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WITHUOOM HSASTE -ウィトゥーム ハズアステ-  作者: KIKP
東北 芸術の国
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67 新たな道

フエルミューズを出て、一先ずサンビアとの約束の地へと向かう事にして、森の中に開かれた道を進み行く。

それは、どういった心境の変化で帝都側について行ったのか、その手掛かりが残っていないかを確認するために。

その移動の合間に、シルス達にサンビアからの手紙の内容と、セネリアが同行することについてを話した。


「サンビアからセネリア伝に手紙があった。詳しい事は見ての通り書いてなく、帝都側について行ったそうだ。それで、その代わりとしてセネリアがメアと話し合って代わりに来る事になった。先のやり取りから期間的ではなく、最後までだろう。そういう訳で、これからセネリアも一緒に行動することになったから。あとは、適当に自己紹介なり、話し合ってくれ」


そう、簡単な説明をし終わると、相変わらず眠たそうに隅で持たれて眠る様に目を閉じる。


雑…。まあ、必要最低限の説明はしてくれたからいいのだけれど…。もう、我関せずみたいな態度取らなくても…。


「気にすることないよ。そいつ私たちが同行し始めた時からそんな感じだから」

「そうなんだ…。それで、ええっと…」

「私の名前はサディア。こっちが妹の」

「リーディアです」

「サナです…」「イブ」「ノアだよ」

「そうですか。私のはアル…」


途中で言葉が詰まって何か思い考え、再び皆の顔を見る。


「セネリア…。ただのセネリアです。皆さんこれからよろしくお願いします」

「ええ。よろしくお願いします」

「よろしく」


簡単な自己紹介が済み、リーディアが気を利かせて演奏会での感想から話を始め、何の心配の必要などなく打ち解ける。

その様子を見て、先のドロドロとした事もあって心配していた二人は安心するも、内なる疑問を問うべくクロトを挟むようにして座る。


「…クロ、聞きたいことがあるのですが」

「ん?」

「何故、あの時止めたのですか?止めなければセネリアさんのピアノがあんな事にならなかった筈です…」

「そうだな。お前なら、魔力糸で宙の火炎瓶を制止させ、あの事態を防ぐ事ができただろうな」

「そう思っているならどうして…」

「なら、逆に聞くが。あの出来事に違和感を感じなかったのか?」

「違和感…?」

「何故、火炎瓶が投げ込まれ、発火した?」


そんなの、誰かが投げ込んで、火炎瓶なのだから割れたら燃えるでしょ。と、一体何を当たり前の事を言っているのだろうかと思いながら、その問いが意味のある事なのだと考えると、同じ答えの光景が頭に思い浮かび、「ほんとだ…」「何故…」と呟いて、戸惑いの様子を見せる。

それは、コンクールの日。皆と劇場で合流する前の道中での騒動。投げた凶器と加害者が国の防衛システムに、捕らえられる様子だ。


「本来であれば防衛システムによって、あの時火炎瓶を投げ込んだ奴は捕らえられており、火炎瓶も落下する事は無かった。だが、そうならなかった。そして、その場にはその防衛システムを作った一族が居た。これが意味するのは、あの瞬間、防衛システムは意図的に止められていたという事だ。

観衆の視線はセネリアとセオルに集まっていた。そんな中、投げ込まれた火炎瓶を止めて取ってみろ。観衆からの目線では、何処からともなく火炎瓶を取り出し、所持する危険人物。かと言って弾き飛ばしたら、観光客と国民に対する攻撃と見なされ、その瞬間に防衛システムを起動すれば、捕らえられるのは当然お前だ。シルス。

そこからは芋ずる式に、仲間である俺達。そして関わりのある、セネリアまでもが捕らわれていた。というところだろう」

「そうなったとしても、火炎瓶投げた実行犯を突き出せばいいのではないでしょうか」

「無駄だろうな。二人が感づいている通り、凡そ先の殆どは、あの女の企てたことだろう。国民であればあの国で犯罪を犯すのは無謀だと理解している。だから実行犯は権力と、何かしら弱みを握られて脅され行った犯行。だが、実行犯を問い詰めて突き出したところで、尻尾切り…。奴らが罪に問われる様な決定的な証拠が無い。だから、様々な御託を並べられ白を切られ、全ての罪をそいつに着せるのがオチ。そして、その間に俺達は調査の為だと閉じ込められ、国外に出させないようにとセオルに付き従う奴らに協力を得て、あらゆる手段を講じていていた筈だ。

だから、残された道は一つ。被害者であるセネリアが何もなかったと終わらす事だけ。被害者が問題としていないから、あちら側もそれ以上に事を大きくする事はできない」

「なぜですか?」

「まず前提として奴らが求めているのは完全な他者の非であり、自分達の非は一つもあってはならない。あのまま話を進めても、自ら自国の防衛システムには欠陥があったと認め、広めるに過ぎない。それに関しては何かしら対策していただろうが、問題はその後だ。観衆の目線からすると、先のは自らの過ちで自己損害をもたらしたようなものとして認知している。それに国が深く介入するということは、今後、観光客が如何なる自己損害をもたらしても、この国が対応してくれるという前例を作ってしまう。それは、国にとってとんでもいない損害になり得る。だからこそ、あそこがあいつらにとっても引き際だったんだ。それに、国のルールに則って出て行く者に固執し過ぎれば、寧ろ自分達が怪しくおもわれてしまうのもあるしな」

「なるほど…」


納得の出来る答えが返ってきたようで、満足な様子だ。


「それにしても。これからは、より一層注意を払わないといけませんね」

「そうね。あの様子だと、これで諦めるような感じでは無いでしょうし。来たら来たで返り討ちにして、吠え面をかかせてやるんだから」


やたらとやる気に満ちているな。他人事とはいえ、大切な物が悪意によって壊されるのが許せないと言ったところか。分からなくは無いが…。まぁ、いいか…。やる気があるのはいい事だし…。



それから一時間ほど進み続けると、目的地らしきものが見えてくる。

それは扉の無い大きな門で、一目で様々なゴミが見える。

ベニヤ板で作られた囲いの壁の高さは三メートルほどはあるだろうか。それほど高いにもかかわらず、ゴミが飛び出して見える。


「ここはフェルミューズで出た、ゴミの一時的保管場所」


一時的…保管場所…?これが…?と皆の目が点になる。


「まぁ、その反応よね…。私もそうだったもの。とりあえず、サンビアが住んでいた場所はこっちだから、着いてきて」


そう言って、門を正面に左の方へと歩いていく。


「皆も見ての通りあの国の人口密度だと、当然ゴミの量も多い。だから、出来るだけゴミを減らす為にリサイクルしたりしているけれど、使い回され続けてそれ以上再利用不可能とされたり、ゴミが多すぎる故に、リサイクルまで手が回せないゴミがこうして保管されているの。いつの日か再利用出来るようにってね…」

「その様子だと…。既に諦められているのね」

「まぁね…。こんな事になってる原因はゴミが多すぎるだけじゃないの。非協力的な「リサイクルなんて貧乏臭い」って言う否定派のせいで、一方的に増えてしまったのよね」


互に意見に間違いがあるわけでは無い。確かにリサイクルなどしてゴミを減らすのはいい事だ。だが、どこの誰が、どう使ったか分からない物を再利用して、作った物を使いたいと思う人は基本的に居ないだろう。

だが、それでも。この世界を汚さない努力をするべきだろう。この世界に生きる…。いや、生かせてもらっている以上は。




歩き続けて十数分。

すると、続いていた高い壁に変化が見えた。

それは先程まで見えていた壁よりも、一際ボロボロで人位の高さしかないベニヤ板で造られた門。

そこに掛けられた蝋燭を用いる門灯らしきものを見ると、燃え尽きるまで使ったのか、針が顕になっている。


門を潜って中を見ると、先程の門から見たゴミ山に比べて整理され、安全に通りやすい道が整備されているように見え、その続く道の途中に、周囲と少し様子の違うものがあった。


「ここがサンビア達の家よ」


それは、様々なゴミで造られた家らしきもの。

見栄えで言えば、子供たちがあり物で作った、秘密基地というものだろう。

その周囲には様々な遊んでいた形跡が残っていた。

トタン屋根の下に砂遊びで造られた、砂のお城などの造形物。家前の地面には、けんけんぱ等の遊びに用いた、丸や線、数字が書かれている。


こういった形跡は長年の風や雨等で消えてしまう為、ここ最近まで住んでいたのは確かだ。


外からその家を見ても大きくなく、大人数で入るものでも無いので、クロトとセネリアが中の様子を見に行く。


シルスが周囲の様子を見ていると、背中に何か倒れもたれ掛かる。

それが倒れぬようにと振り向くと、そこには体調が悪いのか、元気の無いイブが、力が無くもたれ掛かっていた。


「イブ、どうしたんですか?」

「ごめん…ちょっとだけ…このまま…」

「ええ。それは構わないのですが…。体調が優れないのでしたら先に馬車に…」


そう休むように提案している途中に、気が付き、イブの頬を優しくつつくと、静かな寝息を漏らす。


寝た…。朝から少し元気無かったのは分かっていましたが…。一体何に疲れていたのでしょうか…。


立たせて置くのも疲れるだろうしと、砂場近くの座れるところに連れて行って膝枕して休んでいると、その様子に気が付いて皆が集まって寄ってくる。

最初は寝苦しそうにしていたが、皆が集まるなり和らいだように、穏やかな寝顔になった。

それを見て、心配そうにも皆安心し、リーディアが溶けたような表情で可愛いと呟く。


すると、クロトとセネリアが建物の中から出て来てこちらへと歩み寄ってくる。


「どうした?」

「詳しくは分かりませんが、疲れていたみたいです」

「そうか」

「そっちは何か分かった?」

「さあな」

「さあなって…」

「中だけ燃やされていたのよ」

「燃やされていた?」

「ええ。恐らく未練を…。後戻りする場所を無くす為ね。結局、次に出会った時に聞き出すしか無くなったわ」

「そっか…」


そのセネリアの言葉はどこか嬉しそうにも、寂しそうに。そして不安のようなものが感じられた。


「シルス。さっきのピアノをここに出してもらってもいいかしら?」

「分かりました」


イブを起こさないようにしながら、操作を行い、目の前に残骸となったピアノを二人の間に出す。

それを見て、セネリアは小さく「ごめんなさいね」と呟いてしゃがんで、一つ一つ抱えていく。


「どうするの?」

「置いていくのよ。いつまでもこの姿で持って行き続ける訳にはいかないでしょ」

「大切な物を、こんな所に置いて行くのか?」

「一つだけ訂正させてもらうわ。こんな所では無く。ここだからこそよ」


そう言って、とりあえず持てる分を抱えて立ち上がり、砂場の奥へと歩いて行く。

するとそこには、幾つか壊れた楽器の小さな山が横に並んでいた。


「さっきはゴミの一時的保管場所と言ったけれど、ここは元々、ゴミ置き場なんて汚れた場所ではない。神聖な場所だったのよ」

「神聖…?」

「叔父様曰く。何十…何百年も前の大昔。芸術家達が大切に使えなくなるまで共にした、道具たちの墓場だったのよ。それがいつからか、ゴミをする場所となってしまったのよ」

「そうなんですね…」

「じゃあそこに並んでるのって」

「これは、サンビアがここで使っていた楽器達でしょうね。彼はここの住民だから、国で楽器を借りる事も、買う事が出来ない。だから、ここに捨てられた楽器を集めて修理し、分解して、使える部分を組み合わせ、もう一度新たな楽器として使ってたのよ。だからここに並んでいるのは、ここでその生を終えた楽器達の墓でしょうね」


一先ず抱えていたソレを積み終えて、残りを取りに戻ろうとするとメア達が近くまで持ってきており、差し出す。「ありがと」と一つずつ受け取って、丁寧に積み上げていく。

すると、手に持ったそれにあるものに目が止まり、煤汚れを拭き取って、それを見つめる。


「これだけは綺麗に残ってくれたのね…」


それは、CとSに似た文字が組み合わさったロゴのような、白の刻印。



メウリカでの留学を終え、八歳の誕生日。

ロメルに誕生日に何が欲しいかを尋ねられ、私はピアノを作りたいとお願いし、制作を初めて凡そ半年と少しで、ようやく完成した。


「それでこの子の名前はどうするんだい?」

「名前?」

「曲や絵画の絵にも、作られた全てにタイトルという名前があるだろう?これは、君が生み出した子だからね。名前が無いと可哀想ではないかい?」

「…言ってる事はそこまでおかしくは無いかもしれませんが…。それならもっと早くから言って欲しかったです…」

「ごめんね。だけど、これはよく考えるより、直感的に名付けるものだからね。なんたってこの子は、これから君と共にする家族であり親友…相棒なのだから」


そういうものなのかな…。直感的って言ってたし…。と考えが纏まらない。

そう、考えながらピアノを見つめていると、漆黒に自分の姿が映って見えた。


「決まったわ」

「聞かせてくれるかい」

「この子は写鏡。偽りなく、私の心世界を奏で歌ってくれる。もう一人の私。『心鏡』コル・スペクルム…。コルム」

「なるほど…。いい名前じゃないか。そうと決まれば、仕上げに、その名前を記してあげないとね」


そう言って、白い筆のような物を差し出され、受け取り、ピアノにその文字を刻み入れ、眺めながら撫でる。


これからよろしくね。コルム。




思い出に浸りながら、それを胸元で抑える。


ごめんね…。私のせいで、こんな姿になってしまって…。だけど、まだもうしばらく一緒にいて欲しい。これから歩む道に迷った時、一緒に考えて欲しい。一緒に戦って欲しい。こんな私を…弱い私を支えて欲しい…。だからもう一度…勝手でごめんだけれど―――。


それをポケットにしまい、残りの残骸を全て積み終えて短い祈りを捧げる。

祈りを終えて立ち上がって振り向き、皆の顔を見る。


「改めて、これからよろしく頼むわ。みんな」


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