第五十九話 遊ぼうね
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「ふう……さすがにちょっと疲れてきちゃったかな」
「私もー」
あれからどれだけの時が経っただろうか。本当に夢中になって、おいかけっこをしていた。
空の色も変わらず、空中に浮いている時計は時を刻んでいない。
懐中時計を持っているミィヤは、今別行動中。
これが、時間も忘れて遊ぶってことなのか……。
まあ、ライカだからこそできることで、ラルクだったら確実にすぐ体力が切れて捕まっていた。いや、体力が切れる前に捕まっていたかもしれない。
「楽しいね、遊ぶのって!」
満面な笑みを浮かべるメサリに、僕も自然と釣られて笑みを浮かべてしまう。
とはいえ、かなり遊んだからそろそろ三人の様子が気になってきた。さっきから、一人も姿を見ることがない。
……嫌な予感がする。
「あ、主様……!」
背後からレンの声?
「レン? ……え?」
何か声が震えていたため、まさかとは思ったけど、今までは姿が見えなかったレンが、何故か子猫と子兎を抱えて、幸せそうな表情で近づいてきていた。
「不覚、です! 可愛いに……可愛いに気を取られて……あうっ」
ぱたりと倒れたレンは、ぽふん! という気の抜けるような音を響かせ煙に包まれる。
そして、次に姿を現したレンは……子犬になっていた。
ま、まんまだ! いつも犬っぽいって思っていたけど、完全に犬になる時がくるとは。
「ふふん。やったよ、メサリ」
「さすがアタン! これで後は」
更に三人をやったアタンが合流してしまった。
これから、二人で僕を捕まえようと楽しそうな笑みでこっちを見ている。
「しかも、ここからは可愛い三匹も自動的に参加、と」
前門の双子。
後門の動物。
これは、僕も本当に本腰を入れて逃げないといけないね。
「ゆくぞー!」
「いくぞー!」
まず双子が動き出す。
動物達も動き出したが、双子ほど早くはない。
「それ!」
「それそれ!」
やっぱりアタンも三人を捕まえただけあって素早い。かなり動いているはずなのに……僕も大概だけど、双子の体力はどうなっているんだ。
「わん!」
「おっと! 可愛らしい動物さんの達も参加だね!」
真っ先に飛び付いてきたのは、レン……うん、レンだった。
まったくしょうがないなぁ。
「ほっと」
飛び付いてくるのなら素直に抱き止めてあげよう。
丁度いい大きさだったので、腕の中にすっぽりだ。
「お次はきらめ兎さんだね!」
レン犬に続くようにきらめ兎さんも飛び付いてくる。普通なら、抱き止めるところだけど、無理。
背後から双子も迫ってきていた。
「捕まらないよ!」
「わー! さっきの避けちゃうんだ!?」
「さすがだね! 兎さんと同じタイミングで飛び付いたのに」
そう言って、メサリが僕の代わりにきらめ兎さんをキャッチしてくれていたらしく、だらーんとしている体を左右に揺らしていた。
「にゃー」
着地地点にのんびりと移動していたミィヤ猫を掬い上げ、レン犬と一緒に抱き抱える。
二匹とも暴れることなく、大人しくしていてくれる。
こっちとしては助かるけど、なんでだろ?
「まさか、その二匹を抱き抱えたまま僕達から逃げようって言うのかな」
「いいね、そういうの! じゃあ、私はこの子を抱いたまま捕まえちゃう!」
「別に縛りをかしているわけじゃないんだけど……まあ、君達が楽しければそれでいいよ」
こっちは何度も飛び付かれるより、こうしていた方が集中できると思ってやっただけ。
それに、二匹ともそれほど重くないし。
「……」
「……」
なんだ? また向かってくると思ったから、構えていたのに。急に二人同時に空を見上げて。
「残念」
「うん、残念だね」
「何が残念なの?」
まさか、さっき空を見ていたのって、外の様子を?
あの様子だと、この空間に何か秘密があるみたいだ。
「僕達はもっと遊んでいたかったけど、そろそろ終わりにしないと」
「本当に残念! でも、遊んだら……帰らないと」
笑顔を向けるが、僕には寂しそうな表情に見えた。
そっか……そろそろ終わりか。
無限に遊べるわけじゃないんだな。やっぱり、始まりがあれば終わりはある。
ずっと、続くものなんてない。
「いくよ」
「いっちゃうよ」
「……来い!」
終わりだとわかり急に僕も寂しさが出てきた。僕も、最初こそ力の秘密を知るために参加したけど、最終的には純粋に楽しんでいた。
だから、終わるとわかって……こんなにも寂しい気持ちになっているんだ。
「……えへへ、時間だ」
「捕まえられなかったね」
結局、僕は最後まで逃げ切った。途中から、空間が徐々に崩壊していくのが見えたけど、それでも構わず遊んでいた。
この時間を無駄にしないために。
双子が教えてくれた楽しいを忘れないように。
「これで、全遊戯が終了だよ」
「楽しかったかな?」
きらめ兎さんを地面に置いて、双子は問い掛けてくる。
僕は、抱き抱えていた二匹をきらめ兎さんの近くに下ろし、双子へと近づいていく。
そして。
「楽しかった。とても……とても!!」
二人同時に抱き締めた。最大級の感謝を込めて。
「僕達も楽しかったよ!」
「こんなにも楽しかったのは○○○ぶりだよ!!」
え? 今なんて……メサリが何かを言ったみたいだけど、肝心なところが聞こえなかった。
「さあ、ここもそろそろ崩壊しちゃう。まずはこの子達を転移させるね」
パチン! アタンが指を鳴らすと、動物のまま三人が転移していく。
「心配しないで、ちゃんと元に戻ってるから」
先に消えていったアタンを背にメサリが一人だけ僕に近づいてくる。
「……最後に聞いてもいいかな?」
「うん。いいよ」
すでに空間は完全崩壊寸前で、僕達は体が浮いている状態だ。体が足の爪先から徐々に消えている。
こんな状態だけど、これだけは聞かなくちゃならないんだ。
「僕は……君達の何なんだ?」
ずっと双子に対して、懐かしさと嬉しさ、悲しさ、様々な感情が沸き上がっていた。
それは、双子も同じはずだ。
どうしてなのかは、僕自身もわからない。だから、わかっているであろう双子に……聞かなくちゃならない。
「……ごめんね」
一言謝り、メサリは僕に抱きついてくる。
ぎゅっと、首に回した腕に力を込め、語り続ける。
「今の私達からは、詳しいことは言えない。でも、これだけは信じて、わかって」
僕からゆっくりと離れ、メサリは涙を流す。
「私達は……君達のことが大好きだよ! だから、また……遊ぼうね!! 絶対に!!」
「……うん、約束する! また遊ぼう!!」
それを最後に僕もメサリも空間から消滅した。
僕の返事は……ちゃんと届いただろうか?
消滅する時の光であんまりよく見えなかったけど……届いたよね、きっと。




