そのとき、僕は生まれた
そのとき
僕は生まれた
殻を破って
生まれたんだ
初めて見る世界は途方もなく広く
初めて味わう空気は芳しく
巣はさっぱりとしていて
何もかもが新鮮だった
そして 朝の森に差す光
きらきらと
朝露の枝や葉が白く灯って
緑の葉脈が透けて見えた
僕は感極まって、ぴい、と鳴いた
そうしたら隣で兄弟たちも一斉に
ぴい、ぴい、と鳴き始めて
大合唱になっちゃった
そうしたら親鳥たちが交代でやってきて
僕たちに
虫のお刺身を食べさせてくれるようになった
僕たちは食べた
とにかく食べた
もりもりと
たくさん食べた
そうして幾日かたったころ
羽が生え揃ってきた
出発の時は来た
はじめは巣から枝までの
飛行訓練をした
何度も失敗して落ちそうになった
それでも 誰もが通る道だから
なんとかして飛ぼうと
あれこれしているうちに
いつの間にか飛んでいて
空にいたんだ
そのときの驚きといったら!
空は森よりも高く
遥かに高く
どこまでも青く広がっていて
澄んだ空気の中を
どんどん上まで飛んでいくと
ふわふわした白い雲が
横に浮かんで流れていた
僕はもう自由に
どこにだって行けるような気がした
けれど本能が告げる
北北西を目指せ、と
それならばと
仲間たちと隊列を組んで飛翔した
楽しかった
あれから何年もたって
仲間たちは各地に散って
違う土地で巣篭もりをしたりして
昔からの森の住人は少なくなった
僕は相変わらずだけど
仲間たちと過ごした日々は
今だって輝かしく思うし
毎日、朝日が昇るたびに
いつも新しい風を感じて
今日も新しい一日が来たぞ、って
とても新鮮な気持ちを感じるんだ
いつか僕の羽の位置が変わって
天使になれるかな
なれたらいいな
それまでは 森を守って
僕は、森の番をしていよう
そうしていつか
帰ってきた仲間に言うんだ
お帰りなさい
ってね
こちらの詩は、昼咲月見草様の詩、
『天使のたまご、神様のたまご』
を読んで、感銘を受けてできたものです。
光り輝くような明るい詩です。未読の方は、どうぞお読みになると、今日一日がハッピーになること請け合いですよ。