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転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜  作者: 万実


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崩れた結界

「深月!」


ユキちゃんは叫び、結界の亀裂に向かって拳を振るった。

亀裂はピシピシっと広がり、すぐさま全体に及び、天井部分からキラキラと輝きながら崩壊した。



「へえ、やるねえ。ミツキと一緒の攻撃だったけど、僕の結界を破壊するほど力をつけたのかい?白虎」


白虎って言ったの?

ハヤトくんはユキちゃんの正体を、知ってるってこと?

ということは、二人は知り合い··。


「深月を離せ」


静かに話すユキちゃんは、溢れ出る怒りを必死に抑えている。


「嫌だね。せっかく捕まえたんだ。僕のものだよ」


私は誰のものでもないのに、何いってんの!

それに、人を珍獣みたいに言わないでほしい。


「ハヤトくん、私は君のものじゃないから」


「こんな状態なのに?ミツキ、もう離さないって言ったでしょ。あれは本気だから」


そう言ってハヤトくんは私を後ろから強く抱きしめる。

ちょっと、苦しいんですけど。


「いつまでそんな茶番を続ける気だ。結界が崩れた時点でお前の負けだろう」


ユキちゃんは苦々しく言い、こちらに近づいてくる。


「やめろ白虎、来るな。ミツキがどうなってもいいの?」


「深月を盾に取っているつもりだろうが、お前には深月をどうする事もできなかろう」


ハヤトくんは「うっ」と呟いたまま、言葉が続かなかった。

なぜ、どうする事もできないのだろう?


「これが最後のチャンスなんだ。それじゃなきゃ、僕は今まで待っていた意味がない··」


ユキちゃんは私達の目の前に来ると、腕を組んで首を横に振った。


「最初も最後もあるものか。お前は深月に対して攻撃することなんて、絶対に出来ないのだからな」


ん、絶対にってどういうこと?

私が首を傾げていると、ハヤトくんは焦りながら言う。


「ダメだよ、そんな言葉に惑わされないから」


「それ以上続けても、深月に嫌われるだけだがいいのか?」


「はっ」と息を呑むのと同時に、ハヤトくんの力が緩んだ。


その隙に私は腕を振りほどいて、ユキちゃんの横に並び立った。


ハヤトくんは悲しげな表情で私を見るとうつむいた。


「お前は祭雅の式神、そして祭雅を深く愛していた。そうだよな?」


ええっ!!そうなの?


なんだか会話に割り込めないので、心の中で呟いてはみたものの、分からないことが多すぎる。


ハヤトくんは私の目を見て頷いた。


「そうだよ、僕はミツキに手を出せない。愛するものに攻撃なんて、できるわけがないじゃないか。結界が壊れていなければずっと二人きりで居られたのに、僕の計画は失敗してしまった。あの時が唯一のチャンスだったのにね」


ん?どういう事?


「ミツキ···」


「ハヤトくん、あの、なにかな?」


ハヤトくんは改まって私の前に来ると跪いた。


「僕は祭雅の式神にして、四神の一柱。北方の守り手·玄武」


「えっ!四神?玄武···」


四神といえば、ユキちゃん。

彼は西方を守護する白虎。


ハヤトくんの正体は、北方を守護する玄武。

四神の一人ならば、お互いをよく知っていることには頷ける。

でも、びっくりするよね。

彼がまさか四神の一人だったとは。


「ミツキ、僕は勇気を出して言うよ。僕と結婚してください」


「はあぁぁぁ??」


けけけけ結婚?!


うわああ!

何なの、このいきなりのプロポーズは。

なんだかドキドキしてきた。

これはびっくりのドキドキなんだけど···。


っていうか、ハヤトくんのことそんなに知らないのに、結婚て···。


私、お付き合いしてる人もいないのに、結婚なんて早すぎる。

それに、陰陽師の勉強も始めたばかりなんだから。

そして彼は人間ではないのだ。

確か四神は霊獣。霊獣と人間って結婚できたりするの?

それすらも分からない。


彼には申し訳ないけれど、今は結婚なんて考えられない。


「ミツキ、ちょっと待って!返事は僕の話しを聞いてからにしてよね」


「···わかった」


私は、喉元まででかかった「ごめんなさい」を、無理やり引っこめた。

そして、私の心を読んでいるっぽいハヤトくんは、私の先手を取った。


「僕はミツキと結界の中で、ゆっくり愛を育もうと思ったんだ。あの中では時間は無限にあるんだから。二人だけしかいない世界にいれば、僕のことを見てくれるだろう?」


いや、それはどうだろうか?

一緒にいたとしても、好きになるかなんてわからないのだ。


それに、ハヤトくんが愛しているのは祭雅であって、私ではないと思うんだけどな。

その辺がどうもスッキリとしない。


「ミツキ、僕はやりすぎたと思う。それは謝るよ。でも、ミツキを愛する心は誰にも負けないから」


「ハヤトくん、ありがとう。でも、私は祭雅じゃないのよ」


ハヤトくんは怪訝な表情で私を見る。


「何言ってるの、ミツキは祭雅だよ」


うん。やっぱり噛み合わない。

私に祭雅を求められても、苦しいだけだし、これ以上ハヤトくんの話しを聞いたところで、私の気持ちが変わることはない。


でも困ったな。

私が話しをして、ハヤトくんが納得するかどうか。

どうもこの様子だと、彼は引かない気がする。

どうしたものかと考えいると、ユキちゃんが前に進み出た。


「玄武、深月が困ってるだろう。祭雅の時の記憶が無いんだ。深月にそれを言ったところで混乱するだけだ」


「そんなこと言ったって、ミツキが祭雅というのは事実じゃないか。僕はずっと待ってたんだ。祭雅が戻ってきてどんなに嬉しかったか」


「それはお前だけではない。でもな、自分の気持を押し付けて、深月はどう思うだろう。相手を思いやれる優しさを、お前は持ち合わせていないのか?」


ユキちゃんの言葉にハヤトくんは「ぐっ」と、詰まってしまった。



「僕はどうすればいいのさ」


ユキちゃんはため息を吐いた。


「お前は自分自身を高める努力をしているのか?」


「·····」


「深月に今何が必要か、近くにいて全てを見極めろ。深月に求めるだけではなく、彼女に必要とされる男になれ。お前はこれから深月の式神として共に歩み、お前自身が深月を包み込めるほどに大きく成長することだ」


うわあ、なんだかユキちゃんの話しを聞いてたら、私が感動してしまった。


胸の奥がじーんと温かくなった。


ユキちゃんはハヤトくんに言ってるようだけど、これは彼自身に言い聞かせているようにも聞こえた。


ユキちゃん、私のためにそんなふうに考えてくれていたなんて。


私も、みんなを守る為に強くなりたいと思ってたけど、ユキちゃんの言葉のお陰でその思いはより強固になった。

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