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アメノウズメ

式神·アメノウズメ。

彼女は鉾を持ち、薄くて露出度の高い衣装を身に纏っている。

セクシーなのに気品があって美しい。



あっ!アメノウズメが動き出した。

大きく鉾を振るいながら、軽快なダンスを始めた。

コミカルな動きに惹きつけられる。


白い美女との間合いを詰め、踊りながら鉾を振るう。

美女はその動きを読むことができずに、一撃、二撃と鉾の攻撃をその身に受ける。


そして、よけきれずに美女の脇腹を鉾が突いた。

片膝をついた美女は、脇腹を押さえながらも忌々しげにアメノウズメを見る。


「くっ!日本神界の女神が式神とは、中々やるじゃない。ならば、これでどうよ」


そう叫んだ白い美女は、両手を広げた。

そこにはいくつもの雪の結晶が現れ、美女はそれにフッと息を吹きかけた。


雪の結晶は辺りに散り、ひらひらと舞い降りた途端に結晶の一つ一つが全て美女に变化した。


最早どれが本体がわからないほど、美女は増殖してしまった。

単体で見ると美しいかもしれない。でも、これだけ増えてしまったら、怖いの一言に尽きる。


「行くわよ」


美女が叫ぶと、美女の団体は私達全員に攻撃を仕掛けてきた。


私もうかうか見学している訳にはいかなくなり、扇を構える。

私の隣には、すっとヤトが並びたち剣を構えた。


私の頭にはまたしても扇の声が響くので、その通りに叫んだ。


『ヤト、狐火!』


「ヤト、狐火!」


私の声にすぐさま反応したヤトは、剣を天に向けて掲げた。

その剣から青白い炎が列をなして出現した。


そして、ヤトが剣を振り下ろすと青白い炎は一斉に美女軍団に襲いかかった。


美女は炎に触れると苦悶の表情を浮かべくずれ落ち、雪が溶けるように消え失せた。


見る間に美女軍団は数を減らしていく。


むむ、凄い効果!

私が戦うよりもよっぽど効率が良いよ。

ヤトの狐火が役に立って良かった。


周りを見ると皆んなが奮闘していた。


悠也さんは呪符を取り出して構えた。


「行け!破魔札」


そう言って、呪符を美女目掛けて投げた。

破魔札という名の通り、その呪符は魔を破るもののようだ。

呪符が触れた途端に美女は崩折れ、雪の結晶に戻った。

あんな使い方もあるの?!呪符って奥が深くて面白い!


拓斗さんはカードの束の中から一枚引き抜いてヒュっと投げた。


「式神-一寸法師」


その叫びとともに小さな式神が現れた。

うわぁ!なんて可愛らしいんでしょう。一寸法師だって!

あまりに愛らしくて私の目は釘付けだ。


「一寸法師、分身」


拓斗さんが叫ぶと、一寸法師は分身しその数を増加させた。

それがちょこまかと動き回り、美女に針のような剣を突き刺してゆく。

うまい具合に急所に刺しているようで、美女は呆気なく消え失せた。

小さくても強いんだ!


私、どうも小さくて可愛い物が好きになってしまい、一寸法師に触りたくてしょうがない。

じっと見つめていたら、拓斗さんにギロリと睨まれた。

私の行動パターンを、完全に読んでいるのではなかろうか?


そして拓斗さんはまたも叫ぶ。


『オン・マリシエイ・ソワカ』


拓斗さんの手には、いつの間にか金色の弓矢が握られていた。

あ、あれは鬼神と戦った時の金色の弓矢だ。

拓斗さんは矢を番え、キリキリと引き付けてから放った。

その矢は見事に美女に命中し、確実にその数を減らしている。


そして、真打ちの伶さん。


「アメノウズメ、鉾からリボンへ武器変更!」


式神のアメノウズメは腰から衣装のリボンを取り外した。武器の鉾と持ち替え、リボンをブンブンと振り回す。

それは鋼のような強度を持ち、スパスパと美女たちを切り裂く。

踊りながらリボンを振り回し、敵を倒していく。


『ノウマク·サンマンダ·ボタナン·インダラヤ·ソワカ』


ロザリオを眼前に掲げ、伶さんは何かの呪文を唱えた。


ロザリオはキラキラと輝きだし、その光は大きく長くなる。


気がつけばその手には細身の剣が握られていた。


あれ?怜さんのロザリオって法具よね。それが剣になっちゃった?!


凄い細工だね。

それにも感心するんだけど、剣を構える怜さんは美しくて絵になる。

こんな時なのに、つい見惚れてしまう。


そして、怜さんは走り出したんだけど、速い速い!

目で追うのがやっとなほどに、あっという間に美女軍団の中に入り込んだ。

怜さんは涼し気な顔で、剣を振るう。

何という剣技だろう!あんな早業で来られたら、避けようが無いんじゃないのかな。

正に神業である。


気がつけば、怜さんの周りにいた美女たちは跡形もなく消えていた。


みんなホントに凄い。なにか、ワクワクしてくる。 

よし、私も戦闘開始!


右手に持った扇を胸の前で水平にし、集中する。


感覚が研ぎ澄まされ周囲の物音が聞こえなくなる。

静かなる内に、私のセンサーは大きく広がり、全てを包み込む。


目に見えるだけでなく、感じる。

たくさんの美女の中、一人だけ異質に感じる。

そこだけ熱を感じるし、意思のある個体であり、他とはまるで違っている。

あれが本体だ!

目指すは最奥にいる美女。


「ヤト、援護を!」


私は叫び走りだした。

私の後を追うヤトは「任せておけ」と言い、前にいる美女を狐火で倒し、道を作ってくれる。

どうやら、私の考えが全て伝わっているようで、ターゲットである美女までの道が開いてゆく。


全力で駆ける私に、ヤトの狐火で倒れなかった美女達が襲いかかってくる。


目の前に来る美女達は素早い。私にその手を伸ばして来る。

触れたものを凍てつかせる冷気を纏った手が私の目の前に迫る。


私は握った扇に力を込めると、それはぱらりぱらりと開いた。


扇をさっと払うと、目の前の美女はたちまち元の雪の結晶に戻り、私の扇に吸い込まれた。


「ヤト!」


私の声にヤトは頷き、狐火を飛ばしつつ、美女達を剣でなぎ払ってゆく。

その剣は炎を纏い、少し触れただけでも相手は蒸発する。相当な威力がある。

雪の結晶の舞い散る中、私は目指す本体の美女の目前まで迫った。


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