表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜  作者: 万実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/127

みつきちゃんはぼくたちが守る!

「「みつきちゃん!!」」


お酒の匂いが回り、具合が悪くなった私の元に、コマケンが駆け寄った。


ユキちゃんが私の頬をぺろっと舐める。


うう、お酒を飲んだわけでもないのに気持ちが悪くて頭がズキズキする。

相当強いお酒だったらしく、完璧に二日酔いの症状だ。


こんなんじゃ、動けないよ。


もう、何なのあの土偶は!


「どうだこの酒の味は。美味だろう?最高級のこの酒は祝い酒にぴったりだと思うが気に入ったか?」


そう言って土偶は、自慢げに酒を入れた瓢箪(ひょうたん)をぷらぷらと振ってみせた。


うう···。気に入るわけ無いでしょ?!

お酒の味なんて全くわからないし。


具合いの悪さは増すばかりだし、なんて事してくれるの?!


「さあ、来いよ。祝言を挙げる」


土偶は私に近寄り、手を取ろうとした。


「「みつきちゃんに近寄るなー」」


コマケンが私の前に立ちふさがった。

小さいのに両手を大きく広げ守ってくれている。


こんな小さな子達に守られるなんて?!


本当は私がみんなを守らなきゃならないのに、気持ちが悪くて立ち上がる事さえ出来ない。


涙目になりながら見ると、コマケンの二人は錫杖を土偶に向けてブンと振り下ろした。


土偶は慌てて後退するも、額に青筋を立て腕をブンブンと振った。


「こら!危ないじゃないか。子供がそんな武器を振り回すんじゃ無い。そこを退け」


土偶はぐいぐいと二人の間に割って入ろうとするが、コマケンは錫杖をクロスさせ、土偶の進行を妨げた。


「「どかない!おじさんはどっか行け」」


睨み合う土偶とコマケンは、どちらも一歩も引かない。


「おじさん?!こらお前達、俺はおじさんじゃなくてお兄さんだ。さあ、いい子だからお兄さんの言うことを聞くように。今すぐ道を開けなさい」


「「イヤだよ開けないもん!おじさんはあっち行けー」」


「ぐぬぬー」


土偶はドスンドスンと地団駄を踏み、コマケンをキッと睨みつけた。


「こうなったら腕ずくだ!俺は子供だからって手加減なんかしないからな。お前達、覚悟しろ」


そう言うと、土偶は上空へと浮かび上がり両手を前に突き出した。


その手からは小砂利がパラパラと出てきて、土偶の周りに円を描いて浮かんだ。


土偶が攻撃対象を指し示すと、その小砂利はコマケンの上に降り注がれた。


ザザーッと降り注ぐ小砂利に、コマケンは錫杖を振って対応する。

この小砂利自体には大した攻撃力はない。

しかし、小砂利なだけに細かすぎて対応しきれない。

二人の足元から徐々に小砂利に埋め尽くされて行き、次第に身動きが取れなくなってしまった。


「「うごけないよー」」


悲痛な叫びを上げるコマケンに、私は動揺する。


「コマ!ケン!」


土偶はほくそ笑み、コマケンの横を通り抜け私の前まで来ると言った。


「邪魔な子供たちは、もう終わりだ。しばらくすれば生き埋めになる。お前は諦めて、俺のもとに来るんだ」


土偶は無理やり私の腕を掴み、引きずるように立ち上がらせた。


「イヤ!」


「「みつきちゃん!!」」


ああっ、これって凄いピンチなのかも。

気持ち悪すぎて、抵抗できないのが辛い。


「うにゃ!」


ユキちゃんが大地を蹴って、土偶へと襲いかかった。


「猫よ!お前の攻撃は既に見切っている」


土偶はクルッと回転すると、ユキちゃんの攻撃を避けた。

更に追撃も避け、その勢いでユキちゃんの腹を思いっきり蹴り上げた。


「ぎゃんっ!」


「ユキちゃん!」


ユキちゃんは空へと飛ばされ、私の視界から消えてしまった。


心臓がドクッと鳴り、胸が締め付けられる。


ユキちゃんが強いことは良くわかっている。

防御で相手の攻撃を軽減できているとは思うけど、あれだけ飛ばされたんだ。

無傷というわけには行かない。


今すぐにでも後を追いたいけれど、先にこの場をなんとかしないと。


土偶は弱いと思っていたけど、そうとも言えないようだ。


土偶の攻撃により、コマケンは胸の辺りまで小砂利に埋まっている。


小砂利の攻撃なんて、地味でぱっとしないように思ったのに、実のところじわじわと効いてくる恐ろしい術だった。


あの小さな子達が生き埋めになったらと思うと、居ても立っても居られない。



もう気持ち悪いとか、言っている場合じゃない。


しっかりしろ、私!


この状況を打開するために、どうしなければならないのか、考えなくちゃ。


まずは、コマケンを救出する。


そして、ユキちゃんを探しに行こう。


私は目を見開いて拳に力を入れた。


コマケンとユキちゃん、待ってて。今助けるからね。


私は何度か息を吐くと、集中して武器を右手に握った。

私の動きに気づいた土偶は、肩をすくめてため息をついた。


「そんな物騒なもの、花嫁には必要ないだろ?」


そう言うと土偶は、私の右手に手刀を叩き込んだ。

その痛みで集中が途切れた私の手からは、武器が掻き消えた。


私は後ろ手に縛られ、身動きが取れない。


「花嫁よ、誓いの盃を取れ。って、手が使えないんだったな。よしよし、俺が口移しで酒を飲ませてやろう」


土偶はニヤリと笑い、一口酒を飲み込むと私に迫ってきた。


うわぁっ!!

止めてーー。

なんで土偶とキスをしなくちゃならないの!


冷や汗を流しながらジリジリと後ずさる私に、にじり寄る土偶。


土偶が私をドンと押し倒した瞬間、強い光が辺りに放射される。


土偶はその光に耐えきれず、目を瞑って叫んだ。


「なんだこの光は?」


光は更に強くなり、辺りに満ちる。


「「みつきちゃんに触るな!」」


力強い声が響いた。


「コマ!ケン!」


気がつけば、二人は小砂利の山から脱出しており、私と土偶の前まで歩いてきた。


二人の手には、勾玉がしっかりと握られている。


あれは確か、ピンチになったら使うようにと、アマテラスから渡されたもの。


その勾玉が強烈な光りを発している。


後ずさる土偶に、コマケンは勾玉を突き付けた。


「「みつきちゃんをいじめたな!ぼくたちが悪いおじさんをやっつける」」


土偶はうっすらと目を開き、子供に負けじと立ち上がった。


「おじさんじゃない!お兄さんだと言ってるだろうが」


コマケンは勾玉を握りしめた。


勾玉の光が弾けて私の身体を包みこんだ。


凄い力を感じる。

コマケンの潜在能力を勾玉が大幅に引き上げてる。


そうだ!

これに私の力をプラスしたら、どうなるんだろう?

そんな事を考えたら、ワクワクしてきた。


思い立ったが吉日ってことで、早速試してみよう。


私は目を瞑ってコマケンの光を感じる。

光は私の中を駆け巡り、私の力と融合する。


それは黄金色に輝き、強さを増した。


何倍にも膨れ上がった力は、再び二人へと流れてゆく。


コマケンは、勾玉を高く掲げた。

光を受け取った二人は、その姿を大きく変貌させた。


「あっ?!」


驚きで思わず声が漏れた。


なぜならば小さな二人は、金色に輝く大きな戦士になっていたのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ