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WITHUOOM HSASTE -ウィトゥーム ハズアステ-  作者: KIKP
東北 芸術の国
57/68

56 観光

シャワーを浴び終えて、着替えの服を身に纏う。

と言っても、いつもと変わりない服を着て、ローブに消臭系のエキスを振り掛け、馴染むようにはたいただけだが。

特に、これといった準備などなく、宿を出てある広場の噴水に備えられた長椅子に腰をかけて、暇潰しと街の様子を眺める。

ロックにスチームパンクと人を近寄せがたい、一般的に少々怖い雰囲気を見せるこの街。

行き交う人々の恰好もそれに合う、自身がよく知る現代系のラフな服装やダメージファッションに、世紀末系の恰好をする者といるが、どの人達も、会話や演奏、絵を描いたりとしたするその雰囲気は、その街の雰囲気からは到底、思いもよらないであろう、柔らかく優しいもので、平和そのものといっていいモノなのだが…。

自身の中では、本来どうでもいい、気にも留めないであろう筈の。その頭に滲むようにある靄のような疑問を俯いて考える。

「お待たせしました」

「待たせたわねって…」

声を掛けるのだが、反応が無く、うとうとと船を漕ぎ始める。

「ちょっと、待ってる間に眠ってるんじゃないわよ」

「ああ、ごめ…」

強い呼びかけと、目の前で立ち止まる二人に気が付き、見上げながら軽く謝る口が、二人のいつもと違う格好を見て止まる。

シルスは首元を見るに少し厚い白いセーターの上に水色のトレンチコートを羽織っており、腰のベルトを締めることで長いロングスカート。

メアも黒のセーターの様なものを下に、オリーブ色の内側にプリーツされたジャンパースカートでその上にワンピースのサロペットと二人共、普段着ではない、清楚感あるお洒落な格好をしていた。

クロトに無言でジッと眺められ、二人は少し恥ずかしくなったのか、落ち着かないようにソワソワし始める。

「そ、その…クロ…」

「な、何か…何とか言いなさいよ」

無言のその時に耐えかねず、二人が言う。

「いや、何…。似合ってるなと思ってな。二人共」

感想を述べたからか、先ほどまで考えていた疑問を忘れたように、空っぽで軽くなり、立ち上がって観光して回ろうと数歩進むのだが、二人の足音が聞えないのに気が付き、振り向く。

二人は間抜けにぼうっと立っていた。

「何してるんだ二人共」

その声にはっと気が付いたように「す、すみません」「何でもないわよ」二人が追い付き、クロトを挟むように両脇に並んで歩み進む。

「そういえば、どうしたんだその服」

「これは、浴場に行く途中宿のオーナーに会いまして、宿の裏に服屋があると案内されまして」

「どうせ歩き回るなら、いつもと違う格好がいいなと思ったのよ」

確かにいつもの恰好じゃ寒いし。三人一緒に同じコートを着て歩くのもな…。気分転換としてはいいものだろう。

「どうせなら、クロにも声を掛けるべきでしたね」

「確かに、一人だけいつもと同じ格好だものね」

「別にいいよ。自分の見た目を気にしたことなんてないし。そもそも、俺はこの格好が落ち着くから別のモノを着る気はないしな」

「そうですか…」

「そう…」

明らかに残念そうにする二人。

たかが他人の服装にそこまで気にして落ち込むものか…。よく分からないなその感覚は。

「それで、最初はどこ行くんだ?」

「最初は道中で採取した魔獣の革や角の素材等を売りにいこうかと思ってます」

「ここにはギルドは無いみたいだが、引き取ってくれる場所は分かってるのか」

「問題ないわ。服を買うついでに宿のオーナーに、その店の場所を教えて貰ったから」

「そうか。なら、先にそこに行くか」


紹介されたその買い取りを行ってくれる店は最初に入った区画にあり、街の雰囲気通り豪華なものだった。

従業員である女性に買い取りの話をすると、それは店の代表のみが査定を行っており、呼び出しまで待つこととなり、それまで店内を見て回る。

細やかな装飾の施された壁や柱。いくつも並ぶ大小あるガラスのショーケースの中にある、宝石が加工された指輪やネックレスといったアクセサリー。楽器や文房具、武具そして絵画とあらゆる芸術品が展示されており、それらに提示されている価格はどれも一級品とアピールするような価格設定で、それはイヴァリスで暮らしてきたシルスですら、一瞬驚きを見せるものだった。


「いやはや、お待たせ致しました。この店のオーナー ミッドロイルと申します。では、査定を行いますので、こちらの部屋へ」


明らかに裕福とわかる服装と小太りした男に案内された別室は客室の様で、一つの大きな机とそれを挟んで二つのソファが並んでいた。

その部屋にも絵画など様々なモノが並んでいたが、商品と言うよりもコレクションと言ったところだろうか。値札は無く、とても丁寧に飾ってある。

ソファーに腰を下ろすと、先の従業員がお茶を前に並び、会釈して横隅に姿勢よく立つ。


「さて、査定する物はどちらに?」


その問いに答えるようにシルスが道中で採取し、下処理を終えている巨大な魔獣の革に牙、そして両手では収まらず、零れる程の宝石のアクセサリーを差し出した。

それはユーラクストで出立の準備をしていた時に、賊が溜め込んでいたモノの一割を、お礼とばかりに押し付けられ、受け取っていたそうだ。


「ほほぉ〜。これは査定のしがいがありますな」


査定の準備と白い手袋とルーペを取り出し、先に魔獣の素材の査定を始めた。


「査定中に聞きたい事あるんけど、大丈夫か?」

「ええ、構いませぬよ」

「この国に来たのは初めてなんで、何も知らないんだ。あんたなりに紹介をしてくれないか?」

「ほほぉ〜、そうですか。では、僭越ながら私なりに紹介させていただきます。

まず始めに、フエルミューズは人口七十万弱であり、国土は他国と比べ小国ですが、帝都より前に建国されており。古く、三千年以上の歴史があります。

大昔この国の民は元々ただの遊牧民族だったのですが、ある日、地上に訪れた女神。フエル様より、芸術をお教えを頂き、加護を与えられたと現在まで言い伝えられており、技芸・文芸・学術・音楽に舞踏とあらゆる芸術に優れ、芸術においては世界の中でも特に秀でた国であり、西に一キロ程離れた所にある港より世界各国から毎年、数百万以上の貴族の方々が代わる代わる訪れ、また多くの逸材を各国に輩出しております。

また、鉱石や宝石などの加工技術、工芸技能は高水準のもので、かの有名な種族、ドワーフにも劣らない技術力を持ち、更にまだ世界に知れ渡っていない技術を持ち、それによってこの国は、世界で一番安全な国とも呼ばれております」

帝都よりも古い国か…。この国の雰囲気から恐らく、記録書とかをまとめているだろうからな。滞在しているうちに、少し覗いてみたいな。

「最後にこの国には星1から5のランク制度があり、入場門からある大通り、そして中央にある劇場のある中央街に近い程ランクが高くなっております。

ランクが高いほど価格も高くなりますが、サービスの全てが一級品でありますな」

中央に近いほど優秀な店って事か。話的には中央にも宿はある筈…。入国審査の時に宿を紹介されてたから、あの時に提示した招待状によって客のランク分けがされているのか?

それとも、俺たちは格好があれだったからな…。サナやシルス、リーディアのような正装に近い格好をしていたら、門から近い落ち着いた区画の方の宿泊施設を紹介されていたのだろうか…。まぁ、そんな事はどうでもいいか。

「失礼ながら御三方は、何処から?」

「イヴァリスだ。海を渡って四国のメウリカ、ルベントそしてここに来たところだ」

「おお、あのイヴァリスからですか。なるほど、なるほど。査定品を見るに冒険者ですかな?」

「冒険者であり、旅人のようなものです」

「それはそれは。これ程大きな魔獣を倒せるとなると、かなり腕に自信があるとお見受けします」

「ええ、このくらいなら朝飯前よ」

「ほほう。それはそれは頼もしい限りですな。いやはや、生まれてから今日まで様々な魔獣の素材を見てきましたが、これ程大きなものは初めてですなぁ」

「一つ聞きたいことがあるのですが」

「ええ。なんでしょう」

「先程、防衛能力に優れており、世界で一番安全な国と聞きますが、特にそういったようなものは見られないのですが。特に城壁と、魔獣に備えたようなものは見えなかったので」

「ふむ。まぁ私も詳しくは知らないのですが、なんでも魔獣にのみ聞こえる音の魔術で、この国に近寄る事を防いでると聞いております。街内の安全に関しては…」

と黙り込んで、こちらをジッと見る。

「はっはっら。残念ながら、お話できませんな」

まぁ、そうだよな。今日この国に訪れたばかりの身元不明の者に、国の防衛システムを話すのは普通しないよな。と言うよりも、ソレを聞く俺たちも明らかにおかしく、怪しすぎるんだがな。

「別に御教えしても問題ないのですが…念には念をと言うやつですな。がははは」

教えても問題ないってよっぽど自信と信頼があるんだな。

「まぁ、運が良ければれですが、今日、見ることができるかも知れませんよ」

「それってどういう…」

「ささ、お話はここまでにしておいて査定を終えましたわい」

シルスの問いに答える気は無いと男は、査定道具をしまい、横に置いていた紙に文字を書いていく。

「一通り見させて頂いたところ、二十五点の宝石に関しましては状態に少し問題ありましたが、磨けばなんとかなるでしょう。それに比べ魔獣の皮や牙は傷が少なく、処理が適切であり、状態も非常に良いので…。まぁ、こんなところでどうでしょうかな」

そう、差し出された紙を手に取り見ると、買取価格欄に85万Wと描かれていた。

まぁ、いつのものか分からない宝石と魔物の素材。妥当と言えば妥当のものだが。

「120くらいいくと見てるんだが」

「交渉ですかな?流石に先程提示させていただいた額以上は厳しいですなぁ。90でどうです?」

「100だ。これより下はこっちとしては通せない」

強気なクロトのその言葉に、睨みつけるように黙り込む。

「がはは、分かりましたわい。100で買い取らせて頂こう」

そう、険悪そうな雰囲気から一転、あっさりと要望を飲んで、あっという間に100万Wを受け取り、店の従業員たちに見送られて店を後に歩き出す。


「随分あっさりと折れてくれたわね」

「それは違うな。妥協したのはこっちだ」

「それってどういうことですか?」

「従業員にオーナーが来るまで待ってるように言われたろう。本来であればその時に査定部屋に案内して待ってもらうのが効率がいい。対応としてはそれが普通だと思うが、敢えてそうしなかった。それは何故だと思う?」

「何故って言われても」

「オーナーからそう指示があったとしか…」

「そういう考えしてると、カモられるぞ」

「か…カモられる?」

「騙されるって事だ」

「うっ…。なら、その理由はなんだっていうのよ」

「オーナーは待っている間の、俺達の様子を見ていたんだよ」

「様子?」

「ああ。俺達の衣服などの姿、展示されている商品、その価格を見てどんな反応をするか。そこからどれほどの知識を持っているか、どれくらいの相場で納得するだろうかってな。

並んでいた商品を見て、二人は何を思った?」

「何をって…。高いなぁとしか」

「…そういえば、同じような商品が横に並んでて2倍から5倍の価格差があったような…」

「ブランドって奴だ」

「ブランド?ってなによ」

「商人の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせの事です」

シルスが説明するが何とも理解出来てない様子。

「例えば、一般的商人が作った花冠と勇者が作った花冠があるとする。どちらの方が価値があると思う?」

「それはもちろん勇者が作ったものでしょ」

「それがブランドって奴だ」

「なるほど…。だけど120万はどこからでたのよ」

「展示されていた商品の中に、魔獣の素材を元に作られたものがあった。恐らく今回査定に出したモノと同じものだろう。それらに提示されていた価格から、今回の買取に加工コストを差し引いても、あの男は400から500…それ以上の利益は見込めていたはずだ。だが、それでもコストの削減は商人からすれば当たり前のこと。だから四分の一を差し引いた85万を最初に提示したのだろうと見ている」

「ちなみに妥協したって言ってたけれど、クロから見て適正価格はどれくらいだったの?」

「150かもう少し上。だが、こちらは買い取って欲しい身。変に欲を出し、取引を無かったことにされる。なら、それより低めの価格を提示するしか無かった。実際、俺としては今回の額で納得出来てるから良い取引だったよ」

宿のオーナーとさっきの商人は何らかの繋がりがある。服屋を紹介したのはこちらの財力を見る為だろう。恐らく今回二人が服を買って訪れて無かったら、服を買う余裕もないと足元を見られ、更に低い査定額を提示されていたかとしれないな。

「まぁ、つまらない話はこのくらいで。色々と見て回ろうか」

「ええ」「はい」


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