第五十七話 最後の遊びを
最後のあっちむいてほいは、佳境を迎えていた。
何度も、何度もじゃんけんに勝って、負けて、回避を繰り返す。
疲労は貯まっていき、集中力もそろそろ切れてくる頃だろう。
「やるね!」
「君もね!」
この勝負により二人は互いを認めあい始めていた。
やっていること自体はあっちむいてほいなんだけど……。
「でも、そろそろ終わりにしよう!」
「いいよ。じゃあ……僕はグーを出す!」
ここで心理戦か。きらめさんには、不利なことだ。
「じゃあ……わ、私はチョキを出すね!」
きらめさん、隠し事が下手過ぎる! 明らかに動揺している。
アタンもその反応から、きらめさんが嘘をつけないと思い込んでいるみたいだ。
「じゃあ、いくよ!」
「うん! 最初はグー!」
「じゃんけん!」
さあ、どうなる?
アタンは素直にきらめさんがチョキを出すと信じて、グーを出すか? それとも、実はきらめさんのが演技だと思って……。
《ぽん!!》
アタンが出したのはグー。きらめさんが出したのは……パーだって!?
「なっ!?」
「あっちむいて!」
アタンの驚くが、きらめさんは容赦なく行動する。
「ほい!」
きらめさんは、下へと向けたが……アタンはジャンプしたので、ぺちっと潰された。
「ふん! ビクトリー!!」
きらめさん、勝利のポーズである。
それと同時に柔らか素材の腕は消滅し、アタンも平気な顔で座っていた。
「きらめさん。心理戦できたんですね」
「ふふん! できたのでした! ……実は、頭がぐるぐるして自分でも何を出したか、わからなかったんだよね」
「あ、そうだったんですね」
そういうのは、嘘でもそうだ! と言って黙っていれば良いのに。
嘘をつけないんだな……まあ、何はともあれ。
「これで、僕達の完全勝利なわけだけど」
双子を見ると、どこかもの足りなさそうにしていた。
僕は三人が喜んでいる中、双子へと近づいていく。
「アタン、メサリ」
「おめでとう! これで君達の完全勝利だよ!」
「おめでとう! おめでとう! というわけで」
「次の遊戯」
《え?》
もう遊ばなくても良いんだけど……僕の口は、思考は。
「君達が良ければ、やらない? もちろん、これは僕個人の意思だから」
「もちろん、私達も一緒に! ですよ、主様」
「ですね。確かに、さっきので完全勝利になりましたけど、私もまだ遊びたい気分です」
「ちょーと、疲れちゃったけど。最後の遊戯が凄く気になってるから、私も!」
皆……ありがとう。さて、後は双子の返事待ちだけど。
「どうかな?」
双子は、一度顔を見合せ、嬉しそうに目を輝かせる。
そして、勢いよく立ち上がった。
《遊ぼう! 遊ぼう!!》
元気に了承してくれた。僕も、楽しくなっているんだ。なんだか不思議なんだけど、双子が遊んでいる姿を見ると、嬉しそうな顔を見ていると、もっと遊んであげたいって。
「よーし! じゃあ、最後の遊戯の発表だ!」
「とはいえ、この遊戯には勝敗はない! 純粋な気持ちで楽しもう! ね? アタン!」
「そうだね、メサリ! 楽しく! 君達もね!!」
本当に楽しく手を合わせあう双子。
「というわけで、発表だ! 最後の遊戯は」
「おいかけっこだあ!!」
うん。もう考えない。ここからは、ただ純粋に遊ぶだけだ。
「けど!」
「ただのおいかけっこじゃないよ! 鬼は私達!」
ふむ。双子から逃げるわけか。
「そして、タッチされた人は可愛い動物となってしまいます!」
「わーお! 動物さん? でも、それってなんの意味があるの? アタン」
「良い質問だね、メサリ! 実はね、動物になっちゃったら、おいかけられている人にくっついて、行動を邪魔しちゃうんだ!」
なるほど。可愛い動物だから、無理やり払うことはできない。
更に動物達は、触れられた仲間だ。
「な、なんて恐ろしい遊戯なんでしょう!?」
ある意味恐ろしい遊戯だね。
「主様! 動物になろうとも主様の妨げになったりはしません!」
「レンちゃんは元々可愛いもんね! もしもの時は、私が抱き締めて撫で回してあげる!」
「主様の邪魔にならないためなら!」
なんて覚悟なんだ……でも、レンが捕まる姿が想像できない。
とはいえ、相手も身軽さや体力は相当なものだ。
あれだけ動いていたのに、もうけろりとしている。
「さあ、捕まえちゃうよー!」
「捕まえちゃおう!!」
パン! 手を合わせると、景色が変わる。
最初はまるで孤島のような場所だったけど、どこまでも続く平原となった。
「君達は自由に逃げてね!」
「逃げろ! 逃げろぉ!! カウント! 五! 四!」
カウントが開始した。僕達は、それぞれバラバラに逃げていく。
「三!」
「二!」
始まる。最後の遊戯が。楽しい楽しいおいかけっこが。
「一!」
「いっくよー! ゼロ!!」
刹那。
野獣の眼光で追いかけてくる。まず狙ったのは、ミィヤときらめさんだ。
「やっぱり私ですかー!?」
「そう来ると思ってお姉ちゃんが一緒! まっかせない!」
僕とレンは、バラバラだがミィヤときらめさんは一緒だった。
ミィヤ自身も自分が足が遅く、すぐ狙われると思っていたらしくきらめさんが側につかせていた。
「待て待てぇ!!」
「捕まえちゃうぞぉ!!」
「ひえー!」
「お姉ちゃんダーッシュ!!」
しばらくは、僕達が狙われることはない。
「なーんてね!!」
「そっちは任せたよ! メサリ!!」
「いえーい!」
なんてことはなく、方向転換して真っ直ぐ僕の方へと向かってきた。なぜ、僕!?
「撫で撫でしてー!!」
「なんで!?」
まったく意味がわからないけど、凄い瞬発力だ。
まるで、親に甘えてくる子供が如く、僕へ突撃してくる。
「捕まらないよ!」
「捕まえちゃうよ!!」
さあ、楽しもう。最後の遊戯を!




