第二十一話 ゴブリンを倒しに
そろそろ宿に戻る時間帯になった。
日も沈み、人々が今日も働いたぁ! という雰囲気になっている。僕達も今日は、久しぶりにダンジョンに潜り、攻略した。
しかもそれがボーナスダンジョンだったらしく、謎のスコップに【黒曜魔石】という貴重な鉱石を手に入れることができた。
明日はどんな楽しいことが待っているのか。
それを想像しながら帰路につくと。
「お願いだ! 俺達と一緒に来てください!! 幼馴染みが……幼馴染みを助けるために!!」
「はあ? そんなのギルドに依頼として申請すればいいだろ! それに、俺達はもう疲れてるんだ。これ以上は動けねぇよ」
一人の青年が冒険者にしがみついて懇願している光景を目の当たりにする。
こういうことはよくあることだ。
ギルドに申請していては遅い。今すぐに助けてくれと。
冒険者達も助けたいのは山々だが、何か大きな依頼を終えたばかりなのか。防具や服などがボロボロだ。
すると、青年は断られると次の冒険者へ、傭兵へと次々に頼みに行くが、この時間帯は誰もが一仕事終えて帰宅しようとするものばかり。
それに青年の言葉からはこんな名前が出てくる度に、急激にやる気がなくなる。
「おいおい。《ゴブリン》程度ならお前だけでも倒せるだろ?」
そうゴブリン。初心者でも簡単に倒せることで有名な魔物の一体だ。基本戦闘力はあまり高くないが、繁殖力は高く、よく女性をさらっては苗床にする。
なので、女性の大半が嫌っている。
それに大した稼ぎにもならないという理由から、冒険者や傭兵もそんな奴を倒すぐらいなら、他の魔物を倒したほうがいいと言う。
青年が頼んでいる冒険者もそれが理由で青年を足蹴りにした。
その後、一人膝をついて愕然とする青年。
他の人達も、ゴブリンの名を聞いて避ける者達や助けたいが、今日はさすがに無理だとやむを得ず去っていく者達も。
確かに時間が悪い。
いくらゴブリンとはいえそろそろ日が沈む時間帯だ。ゴブリンだけならまだしも夜に活動する魔物達が厄介だと理解しているからこそ、皆避けていくんだろう。
明らかに初心者な冒険者達が青年に駆け寄ろうとするが、先輩風の冒険者が肩を掴み、首を左右に振る。
先輩として未来ある人材を見殺しにするわけにはいかないということか。
「……」
「ライカさん」
そんな様子を伺っていると、ミィヤが服の裾を摘まんで声をかけてくる。
その目には助けたいという意志が込められているのがわかる。けど、自分が戦えないのにこんなことを頼んでいいのかと迷ってもいるようだ。
「よし。助けにいこう」
「ら、ライカさん?」
「ここでスルーなんかしたら、人として終わりだからね。それに、これは僕の性分だから」
目の前で誰かが困っているのに、見過ごすことなんてできない。これはこの姿になる前からそうだった。
あの時は自分に力がなくて悔しい思いもしたけど……今は違う。
この力は、誰かのために使うのが正しい選択なんだ。
「であれば、私もお供します。ゴブリン程度、このレンが全滅して見せましょう」
すっと膝を突き、キメ顔で言うレン。
「わ、私も行きます!」
と、手を挙げるミィヤ。
「うん。ミィヤには、さらわれた人達の誘導を頼むよ」
「はい! それにもしもの時は、私だって!」
そう言って、スコップを手にする。
「あまり無茶はしないでね? それにミィヤにはこの玉達がついてるから余程のことがない限り大丈夫だよ」
そして、僕達は時間が停止したように立ち尽くしている青年に話しかけた。
・・・・・
「ありがとうございます! 本当にありがとうごさいます!!」
「気にしないでください。それで、僕達よりも先にゴブリンの巣へ入った冒険者達のことやその他の詳細をお聞きしても?」
幼馴染みが誘拐された青年の名前はリーグさんというらしく、誘拐された幼馴染みはアルメさんというらしい。
現在、猛ダッシュでゴブリンの巣へと向かっている最中だ。
ちなみに、リーグさんは僕が担いでいる。
リーグさんに合わせていたら、間に合わないと思ったからだ。リーグさんとしては、幼女に背負われるのは非常に恥ずかしいようだが、我慢してもらっている。
ミィヤも同じ理由でレンが背負っている。
「は、はい! この数日間、俺と一緒にアルメを探してくれていた冒険者パーティーなんですが、そのメンバーの一人が幻術にかけられたみたいな状態になっていたんです」
「幻術……」
となると《ゴブリンメイジ》や《ゴブリンシャーマン》が居ると見ていいかな。
「それで、気がついたところで近くに巣があるんじゃないかって、探していたら」
「見つけた、ということですね」
「はい。幻術で入り口を隠していたらしく、そこは魔法使いの冒険者さんが解除してくれたおかげでなんとかなったんです」
それはおかしいな……確かにメイジなどの術士が居るとしても、幻術で入り口を隠すなんて発想ができるとは思えない。
確かに、メイジやシャーマンぐらいだったら他のゴブリンよりは知能は高い。けど、それでも人間には及ばない……。
これは、上位種が居ることを想定したほうがいいかも。
「それで、三人で巣へと潜入したんですが、一時間以上経っても出てこないので、最初に指示されていた通りにハーバへ戻って助けを求めに来たんです……」
なるほど。ということは、その冒険者達は最悪やられている可能性を考えなくちゃならないわけか……。
聞いた話では、そのパーティーは三人ともCランクの冒険者だという。いくらメイジやシャーマンが居たとしても、簡単にはやられることはないはずだ。
「ここですね」
「は、はい。凄い……僕だったら一時間半はかかったのに、その半分以下の時間で……」
到着したのは、なんの変哲のない洞窟の入り口。
今はこうして普通に見えるけど、最初は幻術で隠蔽されていたんだよね。
「よし。じゃあ、さっそく潜入だ」
一応、スキル〈生命探知〉で洞窟の中を確認する。
……どうやら、この洞窟は二つの道に分かれているみたいだ。右側には人らしき反応が三つに、魔物らしき反応が十以上。うち一体はなにか変な反応だ。
そして、左は……人の反応が多いな。それに魔物の反応もでかいのが多いようだ。となると、今回の作戦は。
「レン」
「はい」
洞窟に潜入しながら、レンへとこう告げる。
「ここからしばらく進めば道が二つに分かれる。僕とミィヤ、リーグさんは右に。レンは左を頼める?」
「承知しました」
「助け出す人は三人居るから。ゴブリンを全滅次第、洞窟の外に」
「お任せください! このレン! 見事ゴブリンどもを殲滅し、捕らえられた者達を救助してみせます!」
ありがとう、と礼を言ったところで、道が分かれる。
「じゃあ、頑張ってねレン」
「ご、ご武運を!!」
「行ってきます!!」
レンと分かれ、僕達は右の道へと進む。すると、リーグさんがこんなことを聞いてきた。
「あの、さっきの子は大丈夫なんですか? 一人じゃ危険なんじゃ」
「心配は要りませんよ。レンちゃんは凄く強い子ですから!」
「むしろ、ゴブリン達のほうが可哀想だと思いますよ」
「は、はあ……?」
まあ、見た目が可愛い犬耳の女の子だもんね。でも、レンなら心配はいらない。
その実力を知り、認めているからこそ任せたんだ。だから、僕達もしっかりとやり遂げないと!




