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転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜  作者: 万実


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式神が増えました3

彩香は法具を失っても尚、戦いをやめようとしない。

彼女の命を助けたから、という訳では無いが、私は悲しくて肩を落とした。

それにしても、彩香の指示が出たのに朱雀はどうして私を攻撃しないのか?


朱雀の行動に疑問を感じた私は、その思いを彼にぶつけた。


「朱雀、あなたはなぜ主の声に従わないの?」


私の問に朱雀は目を伏せて言った。


「私はこの者の式神ではありません」


「えっ?!」


彩香に調伏されていたわけでは無いの?


「嘘よ!朱雀は私の式神。いつだって私の指示に従ってきたじゃない」


朱雀はわめきたてる彩香を一瞥し、視線を私に戻すと言った。


「私は不覚にも操られていました。私の脚にはめられていた脚環。あれがこの者を偽りの主として思い込ませ、強引に結びつけていたのです。祭雅が脚環を破壊してくれなければ、私は自分の意思で動くことすら出来ずにいました」


全てはあの脚環が原因だったようだ。


「違う違う!朱雀、偽りではなくあなたは私のものよ!ね、早く戻って来て」


彩香は朱雀に駆け寄り、手を差し伸べるが、朱雀は右手でそれを払うと立ち上がった。


「娘よ。そなたの右腕を見て何か思うことはないか?」


朱雀の問いかけに、彩香は自分の腕を見る。

火傷でただれて、すぐにも治療が必要なほどひどい状態にある。


「こんなのどうってことないわよ。私は気にしない」


朱雀は首を横に振ると、強がる彩香の右腕に触れた。

朱雀の手は炎に包まれており、彩香は絶叫して飛び退いた。


「私の主であるなら、このくらいの炎で傷を負うことは無い。その火傷がいい証拠だ。そなたの力量で、私を制御できると思っているのなら、それは大きな間違いだ。偽りの契約でそれほどの火傷を負うそなただ。私を式神にした途端に、命を落とすことだろう」


彩香はガクッと項垂れ、「そんなはず無い、これは何かの間違いよ」と、呟いた。


朱雀はふっと笑うと私のもとにひざまずいた。


「我が真の主、祭雅よ。あなたに再び巡り合えたこの喜びを、どのように表現したら良いのでしょうか?さあ、あなたの光で私を満たしてください」


「···わかった」


朱雀は私を祭雅と呼び、その声は耳に心地よく、私の中からも喜びが溢れてくる。


私の手の中にある月雅がキラキラと光を発してきた。


輝く扇を朱雀の眉間にあてがい、心に浮かんだ名前を叫んだ。


「調伏、朱里(シュリ)


扇からは光がぶわっと溢れ出し、朱雀へと流れ込んでゆく。


その光は金に朱が混じり、美しくて清らかだ。

いつしかその光は朱雀を満たし、四方八方に放射してキラキラと輝いた。


光が全て朱雀に吸い込まれたのを確認し、私は月雅をホルダーに戻した。


恍惚の表情を浮かべた朱雀は、私の右手を取ると囁いた。


「あなたという人は、私の真名まで言い当てた!なぜ分かったのですか?」


あの名前、やっぱり真名だったんだ。


「や、分かったというか、心に浮かんだ名前を言っただけだよ」


朱雀はため息をつき、口の端を上げた。


「やはり私の主はあなたしかいない。私は長い間、ずっとあなただけを待ち続けていました。この瞬間をどんなに心待ちにしていたか」


そう言うと、私の手の甲に口づけた。


うわ!

いきなりな出来事にドキッと心臓が跳ねる。

恥ずかしくなった私は、一歩後ずさろうとしたけれど、朱雀は私の手をしっかりと握り、離してはくれなかった。


「朱雀が私のもとに来てくれて、ホントに嬉しいよ」


若干照れながらそう言うと、朱雀は嬉しそうに微笑んだ。


「祭雅よ。あなたの今生(こんじょう)の名は?」


「私の名は雪村深月よ」


「では、今後あなたのことは深月とお呼びします。私はシュリとお呼びください」


「シュリね」


「はい」


微笑みながらシュリは立ち上がり、熱い眼差しで私を見つめる。


なんだか、そわそわと落ち着かない気分なんですけど。

あの視線は熱すぎて、全てを見透かされそうで怖い。


視線を逸らせ客席を見れば、パチパチと拍手が聞こえてきた。

そして、それはやがて大きな歓声となって会場を包み込んだ。


『調伏ですーー!雪村選手が如月選手の朱雀を調伏してしまいましたーー。前代未聞です!こんなことってあるんですかねー?調伏の場面は初めて目にしますが、非常に美しく、神々しい光景でした。私も···おや?』


解説者の話の途中で、レフリーが舞台に入り『ピピーー』っとホイッスルを鳴らした。


まだ試合が終わった訳でもないのに、どうしたんだろう?


レフリーは彩香のもとに駆け寄り、話しかけている。

彩香は首を横に振って、泣き叫んでいるけれど?


会場がざわめきだした。

そして、状況が分からず観客たちが騒然としだした頃、場内アナウンスがかかった。


『ご来場の皆様、ただいまのレフリーの判定に関して、ご説明いたします。如月選手の不正行為が確認されました。それにより、如月選手は失格となります。よって勝者、雪村選手!』


えっ!私、勝っちゃったの?

思わぬ勝利宣言にしばし呆然とするけれど、彩香の不正行為ってどういう事なんだろう?


『引き続き、実況中継です。本部に入った情報によりますと、如月選手は正式な契約を取り交わしていない式神を、闇の術具を用い出場させたことが発覚しました。これは陰陽師法第六条の一、闇の術具の使用を禁ずる法規に違反した上に、不正な式神契約を行い出場したことは、大会規定にも抵触します。今回の事態を重く見た陰陽師連盟総本部は、如月選手を失格処分にしたということです』


やっぱり、闇の術具でシュリを操っていたことが問題なんだ。


勝利は嬉しいんだけど、彩香のことを思うと、心から喜べない。


私の目の前で、彩香はレフリーに連れられて舞台を降りた。

闇の術具についての取り調べがあるとのことだけど、彩香の火傷の手当が先になるようだ。


がっくりと項垂れ下を向いて歩く彩香とレフリーの行く手を遮る者がいた。


「待て」


その声を聞いて、彩香はぱっと顔を上げた。


「爺!助けに来てくれたの?」


爺は彩香に杖を突きつけた。


「姫、あれほど儂が言うたではないか。あれは切り札だと」


「で、でもあそこで使わなければ私は勝てないと思ったから···」


「姫、御身をもっと大事にせねば。こんな所で命を落とすには惜しいのでのう」


「爺···」


爺は意味ありげに「ほっほ」と笑うと言った。


「そろそろ解放してやろうかのう」


爺は地面にドンと杖をついた。

そして縦横に切り込みを入れ、力を注ぎ込んでいる。


「爺、何をしているの?」


「······」


爺は彩香の質問に答えるでもなく、不気味に笑い握る杖に力を込めている。


私はとても嫌な予感がした。

爺の様子はいよいよおかしく、その杖先からは黒い霧が流れ出る。

それを見ると、背筋が凍りつきそうな感覚に襲われる。


地面からは黒い光が溢れ出し、大きな穴が開いたように見えた。


「さあ、扉は開いたぞ。人間どもよ、慌てふためき恐怖に怯えるがよい」

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