた…
松「わー!こんなに大きかったんですね!
しっかりと立ってて、少し雪が積もっても
雨の日も風の日も頑張ってたんですよね」
森「そうですね^_^
頑張って、頑張って、
今日も頑張って立って、すごいですね!
桜の木さん、(手を当てる)」
しばらくして、また雪が降ってきた。
森「雪も降ってきましたし、そろそろ帰りませんか?風邪ひいたら大変ですから」
松「そうですね^_^
帰りましょう。」
さやかが帰ろうと歩き出して、
ズバッと、雪の上に何かが落ちたような音が聞こえた。
さやかが振り返ると、
そこに、膝から崩れ落ちるリオさんがいた。
森「リオさん?…。
大丈夫ですか?やはり寒かったんじゃ…
立てますか?」
松「さやかさん…僕の手が…」
心配して駆け寄るさやかは立たせようと手を貸すも、リオさんの一言で凍りついた。
松「僕の手が、透けて…透明に…」
森「そんな…
雪でそう見えるだけかもしれません!
(触ってみようとするも、通り抜けてしまう)
リオさん…こんな急に…だって
今まで大丈夫だったのに…そんな」
手だけでなく、リオの身体の周りから
どんどん透けていくのがわかった。
森「いやです…いやです!
行かないでください!
まだ、私たち付き合って9ヶ月ですから!
まだまだこれからですから^_^。
これから…(>_<。)」
松「さやかさん、
顔を上げてください。」
森「これから…まだ二人でやりたいこと、
行きたいところいっぱいありますし、
こんな…ね…」
松「顔を上げてください!
森「…。(顔を上げる)」
さやかさん…
大好きです、僕と結婚してください
(口づけ)」
そう言って、抱きしめあった頃にはもう…
リオさんの身体を通り抜けて
すぅーっと消えて行った。
最後に、大好き と 結婚してください
を残して…
森「…ぅ…(涙)そん…な…
結婚…リオさん。私も大好きです…」
桜の木の下で、崩れ落ちて泣くさやかの頬に触れた降る雪はいつもより冷たくて、
涙は止まることを知らずに、ポロポロと
こぼれ落ち続けた。
そして…リオさんが消えた日から
4年が経とうとしていた。
さやかも、いい年齢になり、
命日の日には、毎年桜の木の下に来て、
森「リオさん、来ましたよ^_^
今日は風が強くて、私の体が飛ばされるかと思いましたよ。
(木におでこと身体をつけて、目を閉じる)
ずるいですね…リオさん…
手紙を書いていたんですね。
あなたが大切にしていた、私が作ってプレゼントしたアルバムに挟んでありました。
松「さやかへ
最初は生きていけるか不安だった僕に、声をかけてくれました。あのマンションでは、僕を除け者だと言う人が多く、もう生きるのを諦めかけていました。
そんな時に、さやかさんがご挨拶に来ました。少しドジな人で、それでも常識や言葉遣いが丁寧で、不思議なことに、僕はあなたに興味を持ちました。
それから、ご飯を作って持ってきてくれたりしたこともありましたね。あの時のたまごうどんは、とてもあたたかくて、美味しかったのを覚えています。
はじめての恋人になってくれたさやかさん、人間と吸血鬼のハーフの、僕みたいな人を
好きになってくれてありがとう。
この手紙が読まれる頃にはきっと、僕はあなたのそばにはいないかもしれません。
どうか、泣かないでください。
僕はあなたの笑顔が一番大好きです!
さやか、愛してるよ
松田リオ」
森「あなたがいなくなった時は、たくさん泣いて、あの家は私だけになって、とても寂しかったのを覚えているわ。
もう歳をとって、今あの家にはいないけれど
リオさんと出会った桜の木が見える施設にいます。そろそろ戻らないと心配されるので、
また、来ますね
私も大好きですよ…リオさん」
次の年の春に、桜の木の下で
さやかは眠るように、座ったまま息を引きとりました。
近くを通りかかった人がさやかを見つけ
見た方が言うには、
その顔は、安らかで
どこか笑みを浮かべて見えたそうです。
END
ここまで読んでいただきありがとうございました^_^