第三十二話 大群の殲滅へ
十万文字突破!
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「で? どうするよ、ハーバの切り札さん」
「僕は別にそういうのじゃないんですけど……まあ、当然のことだと思いますが」
ゴバックさんの問いかけに、僕は袖の収納空間からナイフを取り出す。
「だな。おっしゃあ! てめぇら!! この街を護るために戦うって奴は武器を構えろ!!」
大剣を掲げながら、ゴバックさんは出入口に訪れている冒険者や傭兵達に叫ぶ。ラメサさんも、いつでも準備万端とばかりに弓矢を構えていた。
「おう! やってやるぜ!!」
一人の冒険者が叫ぶと。
「この街を潰させてたまるかよ!!」
「やってやるわ!! あれぐらいの魔物がなんだって言うのよ!!」
連鎖するように、次々に武器を構え、高らかに叫び始める。
そして、結局全員が戦いに参加することになり、ゴバックさんが僕の背中を押す。
「え? あ、あの」
僕の姿が皆に見えると、おお!! と歓声が上がる。
な、なんで?
「ライカちゃんだ!!」
「我らがライカちゃんの登場だぁ!!」
「なにか一言お願ーい!!」
「さすがは主様! ハーバの戦士達は、主様の強さと美しさに魅了されているようですね!!」
そういう……ことなのかな? ゴバックさんは、それがわかっていて背中を押したわけか。
これは、何かを言わないといけない流れみたいだし。
「……皆さん!!」
一度、咳払いをしてから気合いを入れて叫ぶと、静寂に包まれた。
「えっと……その……」
だ、だめだ。こういう大勢の前で何かを言うことに慣れていないせいで言葉が出てこない……! 早くしないと、魔物達が迫ってきているっていうのに!
「が、頑張りましょう!!!」
やってしまったぁ……! あれだけ溜めておいて、こんな普通の言葉を言ってしまうなんて。明らかに、気合いが入らないだろう。これから、魔物の大群と戦うって言うのに……ど、どうなったんだろ? 自分の失言にそっと、皆の反応を見てみると。
「おっしゃあ!! 気合い入ったぜえ!!!」
「ライカちゃんのために、俺は戦うぜえ!!!」
「皆! ハーバのために、魔物を倒しに行くわよ!!!」
あれ? なんだか思っていた反応と違う? よかったのか? さっきので? ……と、とりあえず魔物をハーバに入れないために、さっそく向かわなければ!
「レン! 僕達が先行して、足止めをするよ!!」
「お任せください!!」
ゴバックさんやラメサさんにもそのことを伝え、先行しようとした。だが、ミィヤが声をかけてくる。
「あ、あの!」
「ミィヤは、バックアップを。ゴバックさん達と、後で来て」
そう伝え〈ゴールデンサークル〉を発動し、ミィヤの護衛としてつける。
「……は、はい」
何かを言いたそうにしているけど、ごめん。今は、魔物の進行を止めないと。
「それじゃ!」
「ミィヤ様。また後程!!」
「いってらっしゃい、二人とも」
「無理はするなよ!」
「私達もすぐ加勢に行くから」
力強く頷き、僕とレンは外壁の上から飛び降り、大地を蹴る。
魔物の達の進行よりも速く辿り着くため、最高速度で駆け抜け……。
「レン! 数は、百や二百じゃない。もしかすると、数千以上は居ると思って攻撃を!!」
「では、手加減はなしということですね?」
「あまりやり過ぎるのもだめだけどね」
と、僕はすでに短剣ぐらいまで伸びた武器を構え、炎を纏わせる。
「わっかりました!」
元気に返事をして、両手に黒き炎の鉤爪を纏わせた。
「開幕の一撃だよ! 〈紅蓮剣〉!!!」
「さあ、どこからでもかかってこい! 〈黒刃双牙〉!!!」
赤と黒の炎が魔物の大群へと襲う。
かなり火力を上げたため、一気に焼け焦げた一筋の道が出来るほどの魔物を撃退。
この攻撃により、魔物達は怯んでいるようだ。しかし、度胸がある魔物達も存在し、構うものかと僕とレンへと襲いかかってくる。
「それじゃ、ここからは分かれるよ」
「承知!!」
僕が右へ、レンが左側の大群を相手にする。効率を考えれば、これが一番だ。
「言っておくけど、手加減はできないよ!」
バチバチと、全身に雷を纏わせ、僕は駆け抜ける。
「〈ライジングステップ〉」
速度を底上げし、次々に魔物達を切り裂いていく。レンの方も、順調に数を減らしているようだ。
それにしても、この魔物の大群はどこから……。
こんな数、ここまで近くに来るまで気づかないなんて。これほどの数だったら、誰かが発見して先に知らせが来てもおかしくはない。
「それに」
僕を取り囲むように現れる魔物達。図鑑で見たことがある。だからこそ言える。
この辺りには出現しないはずの魔物達も混ざっている。例えば、砂漠地帯にしか出現しない《サンドフィッシュ》や《サボーガ》など。
他にも、確認をしただけで、この辺りで出現しないはずの魔物が十数種類は居る。まるで、誰かに転移か召喚されたかのようだ。
「おらぁ! てめぇら! 魔物どもをハーバに近づけるじゃねぇぞ!!」
どうやらそろそろゴバックさん達も、ここへ到着するようだ。とりあえず、僕達だけで半数は倒しておかないと。
「ん?」
視線? それも、僕に対して突き刺さるような真っ直ぐなものだ。
隠れる気がない? まるで見つけてと言っているような。
「……何者?」
ならばと、魔物達を切り裂きながら、視線の主のところまで移動する。そこに居たのは、黒髪の男。
魔物の大群の中に居ると言うのにまったく襲われる気配がない。
僕の登場に、男は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「待っていたぞ、強き幼子よ」
「この魔物達は、あなたが?」
急に魔物達の動きが止まった。やっばりこの男が主犯。
「その通りだ」
「あっさりとばらすんだね」
「隠してもしょうがないだろ? それに、こんなところに居るのに、無関係などと言えるはずもない」
男は、コートを翻し、手で顔を覆いながら、天を仰ぐ。そして、しばらくし、僕をまた見詰める。
「貴様、名は?」
「ライカ」
「ライカ……そうか、ライカか。強き幼子ライカよ! 我が名は、サディア・フェルナンデス! 魔族、と言えばわかるか?」
なんとなく想像はしていたけど、本当に魔族だったなんて。でも、これだけの魔物を率いているのなら、納得だ。
そして、明らかに僕のことを知っていた。
「その魔族が、ハーバをどうしようって言うの?」
こうして話している間にゴバックさん達が到着。魔物達との交戦を始めたようだ。
「あんな街にはなんの興味もない。俺が興味があるのは、ライカ。貴様だけだ」
「僕を呼び寄せるためだけに、こんなことをしたってこと?」
ぎゅっと柄を握る力が強くなる。
「そうだ。貴様のことを知ってから、こうして対峙するのを楽しみにしていた……! 方法などなんでもよかったのだ。例えば、貴様が大事に思っている奴を捕らえ、餌にする、とかな」
つまり、この状況は全部僕のせい。おそらくあの蝙蝠男が土産話をした男なんだろう。
「……そう」
「ああ。だが、こうして大所帯で戦った方が面白いだろ?」
と、サディアが笑顔で言うので、僕はこう返した。
「全然面白くないよ」
全身に雷を纏い、戦闘態勢に入った。




