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第五十三話 神の遊戯

「よし。この辺りは調べきったから、次に行こう」


 僕の力について何かがわかるかもしれない。そう思うと自然と気分が高揚してしまう。

 壁画の部屋を後にすると、どういうわけか今まで通ってきた道とは違い、明るい。さっきの壁画の部屋のように天井に光る石があるわけでもない。


 壁自体が明るいからか? いや、だとしてもここはまだ地下のはずだから……。


「本当に不思議なところですね。ここは」

「そうだねぇ。まるで壁が光っているみたいに明るいし……どうなってるんだろ?」


 そういえば、ダンジョンもこんな風に灯りがあるわけでもないのに、道が明るかったことがあった。

 ダンジョンの時は、神々が造りし試練の場ということで、人では考えられない力が働いている、みたいな感じで解決してたけど。ここは、ダンジョンなのか?

 そう考えると、あの石の床は入り口ってことになるけど。ダンジョンにしては、魔物が出なさ過ぎる。


「ん?」


 しばらく進むと、分かれ道に差し掛かった。


「おー。これは遺跡っぽくなってきたね。ここで、間違った道を選べば罠がたくさんのとんでもない道になっちゃうかもよ。慎重に選ばないとね」

「何かヒントになるようなものはないんでしょうか?」


 ヒント、か。……なんだ? 右の道から何だか懐かしい感じが。


「どうかされましたか? 主様」

「……右に行こう」


 と、僕は一人で足を進める。三人も僕に何かを感じたのか。勝手な行動をとった僕の後をついてきてくれる。

 懐かしい。

 なんで、そんな感情が……さっき壁画の時もそうだったけど、ここに何かがあるのか? 


「また、分かれ道ですね」

「しかも、次は三本だよ。どうする? ライカちゃん」

「……このまま真っ直ぐです」


 近づいている。確実に、僕が知っている何かに。

 でも、なんでだろう? 近づけば近づくほど、胸がざわつく。この先にあるものは、僕にとって大事なものじゃない? むしろ、僕が近づいちゃいけないものなのか?


「ライカちゃん。なんだか苦しそうだけど、大丈夫?」


 僕が苦しそうに服を鷲掴みにしていると、三人が心配そうに覗いてきた。


「あ、あの回復術をかけましょうか? 少しは苦しみも和らぐかもしれません」

「主様。もし、この先に主様を苦しめるものがあるのなら、私が先行して壊してきます」

「お姉ちゃんがおんぶや抱っこをしてあげちゃうよ?」


 三人の優しさに触れ、少し胸のざわめきが治まっていく。そして、僕は笑顔を向ける。


「大丈夫だよ。ちょっと胸が痛くなっただけ。それに……この先には、僕の力に関係する何かがあるはずなんだ。だから、こんなところで立ち止まってなんかいられない」


 ぐっと、拳を握り締めて、三人に行こうと言い、歩みを進める。

 僕は知りたい。

 この力が何なのか。どうして、僕にこんなとんでもない力が宿っているのか。ここには、この先にはそれがわかるものがあるはずなんだ。


「主様。どうやら到着のようです」


 わかる。この先に、何かがある。

 さあ、気を引き締めて、確認しよう。いったい何があるのかを。

 

「……ここは」


 辿り着いたのは、さっきの壁画の部屋よりも大分広いところだった。だが、壁画はない。

 あるのは、一つの輪。あの入り口となった石の床と似たようなものだ。そして、その奥には、石像が二つ。

 どちらも、妖精のような形をしている。


「ライカちゃん。ここに、ライカちゃんの謎を解き明かす何かがあるの?」

「わかりません。でも……あの石像を見ていると何かを感じるというか」


 僕はその感覚を確かめるために近づいていく。

 

《はい、そこまでー!》

《止まった止まったー!》


 が、どこからともなく響く二つの声に止められる。いったいどこから? 周囲を見渡し〈生命探知〉を使って確かめるも、ここには僕達以外の生命反応はない。

 となると、残るは。


「まさか、あの石像が喋ったんですか?」

「それしかないけど……」


 僕はナイフを構え、相手の動きを伺う。だが、襲ってくる気配はなく、そのまま石像の目が光りだす。


《ようこそ! ここは、遊戯の神が造りし遊戯の場! ここまで辿り着いた挑戦者達よ! 思う存分楽しんでいってくれ!》

「遊戯の神って……え? じゃあ、ここは神様が造った場所ってことですか?」


 遊戯の神と言えば、他の神々と違い自由気ままに生きているって書物には書かれていたけど。

 ここは、その遊戯の神メサンタリア様が造った場所だって言うのか。じゃあ、僕が感じていたものって……え? 僕ってメサンタリア様に関係してるの?


「あの! 質問いいですか?」


 そこで、僕はあれ? ちゃんと会話成立するのか? と問い掛けてから気づく。


《いいっすよー》


 あっ、普通に成立した。今、喋ったのは左の石像。若干軽めな喋り方をしている。


「ここは、本当に遊戯の神メサンタリア様が造った場所なんですか?」

《そうだよ。ここは、メサンタリア様がもっと他の神々や人類に遊びというものを知ってもらいたいという考えで造られた場所さ》

《まあ、造ったはいいけど、結局遊んでくれた神は、二柱だけだったけどねー》


 自由気ままな神様って聞いていたけど、やっぱり誰かと遊びたかったのかな。じゃないと、こんなものを造るはずがない。


《質問は終わりー?》

「あ、いえ。もうひとつだけ……ここの前に部屋にあった壁画。あれは」

《それについては喋れない》

「え?」

《そういう決まりだから!》


 ……肝心なことは知れず仕舞いか。


《だけど、ここで遊んでいけば何かわかるかもねー》

《そうそう。遊んでいけば、何かが掴めるかもよー》


 この石像達は、何を知っているんだ? まあでも、何かがわかるって言うのなら……やってみるか。


「ミィヤ、レン、きらめさん。僕は」

「よーし! めっちゃ遊ぶぞー!」

「遊戯の神様が造ったもので遊べるなんて人生で二度とないかもしれませんからね! 思いっきり遊びましょう!」


 まるで僕が言おうとしていたことがわかっていたかのように、二人は元気一杯に拳を突き上げる。

 

「主様。頑張りましょう!」

「……うん!」


 ここで、何かを掴めれば一歩前進できる。例え神が考えた遊戯だったとしても、必ず遊び尽くすしてやるんだ!


《お決まりのようだね》

《では、遊び人達よ! 遊戯場へ案内するから、そこの転移床に入って入って!》


 どうやら、あの床は遊戯場へと転移するためのものだったようだ。

 決意を胸に僕達は、転移床に足を踏み入れる。

 すると、待っていましたと言わんばかりに床が光輝く。


《ではでは!》

《楽しい楽しい遊戯の開演だよ!!》


 そして、僕達は遊戯場へと転移していく。

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