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WITHUOOM HSASTE -ウィトゥーム ハズアステ-  作者: KIKP
東北 芸術の国
67/68

66 愛の形

クロト達がフエルミューズに訪れて三日、出発の日。

門の前で最後の準備と確認をしていた。

昼前と人の往来は多く、初日同様に、いやそれ以上に国民と観光客は大いに賑わっていた。

それは、昨日の夜まで雨が降ってた分か…。いや、雨上がりの次の日。晴天でこんなにも空気が澄んでいるからか。


「準備と手続き終わりました」

「そうか、ならメアが帰って来たら直ぐに出るぞ」

「分かりました」


メアは朝からセネリアの所に出発の挨拶をしに行った。少し長くも感じるが、まぁ、彼女らなりに話したい事もあるんだろうし、仕方ないだろう。


「ところであちらは、どうしますか?」


そう聴きながら、荷馬車の方を見る。

それは、準備を終えた皆が街の様子を羨ましそうに眺め見ていた。


「どうしたんだアイツら」

「昨日まで雨が降っていましたから。回り足りないのかと…。あと、これまでがあれだった為に、平和で居心地良かったですから…名残惜しいのかと」


体を休める為とはいえ、三日はやり過ぎだったか?いや、関係ないか。昨日まで暖かい風呂と布団だったのに、次の日は野営だからな。嫌になるのも分からなくもない。だが、これ以上の滞在は金を無駄に使うし…なによりも…。


「ほっとけ。サンビアと約束してるんだ。遅れる訳には行かないだろう」

「そうですね…」


お前もか…。

残念そうな顔をする彼女を見てため息をする。


「…三十分くらい近くを回ってていいぞって伝えてきてくれ」

「いいんですか?」

「メアが来るまでしばらくかかるだろう。一人の為だけに待ってるのも、あいつらに悪いからな」

「分かりました」


そう振り向くと、パァと楽しげな顔をして皆にその事を伝え、近くのお店を回りに行く。


「ほんと元気な奴らだな…。お前は一緒に回らなくて良かったのか?」


見送りながら荷馬車にもたれ掛かり、ほろを挟んで荷馬車の中に残る、元気無く膝を抱えて隅に座り込むイブに話しかける。


「…いじわる」

「あと三十分くらい我慢してやれ。まあ、どうしても耐えられないなら取りあえずの行き先は決まっているんだ。先に行っててもいいんだぞ」

「…我慢する」

「そうか」


この国は北に位置するのもあって気温は少し寒いが、晴天より降り注ぐ日差しはとても暖かい。日向ぼっことしては…。まあまあの心地よさだ。もう少し、空気が暖かければ最高なんだが。ああ、でもこれからまだ北に行くんだったな…。もっと寒くなるのか…。はあ…少し嫌だな。


そんなくだらないことを考えながら寛いでいると、奥の方が何やらざわざわと声が聞えた。


何だろうかと、視線を向けるとメアの姿が見えた。

また何かしたのだろうか?とよく見ると、彼女の手に大きなトランクを二つ。そして、その少し後ろに同じトランクを持つセネリアの姿があった。


問題を起こしたとかではなく、ただ有名人が現れたことに騒がしくなっていたようだ。

そうして気まずそうに、クロト傍に二人が立つ。


「その荷物…。お見送りって訳じゃなさそうだな。どういう要件だ?」

「ええ。要件の前にこれを」


半折りの一枚の紙を差し出され、受け取って中身を見る。


まずは、約束とお願いをしておきながら何の事情も知らせず、こちらの勝手で約束を反故ほごにする事になってしまい、本当に申し訳ない。

そして、続けて申し訳ない事になったのを知らせる。

僕は帝都の人間について行くことにした。

疑問に思うか、どうかは分からない。理由も教えることも出来ない。ただ謝ることしかできない。

本当に申し訳ない。

だからせめて、君たちの求めている答え。探しているものがある場所だけでも記しておこうと思う。


名前は書いていない。だが、内容を見るにサンビアからの手紙の様で、文章の下には幼い子供が描いたような地図らしき絵があった。


「確かに受け取ったよ。それで…。あんたの要件は?」

「サンビアの代わりに、私を連れていってほしい」

「何で?」

「そこに、一体何があるのかを知らない。帝都の人間が何を企んでいるのとか何て正直どうでもいい。ただ私は、彼に何があってそうしたのかを知りたい」

「それに、身の危険をかけるほどの価値があるのか?」

「さあ、どうでしょうね…」


微笑みながら少々きつく当たる様に言葉を吐く。


「でも、何もしなければ、当然、何も知ることは出来ない。何も分からないまま後で後悔するより。知って後悔する方が、幾分かはマシなんじゃないかしら。ひょっとしたらなんて事の無い、くだらない事かもしれないけれど…。それはそれで、いつかの笑い話となるわ」

「分かった…。お前達がそれでいいなら、俺から言う事は何も無い」


望んでいたその返事に二人は嬉しそうにする。


まぁ、帝都の奴らが何の為に演奏者を必要としていたのか、まだ分からない上、サンビアがあちらに行ってしまった以上、同等の実力者であるセネリアがこちらについてくれるのは、備えとして有難いことだ。


すると、再び遠くの方で騒がしい声が聞こえて来る。

次は一体何だ?と見ていると、人の群衆がまるでモーセの海割りの様に道が開かれ、この国では初めて武装した、六人の護衛騎士が円で囲い、薔薇のように赤い煌びやかなドレスを身に纏う女性がこちらへと向かって来ていた。

それを見て、セネリアが迎えるように数歩前に出る。


「セネリアさん…。これは一体どういう事ですか?」


その言葉に、二人の護衛が紙と盆の上に乗せられた白金貨の小さな山を見せる。


「その紙に書いてある通り、私達の家族としての縁を切る、手切れ金ですよ。お母様」


なんか、とんでもない会話が始まったな…。それにしても、評議員でさえ警棒を装備した衛兵二人だったのに、六人もの完全武装した騎士に護衛されている。セネリアの母親って一体、何者だ?


「この国は実力主義ってのもあって国王っていうのは無いらしいのだけれど、それに近しい王族的な地位は、一応あるらしいの。それが、この国の構造、防衛システムなどを作った一族。ミューズデウス家。セネリアのお母さん、セオル・ミューズデウスは、その一族の三女らしいわ」


なるほど。それは重要人物だな。


「何を言い出すと思えば…。もう大人になのですから、くだらない悪ふざけはやめて、次の演奏会に向けての活動に徹しなさい」

「悪ふざけですか…。本気ですよ」

「本気…?」

「家政婦さんへの給与。五歳から三年間通った学校の学費。借家の家賃に水、電気、そして食費。コンクールの参加費にその時に借りたドレス代にあなたから借りていたピアノ。私が生まれてから独立するまでの八年間、私に使った費用。ざっと見積もって一億位でしょうね。だから、色を付けて白金貨二十五枚。二億五千万Wですけど。足りませんでしたか?」

「そんなことを聞いているのではありません。手切れ金。この言葉の意味を分かってい言っているのかを聞いているのですよ」

「勿論分かっていますよ。これは、互を思ってのことですので」

「お互いの為…?」

「お母様。私はあなたから母親らしいことなんてして頂いた覚えは何一つありません」

「一体何を言い出して…」

「私が生まれてから育児は家政婦任せ。三歳になると無機質な倉庫に閉じ込めてピアノの強要。そして、自分が納得できない演奏であれば体罰の後に罵詈雑言を浴びせる。理想論を証明するための道具に過ぎない。これの何処に母親らしい所があるのですか?」

「体罰に罵詈雑言の覚えはありませんが、貴方を思って厳しく接したのはそうですね」

「才能の有無など関係無い。美しき楽譜に従い、地道な基本をやり続けることに才は目覚める。それがお母様の掲げている信条でしたね」

「ええ」

「貴方のおかげで、誰よりもピアノに打ち込むことができた。だから、幼くして同世代に劣ることは無かった。貴方の教えは正しい」

「ええ、その通りですよ。分かっているじゃありませんか」

「だけど、それが正解ではない。いえ、正解なんて元々ありはしない」


その言葉に、眉をひそめる。


「地道な積み重ねなんて当たり前。誰もが行っている大前提。正解どうこうっていうのは、神々が私達に記した曲達。完成された曲故に、誰もが魅了され愛し、崇拝され続けている。その世界はとても素晴らしいものというのに対して、貴方が信条の次にかかげる、演奏家は作曲家の奴隷であれという考えよ。間違ってはいないけど、そんな堅苦しい演奏の何処が、心の奥底から楽しむことができるの。芸術とは、万人が美しく感動し、楽しむためのものでしょう。そう…大勢から下らない戯言で侮辱し、見下されながらも、自由を問い、教え続けてくれている、彼のように」

「いい加減にしなさい。それ以上の発言がどう意味するのか。分からない訳では無いでしょう」

「ええ、分かっていますよ。互いに理解し合えないのだから、これ以上は平行線である事も」

「はぁ…分かりました。私との絶縁はまぁいいでしょう。ですが、この国から出ることが許されると思っているのですか?」


「随分と騒がしいな」


二人のやり取りを見ていた観衆を割って入るように、二人の衛兵を連れた二人の男がこちらに向かって歩いてくる。

それは、ロメルと評議員らしき男。


「ロメル叔父様とエリットさん…。なんでここに…」

「なんでって、仕事だよ」

「私はそれの証人役です。と言ってもこれだけ多くの目があれば必要ないかもしれませんが…」

「この国で生まれたあらゆる芸術・才能は、この国のものであり、この国で生まれた国民もまた、国の所有物である。これは、他国にその技術を無償かつ、安易に広めさせない為のもの…。私達を縛り付ける鎖。だけど、出る方法はある。それは、顧客と己に取り付けられ、提示された価値を基準に期間契約または、買い取って貰う事」

「…そうね。それであなた、セネリアさんの価値は幾らなの」

「現在の年俸は約十二億W。期間契約の場合、一月約二億W。買取の場合、約百四十五億Wといったところだろうか」

「なるほどね…。前者の短期契約ならまだしも、後者は無理でしょう。そんな水簿らしい格好の人達に、貴方の価値を全額払い切れるのかしら?」


自分に分があると見るや、セオルは不敵な笑みを浮かべる。


「何を言っているの。自分の事を他人に全部任せるわけ無いでしょう」


そう言ってセネリアは、メアから二つのトランクを受け取って開き、皆に見えるようにして差し出す。

その中にはいくつもの皮袋が緩められて入っており、空から降り注ぐ陽の光に反射して、眩しい輝きを見せる。

それは、ぎっしりと詰め込められた大きな白金貨だった。


「大白金貨百枚。白金貨五百枚。大金貨二百五十枚。金貨三十五枚。計約百五十二億五千三百五十万W これで十分足りるでしょう」


余りにも、次元の違う莫大な金貨の山に観衆は黙り込み、セオルでさえ驚きから冷や汗を落とす。

そんな中、二人は随分と落ち着いた様子で、エリットは衛兵の肩に手を置いて気が付かせ、衛兵達はセネリアに了承の得て、用意していた道具を広げその金貨の山の確認を始めた。


「あんた…。こんな大金どうして…」

「どうしてって、八歳の独立したあの日から今日まで、小さな仕事と選り好み、無駄遣いをせずに節約して、コツコツと貯めていたんですよ。まあ本来であれば、こんな形で使う予定ではなかったんですけどね…」


しばらくして、確認を終えた衛兵の二人がエリットに記述した紙を渡す。


「ふむ、百七十三億か…。これなら、後で正式に算術したとしても、十分足りるだろう。後のことはこちらで手続きを済ましておこう」

「ちょっと…あなた本気?」


余りにも淡々と事を進めようとする夫の様子に、セオルは焦ったようにその袖を掴む。


「本気も何も、これはこの国が定めた決まりだろう。彼女がそれを破ってない以上、何の問題も無いだろう」

「そんな…」

「では、私はこの後も仕事があるので、ここで失礼する。君達も、早々にこの国から立ち去りたまえ」


何とも思ってないような冷たい言葉を告げ、衛兵にトランクを持たせてその場を後にする。

ロメルも微笑んでそれについて行き、背中を向けながら別れの挨拶と右手を上げる。


「それじゃあ、行きましょうか」

「いいのか?」

「ええ。あの人の言葉通り、これ以上長いしたらそれこそ問題とされるわ」

「そうか…」


騒動が収まったと、陰から目立たぬようにと、シルス達が戻って来る。


「何があったのですか?」

「ああ、細かい事は出てから説明するが、端的に話すとサンビアと合流する予定だったが、あちらの方から会えなくなったとセネリア越しに連絡を受けてな。その代わりに彼女と一緒に行動することになった」

「そうなんですか…」

「これ以上ここに居座ってたら邪魔になって迷惑だろう、直ぐに出るぞ」

「はい」


「待ちなさい!」


直ぐに出て行こうと支度をしていると、セオルは開き直った様子で、威厳を感じさせる堂々とした姿勢で声をかける。


「まだ何か?」

「貴方、ご自身のピアノは何処に?」

「ここにありますが?」


そう、ピアノを保管しているであろう魔道具の箱を出す。


「お忘れですか?それは演奏者が楽に楽器を持ち運び出来るように、国が貸し出している物ですよ。国を出るのであれば、お返しください」

「ああ…。そうだった…」


困り顔にこちらを見る。

まあ、ピアノなんて重い物を普通に持ち運ぶなんて、大変だもんな。


「心配しなくても大丈夫ですよ。それに似た、物を収納する魔道具ならここにありますから」


そう、シルスが指輪を見せる。


「有難う。なら、お願いするわね」

「はい」


安心した様子で箱からピアノを取り出し、シルスが収納空間の設定をしている間に、箱を返還しようと、セオルの方へと歩み寄る。

すると、セオルは受け取ろうと手を差し出しながら、笑みを浮かべる。


なに…?その笑みは…。この公衆の面前…目立った事はできないでしょうけど…。何か嫌な予感がする。

そう警戒しながら箱を渡すと。「確かに、返して頂きました」と満足げな笑みに変わる。


考え過ぎか…。


そう、安心して振り向いた瞬間。

取り囲むようにある観衆の中から、何かが放物線を描き真ん中へと飛んでいた。

それは何か液体の入った酒瓶らしき物。その口からは布が飛び出して、先端に火が付いている。火炎瓶…!


「危ない!」


咄嗟にセネリアがシルスに危機を知らせる。

その声を聞いて、シルスは彼女の視線の先へと振り向きながら、それを確認し、冷静に魔力糸を指先に作り出す。


すると、不意に背中を強く引っ張られると、抵抗出来ず、いとも容易く力が抜けるように崩れて倒れ、いつの間にかクロトに抱きかかえられていた。


その瞬間、火炎瓶がピアノの側に落下し、割れる音と共に大きな火柱を上げて、瞬く間にピアノは炎に飲み込まれた。


「あらあら、大変」

笑みを隠すように口元を袖で隠す。


突然の出来事に、観衆から困惑と悲鳴の声が溢れる中、『早く消さないと』と、メア達が駆け寄ろうとすると。

「近づいたらダメ!」とセネリアが声を上げて、制止させる。


『未登録ノ 異常ナ高熱エネルギーヲ 感知シマシタ 火災発生 火災発生 近隣住民ハ 直チニ現場カラ離レ 避難シテクダサイ 繰リ返シマス 火災発生 火災発生 近隣住民ハ 直チニ現場カラ離レ 避難シテクダサイ』


何処からか、機械的な女性のアナウンスと共にサイレン音が鳴り響き始める。


『火災現場周辺ニ生体反応無シ 直チニ 消化活動ヲ開始シマス 危険デスノデ 近ヅカナイデ下サイ』


すると、ピアノの周囲の地面が触手の様に伸びて円を描き、燃えるそれをドーム状に包み隠す。

それは、密閉空間にして空気の遮断による消化方法。これなら、一分もせずに消化することができるだろうが、それでは、終わらなかった。ドーム状のそれは徐々に小さく圧縮していき、中からバキバキと押し潰され、砕ける音が漏れ聞こえてくる。


『消化完了 消化完了 待機シテイル担当者ノ指示ニ従イ 瓦礫ノ撤去ヲシテクダサイ』


ドーム状となったそれは解け、元の地面に戻り、そこに残されたのは、重厚感あったピアノの見る影もない無残な姿となった、残骸の山だった。


「災難ねぇ。こんな時に放火魔の被害に遭うなんて。あなたが望むなら、今すぐに放火魔を探してあげてもいいけれど」


隠す気などさらさらない、その不敵な笑みに、飛び出そうとしたメアの腕をクロトが掴んで制止させる。


「被害者である当人が我慢してるんだ。なら、勝手な行動をとるわけにはいかないだろう」


残骸の姿をジッと眺める彼女を見ると、右手から小さな何かが落ちた。

遠慮なしに拳を強く握り締め続けた為に、爪が手のひらを軽く抉り、にじみ出た血が溜まって落ちたのだ。それを見て、確かにと体の力を抜く。


暫く眺めた後、セネリアはこちらへと歩み寄ってくる。


「シルスさん。申し訳ないけどあれを入れてもらってもいいかしら。ちゃんとした場所に埋めてあげたいの」

「…分かりました」


残りの設定を終え、お願いの通りに残骸を魔道具の中へと収納した。


『撤去ノ完了ヲ感知 クリーン化ヲ行イマス』


すると、地面の黒ずみが消え、周りの地面と見比べても何ら違和感の無い、何事もなかったかの様な地面となり『コレニテシステムヲ終了シマス』とアナウンスを終え、セネリアはセオルの方を向く。


「もう、いいですよね。何も問題は無かったようですから」

「…ええ。そのようですね」

「では」


そう、振り向いて、クロト達と共に荷馬車に乗って、門から正式に出て行く。


それを見送り、観衆が徐々に立ち去って行く中、セオルは徐々に表情をひきつらせながら俯き、心配して近寄る護衛の体を強く小突く。


親に歯向かう何て…。絶対に後悔させますから…。


そう、観衆に悟らせまいと少しスッキリした様な表情を取り繕って振り向き、来た道を戻って行く。


近くにあるカフェの屋上の柵に身を預けてその様子をロメルが眺めていた。


「良かったのかい。愛する娘に別れの挨拶もしないで」


そう、テラス席で書類作業を行うエリットに話しかける。


「あの娘に父親らしいことはできませんでしたから、別れの言葉なんてありませんよ」


淡々とした、その言葉使いに、我が息子ながら冷たいな~と、思わず少し寂し顔になってしまう。


「それに…。愛する娘だからこそ…。一早く、こんな下らない国から出て行ってほしいのですよ」


そう、珍しく優しいその言葉に、フッと微笑む。


「そうかい…」


嬉しきその言葉に黄昏れながら、吹きゆく風に思いを乗せ、改めて見送る。


多くは願わない。


ただ一つだけ。


後悔だけの無い運命を。

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