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転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜  作者: 万実


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朝ごはんと依頼

「うー、頭いた···」


私は盛大にため息をついて、ベッドの上で蟀谷(こめかみ)を押さえた。

間違えて飲んでしまったとはいえ、お酒はもう懲り懲りだ。


「深月、これでも飲んでおけ」


ユキちゃんからコップを受け取った。

コップの中身は緑色のドロっとした液体だ。

なんだかこれ、草の匂いと甘い香りが混ざっているようだけど?

お世辞にも美味しそうとは言い難い。


「あの、ユキちゃん。これ飲まなきゃダメ?」


「二日酔いを治したいなら、飲んだほうがいい」


頭痛が酷い私は、観念して一気に飲み込んだ。


苦くてゲホゲホとむせたけれど、気分は幾分かマシになった。


頭痛も和らいできている。


「ユキちゃん、ありがとう。良くなってきた」


「そうだろう。三十分もすれば、楽になるはずだ」


へえ。

ユキちゃんてば、薬草の知識もあるの。

さすがだね。


私はシャワーをして身支度を整えた。


そうそう、ここには素晴らしいキッチンがあったんだ。

通勤時間を料理に充てられるって素晴らしいよね!


なんだか二日酔いの薬も効いてきて、食欲が出てきた。

拓斗さんに聞いたら、キッチンは好きに使って良いとのこと。

引越しで自宅から持ってきた食材も結構あるからね。

それらを使って、早速お料理開始。


とは言っても、今朝は簡単にできる目玉焼き、トースト、具だくさんスープ、サラダにしてみた。


式神三人の分も、もちろん作った。 


あんなに熱心に眺められたら、作らない訳にはいかない。


四人でテーブルに着いて食べ始めたんだけど。


「深月。お前、二日酔いは大丈夫か?」


そう言って拓斗さんがやって来た。


「うん。もう大丈夫!昨日はスミマセンでした」


そういえば、記憶が途中で途切れたんだっけ。

私、粗相をしなかっただろうか?


「旨そうだな」


拓斗さんは食卓に並べられた料理に、釘付けになっているようだ。


「拓斗さんも食べる?よかったら作るよ」


「お、いいのか?」


「うん。スープもサラダもたくさんあるし、目玉焼きとトースト焼くだけだから」


「それなら、頼む」


「はいは~い」


ちゃちゃっと作って拓斗さんの前にお皿を並べた。


「ありがとな」


「冷めないうちにどうぞ」


拓斗さんは、「いただきます」と手を合わせ、早速食べ始めた。


「おい、旨いじゃないか。お前、見かけによらず料理上手いんだな」


「ちょっと!見かけによらずは余計だよ」


「はは、悪い」


「そういえば、いつも食事はどうしてるの?」


「ああ、俺は料理は出来ない。朝はコーヒーだけ」


「ええっ!伶さんと悠也さんは?」


「さあ、みんな適当に買ってきてるんじゃないか?キッチンはほとんど使われてないからな」


「うわっ?!もったいない!」


なんてこと!


こんなに広くて素晴らしいキッチンが備え付けられているというのに。

使わなければ宝の持ち腐れだ。


「ねえ拓斗さん。私が料理を作っておけば、みんな食べるかな?」


「えっ、作ってくれるのか?それはみんな大喜びだ。待ってろ。今、伶さんに確認してくるから」


そう言って、拓斗さんは二階の事務所へ向かった。


伶さんはもう事務所へ入ってるんだ。早朝からお仕事ご苦労さまです!


程なくして拓斗さんは戻ってきた。


「許可貰ったぞ。事務所から食費も出してくれるそうだ」


「本当に?それは嬉しい」


陰陽師の仕事は体力勝負な所があるから、しっかり食べて力を出せるようにしておかないとね。


みんなが元気で頑張れるように、私がご飯の用意をしよう。

決意も新たにしたところで、朝食を食べて、事務所へと向かう。


今日はどんな仕事が待っているのか。


「深月、依頼が入ってる。これから行くぞ」


「拓斗さんと行くの?」


「ああ。仕事を覚えるまで暫くは誰かが付く」


そういえば、もうアシスタントという立ち位置じゃないんだよね。

私もいっぱしの陰陽師として、仕事を覚えていかないとね!


私達は歩いて現場へと向かう。


事務所から歩いて二十分程の近距離だ。


「うわ!凄い豪邸」


それは、周りが生け垣で囲まれた旧家で、これぞ和風という豪邸だった。


「深月、ここに結界を張れるか?」


結界?

生まれてこの方、結界など張ったことはない。


でも、私は祭雅であった時の記憶がある。


「やったことはないけど、できると思う」


「それなら、やってみろ」


拓斗さんは頷き、私から数歩下がった。


私は過去の記憶を紐解く。


私は月雅を胸の前で垂直に持ち、目を閉じ、ここを感じる。


私の感覚が胸の中から月雅を通して、大きなうねりとなって広がってゆく。


目の前の建物の周り一帯を、大きく包み込む。


私のイメージが創り上げる。

それは光の球体。

強固であり柔らかくもあるその球体は、慈愛に満ちて全てを覆う。

闇の者を寄せつけない強さを持ち、そして、そこに在るものを護る。

それが私の光の結界。


辺り一帯がぱぁっと輝き、結界は完成した。


「できた」


初めて結界を張ってみたけど、凄く良くできたと思う。


「ミツキ、やるね。いい結界だ」


ハヤトくんがそう言ってくれるなら間違いない。


「本当に初めてか?凄い完成度だ」


初めてかと聞かれると、深月では初めて、なのだ。

こんな事を拓斗さんに言っても、わからないだろうな。


私達は木造の門にある呼び鈴を鳴らす。

すると、中からこの家の執事が姿を現した。


(うやうや)しくお辞儀をした執事に案内され、門をくぐり、敷地へと入った。


その途端、背筋がゾクリと震える気がした。


とても美しく良く手入れのなされた日本庭園なんだけど、なにか寒々しく感じるし、薄暗いように見えるのは気のせいではない。


「いるな」


「うん。ミツキの結界で、逃げられなくなってる」


「えっ、なんなの?何かいるの?」


「闇の気配がするんだ」


ユキちゃんは地面を指さした。


あ、背筋がゾクリとしたのは、その気配を感じ取ったからだ。


何だか少し緊張してきた。


チリチリと肌に刺さるようなその場の空気は、私から冷静な思考を奪っていくよう。

ギュッと拳を握りしめる。

とても、嫌な感じ。早く依頼を済ませて、ここから出たいと思うほどだ。



そんな私の様子を見て、拓斗さんが耳打ちをしてきた。


「ここの依頼主は、ちょっと変わってる。癖のあるやつなんだ。多分お前に難癖つけてくると思う」


「えっ?!」


「依頼主とは俺が話しをつけるから、お前は何を言われても口を挟むなよ」


「うん。わかった」


拓斗さんは、ここの依頼主のことをよく知っているみたいだ。


きっと気難しい人物なんだろう。


拓斗さんに言われた通り、私は喋らず大人しくしておこう。


そう心に決めて、豪邸の中に入った。

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