表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/115

鬼神

こんなイケメンは見たことがない!こんなに綺麗な人がこの世にいていいのだろうか!!


私は思わず弓削さんに駆け寄って聞いた。




「あの、この方は」


「所長の赤星さんだけど」


「さっきの訂正でいいですか?」


「訂正って何の事?」


「面接無かったことにしてって言ったのを訂正で」


「?」


「面接、是非お願いします」


「おい、目がハートになってる!」


「私もそう思います」


「······」




私は弓削さんの裏に回り手鏡を取り出して身だしなみを整える。


大きめの目は泣いたから少し赤いけどショートの黒髪や服装の乱れもない。


よし!私は赤星所長の前に出てお辞儀をしながら言った。


「はじめまして、雪村深月といいます。今日はアルバイトの面接をお願いしに来ました」


「所長の赤星だ。面接ということはあの貼り紙を見て来たってことか?」


「はい。そうです」


「そうか」


「所長、ちょっといいですか?」




弓削さんが所長になにかを耳打ちしている。




「へえ。面白そうな人材か」


「ええ」


「わかった。雪村さん、まずはこれを」




赤星所長はスーツの内ポケットから名刺を取り出して渡してくれた。


私は受け取りそれを見る。


何々、赤星探偵事務所 所長 赤星(れい)


わお!名前負けしてないな。カッコいい名前。


キラキラしながら赤星所長を見ると驚いた顔をしている。えっ、何か?


「ね、面白い人材でしょう?」


「ああ。そうみたいだ」




なんだろう?二人の間で話が進んでいるけど、私にはさっぱりわからない。




「悪かった。今、テストをさせて貰ったんだ」


「テストって何の事ですか?」


「一番は外のアシスタント募集の貼り紙。あれは常人には見えない」


「へ?」


「次はこの名刺。これは常人が受け取ると瞬時に爆睡する」


「はい?私、何ともないですけど」


「一定の耐性があるってことだ。合格だけど、ここの仕事はキツいんだ。やる気はある?」


「はい!もちろんです。(貴方の為なら例え火の中水の中)」


「わかった。今日はもう遅いから拓斗に送ってもらうといい。詳しい事は明日改めて話をしよう」


「はい。よろしくお願いします」


やったー!これで毎日イケメンを拝める。


じゃあなかった。


アルバイト確定で食費を削らなくてすむ!よし!私の生活も安泰だ。


私は弓削さんに家まで送ってもらえることになった。




「お前、鬼怖いとか死ぬとか言ってたのに大丈夫なのかよ」


「怖いけど所長が素敵だから、そんなの我慢するもん」


「はあ、そんなんでいいのかねえ?」


「うん。私、頑張るもんね。って、私にアシスタントが務まるのかな?」


「まあ、所長が合格出したし、大丈夫じゃないか?」


「だよね~」



弓削さんはじと目でこちらを見ているけど、そんなのは気にしないよ。


私たちはてくてくと歩いて先程の交差点までやって来た。


急に弓削さんが立ち止まり、緊張した面持ちのまま交差点を見つめている。


ん、どうしたの?


弓削さんの視線の先を見ると、う、嘘でしょ。あ、あ、あれは鬼って奴じゃないの?


またー!?




「ねえ、何で日に何度も鬼が出るの?」


「何でかって、何か惹かれるものでもあるのかな?」


そう言って、弓削さんは私の顔をちらっと見る。


ん、私の顔になにか付いている?



そして、驚くことに鬼は三匹いる。


一匹二匹って数え方で合っているのかも分からないけど、なんなのよ。


しかも、先程のよりも大きな体をしている。弓削さんも冷や汗が浮かんでいるけど大丈夫なのかな?


弓削さんはポケットからカードを取り出すと、一枚を鬼たちに向かって投げた。




「式神·炎」




鬼たちの前に炎の戦士が姿を現した。


炎を纏った戦士は剣を抜くと鬼に斬りかかった。


鬼は巨大な剣を手にしていて、炎の剣を簡単に弾き飛ばす。


さっきの鬼よりも数段格上って事みたい。


炎の戦士はその剣により真っ二つにされてしまった。


その跡にはバラバラになったカードが舞い落ちる。




「ちっ、まずいな。今度はこれだ」




弓削さんはもう一枚カードを取り出して、鬼たちに投げる。




「式神·(らい)


鬼たちの前に姿を現したのは、炎の戦士よりも更に大きな体で槍を構えた雷の戦士。


雷の戦士は槍を空に向けて掲げると、空が薄暗い雲で覆われそこから鬼たちに向かって雷が一筋爆音と共に落ちた。


ビリビリと痺れて、鬼たちは動けないようだ。




「痺れさせただけか··。雷でも倒せないのか···ヤバい」


「え?何、ヤバいの?」


「俺の手数の上位の式神でも倒せないって、何でこんな強い鬼たちがこんな所にいるんだ」


「え、大丈夫なの?」


「あんまり大丈夫じゃない。あいつら鬼って言っても鬼神クラスだ」


「鬼神···」


「式神だけじゃ勝てない。悪いが自分の身は自分で守ってくれ」


「えっ?えっ?」




弓削さんは左手を前に出して精神を統一し始め、なにかを呟いた。


『オン・マリシエイ・ソワカ』


その手はキラキラと輝き始めたと思うと金色に輝く弓を握っていて、右手には金色の矢を持っている。


一体何処から出てきたの?


弓削さんは弓に矢をつがえて放つ。矢は一直線に鬼神の肩に突き刺さった。


鬼神はダメージの為か片膝をつくが倒してはいないようだ。これは本格的にヤバいのかも!


鬼神は怒り立ち上がって剣を大きく振り払う。剣圧で吹き飛びそうになり、私は頭を抱えてその圧に耐えた。


ようやく剣圧が収まったかと思うと事態は悪化する一方だった。鬼神の剣は雷を真っ二つにしていたのだ。


ど、どうするの!


私、なんにもできないんだよ。あ、石は投げられる。あれしかやれる事はないけど、やるしかない!


手近にあった石をかき集めて左手で持つ。


私は1つの石を右手に取って、瞬間的に握り締め鬼神に投げつけた。


それは鬼神の足に当たり、鬼神はそのまま動けずに停止した状態になった。




「えっ?えっ?」


「おい、雪村さん!どんどん投げろ。念を込めるの忘れるな」


「えっ、念を?どうやるのよ」


「いいから投げろ」


「う、うん」


私は念を込めるとか良く分からないから、兎に角握り締めて投げる事にした。


投げた石は襲いかかってくる鬼神の肩に当たり、鬼神は持っていた剣を取り落とし、そして動けなくなった。




「凄いぞ!効いてる。雪村さん、勝てるかも。そのまま投げ続けろ」


「わかった」




私は石を必死で投げて鬼神を停止させる。そして弓削さんは鬼神の胸の部分を狙い、矢を放つ。


その矢は見事に鬼神の中心に当たり、そこから光が全身を駆け巡った。


鬼神は石像が砕かれたような状態になりパラパラと崩れ去った。


他の二体も同様に、弓削さんは弓矢で胸を射抜いた。


パラパラと崩れて行く鬼神たち。その後にはほわんと輝く光が浮かんでいる。




「な、何あれ?」


「まあ、見てな」




弓削さんはその光に左手を掲げ、右手に白いカードを持つ。


そしてカッと目を見開くとその光はカードに吸い込まれていった。


そのカードを弓削さんはまじまじと見ている。




「ねえ、それなんなの?」


「これか?これは鬼神のカードだよ」


「え、どういうこと?」


「さっき敵対していた鬼神、アイツらの一匹が仲間になった。俺の式神カードに封じ込めたから今後は一緒に戦えるんだ。鬼神·剛力」


「へえ。そんなことが出来るんだ」


「そのうちに雪村さんも出来るようになるから」


「えっ!私、石を投げるだけでいいのに····」


「力が使えたら所長は喜ぶだろうなあ」


「頑張ります!」




相変わらず弓削さんはジト目でみるけれどいいもん!もう弱気にならないよ。




「所で、今夜は余りにも鬼が多く出現する。危険だから一旦事務所に戻ろうか?もしかしたら鬼門が近くに開いているかもしれない」


「そうね。その方が安全ならそうする」



そして私たちはまた赤星事務所に戻ることになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ