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転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜  作者: 万実


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美男子現る

な、な、何がどうなってるの?


今まで私は確かにユキちゃんと一緒にいたはず。

それなのに、何この美男子は?


彼は白い和風の装束、例えて言うならば神社の神主さんが着ていそうな衣装を身に着け、涼し気な雰囲気を醸し出している。


なんで私はこの和風の美男子を抱きしめているのか?


訳がわからない。


大変気まずく、私は顔をひきつらせながら、その美男子からそっと腕を外して、後ずさろうとした。


すると、その美男子はにこやかに微笑みながら、私の腕を掴んで引き寄せ、逆に抱きしめた。


ひえぇぇ!!

パニックである。


「あ、あの···」


うろたえた私の声に、その美男子はクスクスと笑いだし、よくよく見ると涙まで浮かべている。


私が呆然としていると、その美男子は笑いをこらえながら言った。


「私だよ」


うわ、その声はまさか!


「ユキちゃん!!」


うんうんと頷き私を解放し、してやったりという表情をしてとても満足そうに見えるんだけど。


もう、なんなのー?!



「ねぇユキちゃん、あなたは人になれるの?」


ユキちゃんは結界の外にいる銀狐を指差しながら話し始めた。


「あの狐が人化を使えるんだ。私に出来ないわけがなかろう」


「なるほど、それもそうだね。でもね、いきなりでびっくりするから。心臓に悪いよ」


「あははは、悪かったな」


そう言うユキちゃんは、悪びれもせず私の頭をぐりぐりと撫でた。


「さあて、そろそろ···かな?」


ユキちゃんが言うと同時にパーンと大きな音が響いた。


あ、この音は。

これは結界が破られたんじゃないのだろうか?


「おい、狐。結界を破るのに時間がかかりすぎだ」


ユキちゃんは私を護るために前に出た。それに、この言葉、銀狐を挑発しているように聞こえる。


銀狐は見るからに機嫌が悪く、全身の毛を逆立てている。


「お前、邪魔ばかりするな。とっとと祭雅を出せ」


「イヤだ、と言ったら?」


銀狐はいきり立ち、青白い炎を飛ばしてきた。


右手を広げたユキちゃんは、青白い炎を軽く往なすと、炎はすぐに消え去った。

ユキちゃんは腕を組んでニヤッと笑う。


力の差は歴然としており、余裕なユキちゃんに対して、銀狐は更にイライラを募らせる。


このままユキちゃんが銀狐と戦えば、楽に勝てるだろう。


だけど、やっぱり······。


「ユキちゃん、お願い」


「···深月、わかった」


ユキちゃんは頷き、一歩引いた。

私は静かにユキちゃんの前に出ると、大きく深呼吸する。

そして、胸の前で扇を水平に持った。


意識を扇に集中させる。


ドクっと心臓の音が鳴り、髪の毛が逆立つように感じる。


『さあ、行こう』


なにかの声が、私の頭の中に響く。

これは扇の声だろうか?


扇の中心が真っ赤に燃え立つように熱くなり、それは全体に広がり、私にまで波及する。


私自身が燃えているようで、全身の至るところが目にでもなっているかのように、感覚が異様に研ぎ澄まされてゆく。


そして、今までどんなに開こうとしても開かなかった扇が、ぱらりぱらりと静かに開いてゆく。


それはとても美しくて、雅な扇。


表面には満月に桜の花びらが舞い散る様子が描かれ、裏面には満月を背に二羽の鷹が舞う様子が描かれている。


扇はふるふると震え、心なしか大きくなったようだ。


これを使えと、扇が言っている気がする。


「ほう、祭雅よ。月雅を使うのか?」


銀狐は目を細めた。この狐はこれを知っているんだった。


「月雅?」


「その扇の名前だよ。面白い」


そう言うと銀狐は瞬く間に小さくなり、先程の銀髪の男性の姿に戻った。


「お前がそれを使うのなら、この姿で相手をしよう」


銀狐は右手を前に出したかと思うと、その手の中には三日月形の剣が収まっていた。


一体どこから取り出した?って、そろそろそんな不思議なことにも慣れてきた気がする。


でも、あの剣と扇で戦うのって分が悪いんじゃないのかな?

そう思ったりもしたけれど、なぜか自信に満ちた自分もいるから不思議だ。


扇を使うと言ったって、やり方なんてわからないけど、やるしかない。 

戦うって決めたのは自分自身だから。


私にできることは、この扇の声と想いを汲み取ってその通りに動く、ただそれのみ。


「では、参る」


そう言って走り出した銀狐の繰り出す斬撃を、既の所で避ける。

ひらり、ひらりと私は扇の舞を舞うように軽やかにステップを踏む。


もちろん、舞なんて舞ったことはない。

この動きが正しいのか、合っているのかもわからない。

だけど、なにかワクワクして、気分が高揚してくる。


頭では理解できないことだけど、身体がわかっているみたいだ。

扇の想いに、自然と身体が付いて行く。


そんな私に銀狐は剣を繰り出す。

スピードのある太刀筋を見極めて、扇で往なす。


この扇って木と紙でできているのに、今では鉄のような金属よりも強度があるんじゃないかと思うくらいに、銀狐の剣を簡単にあしらうことができる。


例え剣が当たっても切れたり、折れたりしない。


銀狐は私の動きについて行けずに、困惑しているように見える。


『扇を右へ』


頭に響くその言葉通りに右方向へ扇を振ると、そこから風が巻き起こった。


この風は、かまいたちのようだ。

それは銀狐の身体の彼方此方をスパっと切り裂き、鮮血が飛び散った。



銀狐は数歩退き、赤く染まった自分の両腕を見やり舌打ちをする。


私の身体はどこまでも軽く、力は尽きることがない。


扇に導かれ、舞いながら銀狐に接近し連撃を加える。

そして、いつの間にか私は銀狐を圧倒していた。


銀狐は三日月形の剣を取り落とし、がっくりと片膝をつくと呟いた。


「まさか千年間培った力が通用しないとは···」


私は微笑みながら扇をパチリと閉じ、その先端を銀狐の眉間にあてがった。

扇の中から力がほとばしるのを感じる。


『調伏、夜都(やと)


「調伏、夜都?」


夜都ってなんだ?

そう疑問に思いながらも、頭に響いた言葉を繰り返したその時、扇から光がぶわっと溢れ出した。

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