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転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜  作者: 万実


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真尋

道なりに私は歩いた。だって一本道だし、選びようがないもんね。


それにここ、時間の感覚が全くわからない。太陽がないから、ここに来て一体どのくらいたったのやら。


しばらく歩くと、木々に混じって水晶が点在しだした。


不思議な所。


水晶は大なり小なり様々で、色もまた様々。


紫色や濁りのない透明なもの、虹色に輝く物など美しくて、なぜかそれを見ているだけで落ち着く気がするんだよね。


綺麗な水晶を眺めて歩いていたら、急に目の前が真っ暗になった。


く、苦しい。息が出来ない。


顔に何かくっついたようで、私の頭から顔全体を覆っている。


私は慌ててそのくっついた物を力任せにベリッと剥がした。




はあ、やっと息ができる。何なの、一体?


ベリッと剥がした物体は私の手の中にある。


それを目の前まで持ち上げてよくよく見てみると。




それは白いもふもふ。


ほんわりとした真っ白い毛の猫だった。黒いつぶらな瞳でこちらをじっと見つめている。


人以外の生物はこの猫が初めてだ。ここに住んでいるのかな?疑問はあるけど··それにしても可愛らしい。


私が首を少し傾けると一緒になって首を傾ける。その姿が余りにも可愛くて、つい笑ってしまった。




「うにゃ?」


「あはは!かわいい」


うにゃだって。声も可愛すぎるし面白いね。


それに人懐っこくて、擦り寄ってくる。




それにしても、こんなに懐いてどうするつもりなのか。


流石に連れてはいけないので、そっと地面に下ろした。




すると猫は抗議の声をあげて騒ぎ始め、私に飛び付いた。絶対に離れないという強い意志がその目から感じられるんだけど、困ったな。



「ねえ、一緒にいたいの?」


「うにゃうにゃん」



そうだよ!って返事をしているみたいだ。


目をキラキラさせてるし。


可愛すぎるでしょう!


うむむ、この須弥山にいる間だけ、一緒に行こうかな?


「少しの間だけど、私と一緒に行く?」


猫は当然だよというように目を細め、私にしっかりと掴まり離れなくなった。


って、ホントに私の言葉を理解しているんじゃないだろうか?


えーと、この子を呼ぶのに猫では不便だよね······。


「それならね、名前をつけよう。真っ白いから『シロちゃん』ってのはありきたりだし···。んー、『ユキちゃん』はどうかな?私の名字と同じだけど」


そう言うと、猫は大喜びして、私に耳と顔を擦り付けた。それに心なしか色艶が良くなったような気がする。


名前は『ユキちゃん』に決定だ。


ユキちゃんを抱えたまま、しばらく歩くと水晶群は更に大きくなり、水晶の森の中を歩いているみたいだ。


ユキちゃんは私の腕の中で大人しくしていたかと思ったら、急にぴくっとし、なにかの気配を感じたようだ。

耳をしきりに動かし、神経を尖らせている。

そして、ある一点をじっと見つめたと思うと、私の腕から飛び出し走り出した。


えっ?!どうしたの?


慌てて私はユキちゃんの後を追うけど、猫って足速いんだよね。


追いつくのは無理かな?なんて思ったら、いたいた。


『こっちだよ』と言っているみたいに、ある程度進んでは振り返って私を待っている。


賢い。


この須弥山に居るくらいだから、普通の猫とは何処か違うのだろう。


しばらくその姿を追って行くと、急に立ち止まるユキちゃんのその先に何かが見えた。


あっ!人だ。


その人は、少し癖のある黒髪に、スッと通った高い鼻、アーモンド型のきれいな瞳の男性で、これまたイケメンだ。


彼は怪我をしているらしく、足を庇い座り込んでいる。


「あの、大丈夫?」


私は近づいて声をかけると、彼は驚いた表情で私をまじまじと見つめる。あれ、なんだかこの人を見たら、凄く懐かしいという気持ちになるんだけど、この感情は一体なんだろう?


「君は·····!?」


彼はそう言うと顔を歪ませた。

どうしたのだろう?私は小首を傾げる。


「あっ···ごめん、こんな所で人に会うなんて思わなかった。···あまり大丈夫とはいえないな、立てないんだ」


このまま見捨てて、過ぎ去ることは出来ないし···。


「足の怪我、酷いみたい。なにか私にできることってあるかな?」


そう聞くと、その男性は少しの逡巡の後で軽く頷いた。


「悪い、肩を貸してほしい。この先に泉があるんだけど、そこへ連れて行ってくれる?」


「へえ、泉があるの?わかった!」


そう、私は体力だけは自信があるんだ。

彼の腕が私の肩に廻り、私はよいしょっと心の中で掛け声をかけ、彼が立ち上がるのをサポートする。


うっ!


成人男性で、上背もあるから結構重い。

なんとか立ち上がると、一歩一歩ゆっくりと歩き出した。


「重いだろう、ゴメンな」


「ううん、大丈夫」


「君、名前は?俺は藤原真尋(まひろ)、真尋と呼んで」


「私は雪村深月」


「···雪村?」


私が名乗ると、真尋は驚いて立ち止まり私を見た。


「えっ、なに?」


「いや、ごめん深月。君が知り合いにとてもよく似てて名字も同じだったから驚いた」


へぇ、似てる人っているんだね。それに名字も同じって誰かな?気になるな。


「そうなんだ。ところで、真尋はどうしてこんな怪我を?」


「爺さんにやられてね、情けない」


ん?爺さんって、彩香と一緒にいた爺のことかな?でも、ここで人に会うと言ったってそんなに大勢いるわけないから、やっぱりあの人の事だろう。


「女の子と一緒にいたお爺さんかな?」


「あれ、君も会ったんだ。あの爺さんくせ者で、オレの持ち物は奪うし、強いし、散々だよ」


へえ、あの爺は強いんだ。見かけによらないな。


「所で、深月は一人?ガイドは一緒じゃないのか?」


「ガイド?」


なにそれ、初めて聞いたけど。


「ここへ来るにはガイドの案内なしでは無理だろ?」


「えっ?!そうなの?」


「まさか君、一人で来たとか?」


「うん、そうだけど。私、気がついたらここにいたの」


私の答えに真尋はとても驚き、大きく目を見開いた。


「そんなケースは初めて聞いた。基本、鍵もちの陰陽師が扉を開いてここに来る事ができるんだ。それで鍵持ちがガイドとなって試練を受けるんだけど、それも知らないって事?」


「う、ん。知らない」


鍵もちの陰陽師ってなんだ?

彩香はそんなこと何も言ってなかったし。


「君、よくここまで無事だったね」


「·····」


無事も何も、今まで現れたのは隣を歩くユキちゃん位のもので、普通はそんなに大変なのかな?


私が首を傾げていると、真尋はクスッと笑いながら言った。


「まあ、そういう俺もガイドとはぐれたんだけどね」


真尋のガイドとは、はぐれたら泉で落ち合う約束をしているとの事だ。


知らないことを教えてもらって嬉しいんだけどね。


真尋の話から私は全てが特殊なケースらしくて、ちゃんと試練を受けて帰れるのだろうかと、一抹の不安が胸をよぎる。

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