表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜  作者: 万実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/127

大会2

「なあ深月、さっきは君しか見えてなくて突っ走ってしまったんだけど」


「うん?」


「君、もしかして赤星伶の事務所にいる?」


「そうだよ」


真尋は立ち止まり、またしても目を見開いて私を見る。

伶さんの事務所にいることが何だというのだろうか?

そんなに驚くこと?


私が首を傾げていると、真尋は軽く首を横に振った。


「いや、凄いところにいるなと思ってね」


「凄いって、どういう事?」


「彼は前回大会の優勝者だろ?それにあの容姿に才覚。赤星事務所に入りたい奴は山のようにいる。しかしなかなか人を雇わないので有名なんだ。よほどの腕が無いと無理らしいね」


私は目を丸くして言った。


「初めて聞いたよ。あの私、よほどの腕ではないんだけど、なぜか雇ってもらえたんだよね」


私の言葉に真尋はぶっと吹き出し、ゴホゴホと咳き込んだ。


なぜ吹き出すの?

首を傾げていると、遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。


「深月ー」


あれは拓斗さんの声だ。


「真尋、待ってて。ちょっと行ってくる」


「ああ」


私は足早に拓斗さんの元へと向かう。


「おい、深月。今一緒にいたのは藤原真尋だろ?」


「そうよ。良く知ってるね」


「前回大会の本選出場者だ。かなり強いよな。ところであいつは彼氏か?」


「ええっ?!いや、真尋は昔の職場の同僚で、彼氏じゃないから」


私、嘘はついてないよね。

昔の職場の同僚と言っても、千年前の陰陽寮でのことなんだけど。

うーん、説明に困る。

私が眉を寄せていると、拓斗さんはずいっと近寄り囁いた。


「深月、藤原真尋をスカウトしてこい」


「えっ!真尋をスカウトするの?」


拓斗さんは頷いた。


「そうだ。藤原真尋をうちに入れたら、かなりの戦力アップになる。いいか、失敗するなよ」


「ええー?!なぜ私?」


「お前達、仲が良さそうだからな。成功する確率も高いんじゃないか?」


「むむ」


なにそれ、責任重大じゃない!

スカウトなんてしたことないけど···。


でも、私だって真尋と一緒に働けたら、凄く嬉しい。

よし。

ダメ元で誘ってみよう。


私は真尋の元に向かって駆け出した。


「そんなに慌ててどうした?」


走ってきた私の様子に、真尋は少し驚いたように言う。

知らずに力が入っていたようで、握りしめていた手を開く。

スカウトなんてしたことないから、大丈夫かなって不安になっていたんだけど、こんなに力んでいたら上手く行く筈がないよね。

まずは落ち着こう。


私はふーっと息を吐いて、口を開いた。


「真尋、うちの事務所に来ない?」


「深月、それって···」


「私、真尋と一緒に働けたら嬉しいな」


「俺が赤星事務所に入れるってこと?」


私はうんうんと頷いた。


真尋はぱぁっと笑顔になって、またも私を抱きしめた。


「うわっ、真尋?!」


ちょっと、抱きしめ過ぎじゃないだろうか?

恥ずかしくなってきた。


真尋は頬を上気させながら、やっとのことで私を解放した。


「俺も深月と一緒に働きたいんだ。あの頃のように」


「本当?良かったー」


やっぱり真尋とは縁があるんだ。

また一緒に仕事ができるなんて、嬉しい限りだ。


みんなに引き合わせるため、私は真尋と並んで歩き出す。


「拓斗さーん、成功だよ!」


少し離れなところから叫ぶと、拓斗さんはガッツポーズをして喜んでいる。


「深月、就職の件は俺が話すから」


真尋はそう言うと、伶さんの方へと歩いていった。


しばらく話した後、赤星事務所の決まりらしく、入所テストが始まった。

伶さんは衣装の内ポケットから名刺を取り出して真尋に手渡す。


真尋は何でもない様子でそれを受け取った。

やっぱり真尋も力があるから、名刺を貰ったところでびくともしない。

入所テストは合格。これで真尋の就職は確定だ。


「みんな集合」


伶さんの元へと事務所の面々は集う。


「今日から事務所の一員となる藤原真尋君だ。みんな、よろしく頼む」


「藤原真尋です。これからお世話になります。よろしくお願いします」


とびきりの爽やかな笑顔で挨拶をする真尋は、本当に嬉しそうだ。


「それでは真尋、早速だが受付をし直してきてくれ。所属の変更が必要だからな」


「わかりました」


真尋が受付に向かった頃、場内アナウンスがかかり、周囲のざわめきは更に大きくなった。


『ご来場の皆様、出場者の皆様、大変お待たせいたしました。まもなく予選を開始いたします。対戦の組み合わせは、場内デジタル掲示板をご覧いただくか、お手元のスマホにてアプリ陰陽をご覧ください。出場者の皆様は各ブロックの対戦エリアへ集合してください』


ついに予選が始める。

私はスマホを開き、対戦相手を確認することにした。


一回戦は五人一組で戦うそうだ。

えーと、私は···あ、あった!


私はDブロックね。


Dブロックでの初戦の対戦相手は、葉月水琴、長月秀一、弥生浩介、睦月絵里とある。


あれ、この名前って···みんな名字が和風月名だね。


そういえば、如月彩香、霜月賢吾さん、水無月桜子ちゃん、薫子ちゃんもそうだ。


これって何かあるのかな?


「あ、深月はDブロックか。俺はCブロック。予選で当たらなくてよかった」


いつの間にか戻ってきた真尋が、スマホを見ながら話しかけてきた。


予選はAブロックからHブロックまであり、各ブロックから一名が本戦に出場できる。


拓斗さんはAブロック、伶さんはHブロックと、みんなバラけたから、それぞれのブロックで勝ち上がればいいのよね。


「深月、そろそろ対戦エリアに移動しようか」


「そうね、行きましょう」


「まずは初戦突破だ。深月のことだから心配ないと思うけど、あまり力まないように」


「ありがとう。真尋も頑張れ」


「ああ」


広い会場の対戦エリアに入った。

全体を八つで仕切り、それぞれのエリアに一つずつ円形の舞台が用意されている。


舞台の上にはAからHまで大きく表示されているので、分かり易い。

真尋はCの舞台へ、私はDの舞台へと向かった。


初めての大会で、少しずつ緊張してきた。

周りの人たちがとても強そうに見えてしまう。

はあ、肩の力を抜いて、リラックスしないとな。


それにしても、出場者の多いこと。

ゆうに千人はいるんじゃないだろうか。

対外試合で対戦した人たちの姿も、ちらほら見える。


対戦エリアの周りは客席になっているんだけど、すべての席が埋まっている。

席に入り切らず、立ち見の人たちもいる。

凄い人気なんだ。


移動の最中にまた場内アナウンスがかかった。


『これより陰陽師連盟より開会の挨拶をいたします』


会場がしーんと静まり返る中、低くて渋い声が響いた。


『あー···』


あ、この声は総長の真田さんだ!

会場のメインモニターにもその姿が映し出されている。


『みんな、頑張ってこいや』


そう言って総長は右手を高く掲げた。


っていうか、それだけ?!

ガクッとこけそうになった。


「「「うおーーー!!」」」


ええっ!!

いいの?今ので···。


会場はいまの短い挨拶で大いに盛り上がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ