第六十話 不思議な体験
「……夕方、か」
気がつくと僕は、茜色に染まっている空を見上げていた。
どうやらあの遺跡に入った場所のようだ。
しかし、あよ石の床はない。
まるで、最初からそんなものなんて無かったかのようだ。
「あっ! ライカさん!! ご無事だったんですね!」
「主様ー!」
「いやー、なんだか貴重な体験をしたねー」
三人の声に振り向くと、ぎょっと驚く光景を見た。
「え、えっと三人とも、その姿は?」
何故か三人とも完全に姿が戻ってなく、それぞれの獣耳が生えていた。ミィヤは猫耳、レンは……まあ元々生えていたからそのまま。そして、きらめさんが兎耳だ。
「なんだか、気がついたらこんな姿だったんだよねー。うさうさ! なんちゃって」
うん、素直に可愛いと思う。
けど、それどころじゃない。ど、どういうことなんだ? メサリが言うには完全に姿が戻るんじゃなかったのか?
「私は元からこういう姿ですが、二人は……」
「どうしよう……」
ちょっと、アタン! メサリ! どういうことなの!? いや、でもこのままでも普通に可愛いけど……違う、そうじゃないんだ。
「とりあえず日も暮れるし、夜営をしようか」
「うさー!」
「にゃ、にゃー!」
二人とも、あんまり気にしてないみたいだね。まあ、気にするよりはまだマシ、なのか?
それから、僕達はあの不思議な体験の余韻に浸りながら、料理をしたり、トランプをしたり。その後、眠ろうとしたけど、なんだか興奮して中々眠れなかった。
「……皆、起きてる?」
僕はライカのまま寝袋に入って、三人に声をかける。
テントは、例のごとくきらめさんがどこからともなく用意したものだ。僕達が持っていたのはぎりぎり三人が入れるものだった。
いつもは、一人か二人で見張りをするのだが、今回は四人仲良く寝ている。もちろん寝ながらも、僕は〈生命探知〉を使い、テントの周囲には〈ゴールドサークル〉にて、護らせている。
いつもこうすれば良いんだけど、こうしていると〈ゴールドサークル〉のせいで魔力が寝ている間にもごりごりと減っていくんだ。
「うん、起きてるよ」
「私もです、ライカさん」
「私は常に。むしろ夜型なので生き生きとしています」
左からレン、僕、ミィヤ、きらめさんとなっている。
「楽しかった? あの空間での遊び」
「はい。とても楽しかったです。私は、ずっと遊ぶということをしてきませんでしたから」
「私はもちろん。主様が楽しければ、私も楽しいです」
「お姉ちゃんも楽しかったよ。地球では、よく子供達と遊んでたからね」
僕も……楽しかった。理由は、ミィヤに近い。
あの双子は、この子供が持っている純真無垢な心を思い出せるために現れたのか?
いや、それもあるけど、もっと他に理由があるはずだ。
「あの双子ってさ、何者だったんだろうね」
「道化師?」
「仲良しでしょうか?」
「ただの子供とは思えませんでした。あの遺跡から推察するに、神々が創りし存在だったのでは?」
三人の言い分を聞いた後、僕は結構凄いことを口走ってしまう。
「僕は……意外とあの双子が遊戯の神メサンタリア様じゃないかって思っているんだ」
「え? それは、どういうことですか?」
「確か、メサンタリアは道化師だったよね?」
そう、この世界には道化師の格好をしている伝わっている。だから、あの双子を最初はメサンタリアが生み出した分身なんじゃないかって思っていた。
でも、双子と遊んで、触れ合って、感じるものがあった。
「だから、本当の姿は誰にもわからないんですよね?」
「そうです。主様の記憶によるとメサンタリア様は、子供から大人、男から女、動物にまで化けれるそうです」
けど、双子という説はなかった。
「……あの、気づいたんですけど」
「ん? どうしたの、ミィヤ」
「色々考えたんですけど、アタンとメサリの名前を合わせると」
「おっ! メサンタリアになるね!」
そうなんだ。二人の名前を合わせるとメサンタリアという名前になる。これは、二人と別れた後で思い付いたことだ。
ちょっと考えればわかるようなことなのにね。
「では、やはりあの双子は」
「可能性としてあるってだけだよ。もしかしたら、偶然かもしれない」
とは言っても、僕の中ではあの双子がメサンタリア様ってなっている。
「メサンタリア様って、確か一説では他の神様達と違って、今でも自由気ままに遊び歩いているんですよね? ライカさん」
「うん。化ける能力を使ってね」
神様っぽくないと思われてるが、それは信仰がないってわけじゃない。むしろ信仰心は絶えず増え続けている。
表の遊戯から、裏の遊戯、子供達の純真無垢な遊び心。
もしかしたら、五本の指に数えられるほどの信仰心がある神様かもしれないんだ。
「じゃあ、あの姿も?」
くるっと、こっちを見ながらきらめさんが問いかける。
「多分。ですが、あの姿が本当のメサンタリア様、なのかもしれないですね」
「二人で、いえ神様だから二柱で一柱の神様ってことですか? 主様」
「僕は、そうなんじゃないかなって」
そんな神様に、僕は懐かしさのようなものを覚えた。ということは、ライカの力は神様に関係している?
もしかしたら、神様が生み出した……そうじゃないと、ステータスオールSなんてありえない。
「……神様と遊んだってことですか。そう考えると、本当に凄い体験をしたことになりますね、私達」
「だね。神様と会えるなんてそうはないよ」
「きらめお姉様は、すでに神様と会っているのでは?」
「あっ、そっか。クルちゃんに後で聞いてみよっかな」
え? 普通に話をできるの? さすが愛称で呼ぶだけの関係。
それも、スマホでやるんだろうか?
「どちらにしろ、あの空間での体験は僕達の脳に一生の記憶として刻まれた。もう忘れることなんてできない」
「ですね……」
そう、絶対忘れられない。忘れない……また時間を忘れるほどに、あの双子と遊ぶために。




