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WITHUOOM HSASTE -ウィトゥーム ハズアステ-  作者: KIKP
東北 芸術の国
58/68

57 演劇

子供や犬たちがボールや追いかけっこと走り回り、賑やかな声が聞こえてくる。

中央街からへ少し東に逸れた場所にある大きな公園。

青い芝生とあちこちに点々と自然に生えたであろう花畑広がり、噴水や街灯に長椅子といった様々な装飾的設備、端の方には花や蔦などの植物が絡まり出来た植物庭園。その庭園の中に小さな小屋のカフェがあり、サディアが両手にカップを持って、ガゼボへと向かい歩く。

そこには買い物をしたであろう荷物を横に、リーディアが肘をついて、そこから見える公園の景色を眺めていた。

「はい、リィお待たせ」

「ありがとうサディ」

カップを受け取り、ストローを上品に咥えて飲むリーディアと対照的にサディアはストローと蓋を取って輩のように飲む。

「はぁ…随分と多く買い物したな」

「ええ。これで貴方達がどんなに服を酷く破ろうとも、完璧に直せるわ」

「う…ごめんな。これからもっと、苦労掛けると思う」

「いいわよ。貴方達はただ頑張っているだけなのだから。それに、知っているでしょ。裁縫好きなのだから、苦労ではないわ」

「ありがとうな」

「ええ」

「それにしても元気だな。あいつらは」

「平和で、いい事じゃない」

二人は、花畑に座って花を摘み取り、何か話し遊ぶサナとイブ、ノアの三人の様子を眺めて、こちらに大きく手を振る三人に、微笑みながら手を振って答える。

「まぁな…」

「ほんと夢見たいね。こうして私達がゆっくりとできるなんて」

「そうだな。あいつらには感謝してもしきれないな」

「そうね」

「でも、こんなに呑気でいいものかと思うがな」

ユーラクストの一件から、現状にまだ慣れる事の出来ないのもあるけれど、帝都の人間が何かを企んでる事。ユーラクストと同じ事が他の何処かでも起こってるのではと危惧しているのでしょうね。でも、

「貴方がそう思うのも分かるけれど、クロも言っていたでしょ。休む事も大事なことだって」

「分かってる」

「それに、世界一周なんて、普通に暮らしてたら、そうそうできることじゃないわよ。せっかくなら満喫させてもらいましょうよ。今回の観光も」

「…確かにそうね」

焦っているんでしょうね。皆の目からも特別な力を得た彼女がまだ、戦力にはならない。守られる扱いである事に。昔から負けず嫌いだったものねと、心の中で呟きながら微笑む。

「なんだよ」

「いいえ。あっちの方は、上手くいってるかなぁって考えてて」

「確かにな…。あれはあれで、鈍感な奴だからなぁ」

「二人共苦労しそうね」

「にしても勿体無いよな」

「何が勿体無いの?」

「二人してかなり容姿も性格も良いから選り取り見取りだろうに…。アイツの何処が良いんだか」

「こら。悪く言わないの」

「いいじゃねぇか。純粋な疑問くらい持ってても。リィはアイツの事どう思ってるんだよ」

「どうって、私達の恩人でしょ」

「それは、私も分かってるよ。それ以外、アイツそのものの魅力だよ」

「う〜ん、私達より小さく年下なのに要領良くて、皆のこと良く見て考えている所かしら。目の下の隈はどうにかした方がいいと思うけれど、それ抜きにしても純粋に可愛いじゃない」

「可愛いか?」

「ええ、イブもサナもノアも皆可愛いじゃない」

ああ、そうだった。リィは自分より小さいモノだったら、基本的に可愛いって言うんだったな。

「そういう、サディはどう思ってるの?」

「さいてぇな奴だよ」

苦虫を噛み潰したように、舌をべーと出して大袈裟に表現するサディアの、初めて見るそれに思わずリーディアが顔を隠して笑う。

「何笑ってんだよぉ」

「いや、サディもそんな顔するようになったんだって…ふふ」

「も〜」

「はいはい、ごめんなさいって。それで、最低って何があったの?」

「何って、アイツ私のところに来るのにわざわざ捕まってきたのは分かるんだけどさぁ。用が終わって抜け出すためにって、私が食ったと演じさせたんだぞ。それで、わざわざ血を撒き散らして被せるだけじゃなく、どこの誰の物か分からない死体の指を口に含ませて。陰湿な奴だ」

「それは確かに酷いわね…」

「それに…」

「まだあるの…?」

流石に引くところがあったのか、微妙な顔になりながら聞くと、サディアは何か悩むように考える。

「やっぱり、何でもないわ」

「何よそれ〜。気になるじゃない」

そっぽを向く彼女の頬をぷにぷにと人差し指でつつく。


「ほらほらぁ〜はやく」

「まってよぉ」

遊び終わったのか、頭にそれぞれの色の華やかな花冠を被って、庭園の入口に辿りついたイブとノアがサナを呼んで待ち、三人揃うなり、リーディアとサディアの元へと楽しげに走り向かう。


「あら、三人とも可愛いらしいものを付けてぇ。いいわねぇ」

「えへへぇ。サナちゃんが作ってくれたんだよぉ」

「そうなのサナちゃん」

「う、うん」

「やっぱり凄いわねぇ。サナちゃんは」

「それで…これ」

後ろに隠していた、オレンジ色の花冠を差し出す。

「私に?」

「うん…。三人で集めて作って。リィお姉さんに受け取って欲しくて。色んな服の事とか教えて貰ったから…そのお返しがしたくて…」

「そう」

受け取り、さっそく被って見せる。

「どうかしら?」

「似合ってます」

「ふふ。ありがとうね」

まるで我が子を褒める母のように、頭を撫でると、慣れないことに両手を胸元に、お湯が湧き恥ずかしそうに顔を赤くして俯く。

「ずる〜い。私も手伝ったんだからぁ。褒めて褒めてぇ」

「はいはい」


サディアが二人の頭を撫でるリーディアの姿を眺め見る。

そういえば私達が幼い時も、母にああして頭を撫でて貰っていたっけな…。

姿を重ねて思い出に浸っていると、不意に後ろからイブが紫色の花冠を飛んで被せた。

「ん」


ん、って何だよ…。と顔を見ていると何か気になった。


「イブ…間違いなら気にしなくていいんだが…なんか元気無いか?」

「…なんで?」

「なんとなく」


不思議そうに見ていると、特にそれ以上に用は無いようで二人の元へ行った。


無視かよ…。まぁ、なんも無いなら無いでいい事だが。


「喉乾いた」

「だねぇ。何か飲みたい」

「私も…」

「そうね。なら一緒に何か買いに行きましょうか」

貴方はどうすると?視線を向ける彼女に、手を軽く振る。

「荷物は見てるから行って来いよ」

「ええ。じゃあ少しいってるわね」

折り畳んで置いていた車椅子を広げて、手慣れた動きで移り座り、ノアが「わたしがおすぅ」と楽しげに、何を注文するのかを話しながら店の方へと向かって行った。


リィの言う通り、今の私達の環境はとてもいいモノだ。世界を旅しながら、自分たちの為に力を知り、もしもの時の為と、戦い方を教えてくれる人が居るのだから。

メア達の人と魔族の戦争を未然に防ぎたい。誰も彼もが平等に、平和に生きられる世界にしたい。その考え、思いは彼女らの顔を見れば信じられる。協力したいと思える。それは私たち二人を、国を救ってもらった恩返しを。

だけど、全てを信頼する訳にはいかない。それは、ミスティア教の一件もあるが。あの顕現した怪物が倒され、解放された時に感じた…あの真っ黒の煙の様に漂い、直ぐ搔き消えてしまった気配…。

考え過ぎ、気のせいかもしれない…。だけど、警戒するに越したことはない。

だから、私は今のそれらを存分に利用させてもらう。

もしもの時、リィだけでも守って逃げ出す為に。


—————————————————————————


換金を終えてクロト達三人は、特に何処へ行くかなどは決めておらず、川の様に流れ歩き、街の様子を眺め見ていた。

大通りに並ぶ、ここはなんの店だと分かるように。透明なガラスの壁のさきから見える宝石に服、高級そうな楽器や様々な仕事で使うであろう道具がキラキラと輝いて見える。


路上の所々で行われている、銅像のパントマイムにマジシャン、鳥や犬と動物を使った小さなサーカスと言った大道芸。

街中にある大きな川のような水路では、そこにある景色を描き写す画家や似顔絵師。

そして、公園のような開けたところでは演劇の準備がされており、二人はその開演される演目を知っているようで、三人もチケットを購入し、多く集まっていた観客と共に、鑑賞する事となった。


その演劇のタイトルは『静灰(せいはい)の魔女』。

今よりずっと遠い昔。魔術が盛んであった、魔術師達の時代。

学院から選抜された魔術師の探索隊達が、現在もある、あの天を貫く巨大な塔の究明をしていた。

主人公である騒拳(そうけん)の二つ名持つヴェイトも、その探索隊の一人であり、階層の最奥にて、顕現した魔物との激闘の果てに勝利し、魔瘴の晴れたその空間から戦利品と鉱石等を採取している時、隠し空間を発見し、その卵状の広い空間で、ふわふわと無数の光の粒子が空を漂う幻想的な景色と共に映った

中央にある台座の如く岩が盛られ、天井まで伸びるふっくらとベールのようなものが垂れ、暖かい橙色の朧気な光を溢れさせる繭のベットに包まれる麗しい眠り姫の少女と出会う。

その美しさに思わず触れると、少女が目覚め「ダメっ!」と拒絶するも、遅く触れた手を覆っていた手袋が灰となって消えてしまった。

その一部始終から、彼女が世界で邪神と共に恐れられる魔女であると、魔女の恐ろしさを探索隊の皆に説明されるもヴェイトは気にする事もなく、一目惚れしたと、その場で少女に告白する。

だが、この場所に閉じ込められていた彼女にその意味が分からずに断られ、仲間たちに笑われてしまう。

その様子を見て仲間たちも、彼女が邪悪な存在では無いと判断するも、彼女が危険な存在である事には変わりない為、ヴェイトの方から彼女の元に訪れる事を許容した。

そうしてヴェイトは毎日のように彼女の元へ訪れ、様々な話をするようになり、彼女がそんな外の話を聞いて興味持ち、外に出たいと言って、ヴェイトは彼女が外に出られるようにと、彼女が無害である事を訴え、唯一彼女が触れても灰とならない、ベールで素肌が出ないようにと衣服を縫い与えた。

そうして初めて外に出て、初めて手を繋ぎながら共に歩き、話していく内に、これ程までに尽くしてくれるヴェイトに対して彼女も、自身の中に芽生えたそれに戸惑う。

そんな、僅か0.0数ミリの布切れを挟まなければ、触れ合うことの出来ない二人の、恋物語。


演劇を見終えた三人は近くの喫茶店へと入り、ソフトドリンクを飲んで一休みしていた。

二人は、よく知っている話だったようで、終わったあとも楽しげに演劇の感想を語り合っていた。


ヒロインの触れた全てのものが、静かに灰へと成り果てる事から、『静灰(せいはい)の魔女』と、ヒロインの特徴通りのタイトルだったな。

二人もそうだが、窓の外を歩き行く演劇を見終えた女性達はとても満足できたように余韻に浸っており、若返ったように顔にツヤというか、潤っているように見える。

余程人気な話なんだろうな。


「クロ?」

「ん…なんだ?」

「いや、二人だけで盛り上がっちゃってその…ごめんなさい」

言い方は悪いが、二人に付き合わせられてるのにも関わらず、放ったらかしにしていた事が申し訳ないということだろうか…。

「言ったろ。今回は休暇だって。俺の事なんて気にする必要無いよ」

「そうですけど…。せっかく付き合って貰っていますし…。因みにクロは先の演劇にどんな事を思いましたか?」

「ああ、俺の感想を聞きたいのか…。二人ほど多くは語れないが…」

「そこまで求めてないわ。ただ、あなたの率直な感想が欲しいの」

「そうかそうだな」

そう、少し考えていると、二人の期待と言うよりも、気になるという表情が隠せておらず、かなりこの作品が好きなようだし、下手な答えは失礼になるか…。言葉を選ばないとな…。


「恋愛物語というものだろうか…。そういうモノには、あまり興味がなかったが…。今回のモノはそれなりに楽しめたよ。

主人公が閉じ込められていたヒロインを外に連れ出す。という在り来りな話で、終わり方は、ヒロインである彼女の呪いとも呼べる静灰の権能を抑えるべく、彼女を包んでいたベールにあった花の種子らしきモノの研究をしながら静かに暮していくという、少し中途半端な終わりだったが。

自分以外の何も知らないヒロインが、主人公と過ごす中で、芽生える彼女には理解できず気が付くことができない恋心。

そして、静灰の権能故に気安く手をつないだりと触れ合うことの出来ないと言う、見ている側に湧き溢れる、何とも言えないもどかしさといった終わりまでの過程。

それが胸焼けしない程度。ちょうど良い塩梅で…。だから、中途半端な終わりでも満足出来る仕上がり。

特に、出会ってからずっと傍で支えてくれる…そんな存在を好きになるのは…まぁ共感できたな」


そう、最後に昔の思い出に耽りながら、語っていると呆然としたように二人がこちらを見ていた。

「どうした…。何か変なこと言ったか?」

「い、いや。クロが好きになるのは共感出来たって…」

「もしかして…クロって…好きな人いるのですか?」

「それはまぁ…居るだろ」

      誰!?」

「「それって

      何方ですか?」

机をドンと叩いて前のめりになる二人。

「落ち着けよ。他にも客は居るし、店に迷惑だろ」

「「す、すみません」」

申し訳なさそうに店員の人に小さな声で謝って席に戻る。

「それで、どんな人なのよ」

「どんなって…普通だよ。二人も知ってるようなヤツだよ」

「私達も知ってる?」


その言葉から、自分達では無いのだと少し落ち込みながら、互いが知っているという条件の範囲で思考を巡らせる。


シルも知ってるとなると、イヴァリスの丁半賭博のあの人?いや、でも。私は彼女に対してそう詳しく無いし…。そう考えるとユーラクストのあの二人も違うわね。となると…。


クロの女性関係となると、私達七人の誰か…。ネルモネアの御二方とは、まだそんなに話している様子も無かったですし…。それを除くとなると真っ先に思い浮かんでしまうのが…。


イブとノアの二人。


この二人とは言葉など無くとも…。


異様に通じあってる様な感じがあるし…。

二人共が全く同じような考えで思い浮かべていた。


何で二人ともが聞いてきて、落ち込んでるんだ?


「…それで一体誰なんですか」

「誰って…お前達にも当然いるだろ?」


…私達にも当然いる?


「知識がまだ余り無い…小さい時に、色々と教えてくれて、世話してくれた…。家族と呼べるようなヤツが」


かぞ…く…?


     かぁ…」

「「そっち

     ですか…」


溜まりに溜まっていた深い、深いため息を吐き出す。


忙しい奴らだな…。一言一言でこんなにも上下するなんて。


「因みに…クロの両親ってどんな人なんですか?」

「さぁな。俺の実の両親とは会ったことないからな…」

「会ったことが…ない?」

「それは…ええっと…」

「俺が生まれて直ぐに、そいつに引き渡されたのか、誘拐されたのか知らないな。その辺はあいつ自身から教えて貰ってないから」

「赤の他人に誘拐されたってかもって…」

「なんでそんな淡々と言えるのよ…」

「色々と変な奴だったが、別にそれと言って変な事は…されてないからなぁ。こうしてちゃんと、育てられた訳だしな」


何ですか…。

      今の間は。

何よ…。  


「ところで、そのお方は女性なのですか?」

「ああ。見た目は若いが、俺よりそれなりに年上だな」

「名前は?」

「言ってもいいんだが…。ここは敢えて内緒だ」

「敢えてって何よ…」

「クロの言う、その方の変ってのは一体何なのですか」

「それは…まぁいろいろだよ。料理やら掃除といった家事全般がてんで駄目で、部屋は片付けても片付けても気がつけば汚部屋になってるし、俺が料理本を読んで身につけるまでは非常食か、何か分からない、旨味やら苦味、辛味というものがぐちゃぐちゃとした、真っ黒な…そう、暗黒物質(ダークマター)を作っていたな。よくあんな生活をして、生きてこれたもんだと思うよ」


そう、駄目料理の話が出てきて、他人事ではないと釘を刺されたように「うっ」と漏らしながら顔を逸らす。

「それなのに勝負事に関しては尋常じゃなかったからなぁ。船でお前たちにカードゲームの必勝法を教えたろ?あれは、そいつに勝つ為に考え着き、身に付けたものだ。色々な事で何千…何万という勝負してきたが…。それでも、最後の最後まで俺の勝ちは一度たりとも無かったがな」

「え…あの戦法でも勝てないの!?」

「一体どうやって…」

「俺が確実な勝ち方…。カードゲームやボードゲームといった先攻を握れば勝てる様になったのに合わせて別のゲームをするようにしてたんだよ」

「それは何というか…」

「ズルいわね」

「まあ、冷静に考えてみろ。先行が必ず勝つと決まったゲームなんて、つまらないだろう」

「確かに」

「ですが、反対に一方が必ず負けるゲームというのも面白くないのでは」

「普通そう思えるかも知れないが、俺はそうでもなかった。俺はそれぞれのゲームの動きに戦略、勝ち方を模索しゲームの本質を見出すという楽しみがあるし、あいつからしたら育成ゲームの様に、俺の成長を観察することを娯楽としていたんだろう」

「あんた等らしいわね。子が子なら、親も親ね。どんなことも考えようって」

「それで、その方は今どうしているのですか?」

「…さあな、俺も詳しくは知らない。あの日の勝負を最後に、勝ち逃げするようにどこかへと姿を消したからな」

「さあって…。突然いなくなって、心配とかないの?」

「心配っていてもなぁ。元々気分屋なところあったし、率直な考えだが、生命力と戦闘能力でいえばイブの何倍もあるんだ。よほどのことがない限り問題ないだろうから、心配する必要が無いな」

「よほど…その方を信頼しているのですね」

「それなりにはな…。まぁ、もういいだろあいつの話は。聞かれたから答えてしまったが、これ以上勝手に主観的に話すのは、失礼だからな」

「それもそうね」「ですね」

「それにしても、こんな話楽しいのか?」

その質問に二人は顔を見合せて答える。

「こうして、クロ自身の事を色々と教えてくれるのは、嬉しいですし」

「いつも、ぶっきらぼうな貴方とこうして話せるのも、なんだかんだ楽しいわよ」

「…そうか。それは良かったよ」

昔、彼女も似た事を言っていた事を思い出し、微笑むクロト。その様子が、新鮮で、急に見えたもので二人はパッと視線を逸らす。


急になんてもん見せんのよ…。

何故でしょうか…今は少し目を合わせられません…。

なんだ…?変なことは言ってないと思うが…。何に動揺してるんだ二人は…。


そう、三人それぞれが思っていると、いい香りが漂ってきて、白い髭の整ったマスターが料理を器用に両手に持って来て「お待たせしました」とおしゃれな料理名を述べながらテーブルの中心にポテトサラダを置き、オムライスとナポリタンにサンドイッチをそれぞれの前に並べる。

「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

「は、はい。ありがとうございます」

「では、ごゆっくりとお寛ぎ下さい」そう一礼して、カウンターの方へと戻って行く。

並べられたその料理は、名前に負けず劣らずのおしゃれな盛り付けで、いい匂いに食欲がそそられる。

「話は一旦このくらいで、冷めない内に食べるか」

「そ、そうですね」「そ、そうね」

そう、「いただきます」と小さく呟いて料理を一口食べる。

「「「おいしい」」」と三人が無意識に言葉をこぼす。

口の中でハッキリとそれぞれ素材の味が伝わるも、決して邪魔し合わない絶妙なバランス。流石、この大通りに出店されている店。接客も料理も一流だな

そこから、二人は二口、三口と食べると、互いの料理に目が行き、「一口いい?」「ええ、私もいただいていいですか?」と料理を交換し合い、再び「おいしい」と余韻に浸ると、こちらの料理に目が向く。

ため息をこぼしながら、オムライスの皿を二人の間に寄せる

「ありがとうございます。クロ」

そう、二人がお皿と一緒に寄せられたスプーンを見て一時停止して辺りを見渡す。

何をしてるんだ?と眺めていると、サナが自身で使っていたフォークで、クロトが食べた反対側を食べて、フォークをシルスに渡し受け取って一口食べて、お皿をこちらに返す。

さっきまでは「おいしい」とこぼして余韻に浸っていたりしていたのに、今回は「ありがと」「ありがとうございました」と他所を見て呟いて、黙々と自分の料理を食べていく。


一々不思議な奴らだなぁ~と思いながら、返された自分の料理を食べていく。


ただの休憩。観光だと思っていたが…。先の演劇では面白いモノが聞けたな。

主人公の二つ名である騒拳。それはウルクルズロットでのリヴェルトもそう呼ばれていた事から、何らかしらの繋がりがあるか無いか…。そして、魔女の恐ろしさを説明する為に出された破壊の魔女の話と、それだけ強大な魔女の権能を抑える事のできるベールと花。話故にどこまで、本当で何処までが作り話か分からないが、事前情報としてなら十分な収穫と言える。記憶の片隅にでも置いておこう。それに…。


そう二人の様子を再び眺め見て。


こういう時間も、悪くないな。と無意識に微笑む。

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