はじめての温泉デート⁈と残り少ない時間
この前は、仲良くなって
衝撃の秘密を知った隣人、松田リオさんと
お付き合いをすることになりました。
下の名前で呼んでほしいと言われて、リオさんと呼ぶことにしました。
そんなリオさんは吸血鬼で、稀な血を吸わなくても大丈夫な人。
それにとても優しい人。
今日は、リオさんと遠くの温泉旅館へ行くことになりました。
小旅行?とでもいうのでしょうか^_^
二人で、こうした形で過ごすのは人生初めてかも知れません。
日記もサボるほどにリオさんに夢中になっていました。お恥ずかしい限りです。
次のおやすみの温泉旅館、とても楽しみです。
森野さやか
森「日記久しぶりに書いたから…ちょっとグダグダになっちゃったかな?(⌒-⌒; )
何着てこうかな…はじめてのデート?
いや…私って何似合うのかな?
今までそういうのあまり気にしたことないから…リオさんはありのままでいいよって
いつものさやかさんが好きだって言ってくれたけど…難しいな…」
・・・・・温泉旅館当日・・・・・
温泉旅館までは、バスで移動。
森「ドキドキしますね!こういう旅行は、
はじめてなので。」
松「そうですね!僕もドキドキします。
誰かとどこかに出かけたこともなかったですし、恋人と行けるなんて思いもしなかったです^_^」
森「(〃ω〃)」
松「初めてということは、初旅行ということですか?」
森「あ!いえ(^◇^;)旅行自体は何度か行ったことあるんですが…恋人と言える人とは
そういう体験がないので。
恋人なんていたことなかったので。」
松「そうなんですか…もったいないですねこんなに素敵な方の魅力に気づかないのは。」
いきなりイチャイチャと会話が始まって
バスの道中はずっと話をして、こんな感じの雰囲気だった。
温泉旅館について、周辺の観光。
名物の食べ物を食べたり、有名なスポットに行って写真を撮ったり、リオさんと
たくさんの思い出を作りました。
旅館に戻り、お食事をいただいて
温泉にも入って、とても素敵な時間を過ごしました。
旅館から見えるお月様の灯り、
夜景を眺めながら、二人で話をした。
森「改めてこんな時間を過ごすって新鮮で
恋人と過ごせるという幸福さは、今までの中で一番嬉しいです^_^
お誘いいただき本当にありがとうございます^_^」
松「いえいえ^ ^こちらこそとても楽しい時間です。さやかさんと一緒なら大丈夫だと思えます^_^」
森「そう言ってもらえて嬉しいです!」
静かで、落ち着いた空間に二人の恋人が
最初で最後の思い出を作り、時間はみるみる過ぎて行った。
その夜、寝静まった頃に
何やらうめき声のようなものが聞こえてきた。
外で犬や猫などがじゃれているのだろう。
しばらくしてもまた聞こえるので気になって何かと思い起きると、
隣からだった。
そう、リオさんだった。
森「どうかされましたか?大丈夫ですか?
どこか痛いんですかΣ(・□・;)
誰か呼びましょうか!」
松「大丈夫です……ぅ…
っ…大丈夫ですから…
最近こうなんです。」
心配になり明かりをつけると、たくさんの汗をかいて、苦しそうに胸を押さえていたリオさんがいた。
森「でも…
苦しいのでしょう?…誰か呼んだ方が」
松「大丈夫…ですよ…さやかさん。
少しすれば治ります…ので…。」
そばにいるのに、何もできないことがつらくて仕方ないさやかは、ただ治るまで背中を撫で続けた。
そして、しばらくして…
リオさんの言った通り落ち着いた。
松「ありがとうございました…すみません
せっかくの旅行が、ご迷惑をおかけする形になってしまって…」
森「そんなことありません!
迷惑なことなんか何もありません。
落ち着いて良かったです。
あの…胸のあたりが苦しかったんですよね?帰ったら、一緒に病院行きませんか?
吸血鬼だって言っても、リオさんは人間に変わりはないんですよ!大丈夫です。
私が病院の方にお願いすれば…」
松「もう行ってきたんですよ。
内緒にしてましたが、もう病院には行ってきたんです。でも、なんの異常も無く
お医者さんも首を傾げていました。」
森「そんな…こんなに苦しんでるのに」
原因は何か、医者でもわからない事があるとなると、リオさんをどうしたら助けられるか考えていた。
松「わかるんです…
僕の体がこうなる理由が。
話さなくてはなりません。
でも、せっかくできた思い出が
僕のせいでつらいに変わるのはいやです。」
森「そんな事はいいんです!
リオさんと一緒なら場所なんてどこでも…
目の前で苦しんでるのに、何もできないのは納得いきません。助けたいんです…
何かできる事があれば、なんでも言ってください。今はリオさんのそばにいたいんです」
今にも泣きそうな目で、リオさんをみて
リオさんも話してくれた。
松「僕がなぜ吸血鬼になったのかわからないってお話をしました。
でも、思い出したんです。
さやかさんとお花見に行った日、
桜の木を見てたら思い出したんです。
僕は、人間だった頃は親からひどく虐待を受けて、誰にも助けられないまま大人になって、家を出たのは高校の時で、頑張ってバイトもして、人と話す機会も少なくなって、そんなある時、僕の体に病ができたんです。膵臓がんでした…
もう医者には助からないと言われて、
ただただやりたい事を探して、
でも無くて、人から愛をもらわずに生きてきたから、何もかもかどうでもよくて
そんな時でした。
もう衰弱していく僕の身体は
フラフラとたどり着いた桜の木の下で
「あぁ、このままここで死ぬんだ」って…
その時見た桜は、生きてきた中で一番綺麗で、初めて僕は感情があるんだってわかって…なぜだか涙も止まらなくなってて…
もう意識も朦朧としてた頃に
人が近づいてきました。
サビという名前を名乗った男の人
が、「お前は生きたいか?それともこのまま死にたいか?」って聞こえてきて、
桜を見て生きたくなったと言うと、
首のあたりを刺す感覚があって、それと共に気を失ったんです。」
森「そんな事が…( ; ; )」
あまりのエピソードに言葉を失い涙を流して、リオさんの話に耳を傾けて聞いた。
松「僕は公園でっていいました。
公園は公園ですが…でも、はっきり思い出したのは、僕が小さい頃に一人で遊んでた場所だったんです。叩かれるのが嫌で、いっそ僕なんかって公園に行って、家の形をした、ハウス滑り台の中でよく過ごしてたんですが、そのハウス滑り台の中にいたんです。もちろん大人ですから、少し狭くて
その後、知らない子供たちに、人が寝てるよって声で気がついて、この前話した通り、吸血鬼だという記憶しか覚えてなかったんです。そこから今まで人間として普通に生きてきました。そしたら、引っ越しだ先であなた、さやかさんに出会えたんです。」
森「( ; ; )こんなに近くにいて、
リオさんのつらさになにも気づかなかったのは…私の…私が気づいてあげられたら…」
松「さやかさんは何も悪く無いんですよ。
僕も思い出すまでは特に大丈夫だと思ってましたし、思い出した時は流石にショックでしたが、今は大丈夫ですよ。^_^
それで、この胸の痛みの原因なんですが…
思い出した中に、サビさんが言ってた事があって、「吸血鬼になった以上、もちろん血を吸って生きなくてはやがて灰となって消えてしまう。だが、人間として生きた場合生きれる可能性もある。そのかわり体は血を与えられない代わりに、苦しみとして部分的に痛みを生じる。」と。
でも、サビさんが言ってた事は事実でした。最近になって気づいたんですが、鏡に映らないんです。僕…
吸血鬼になってからでも見た鏡では、ちゃんと映ってたんですが、いつのまにか透けてる?ような気がして…特に手が透明で…
僕びっくりしたんです。鏡の僕の手は、無くて見るとちゃんとあって…
僕、消えちゃうのかな?…( ̄▽ ̄;)
今は大丈夫だけど、このまま…」
森「そんな事…させません。
どんなことになっても、私はリオさんの隣にいます!消えちゃうなんて…そんな
いやです」
つづく