第十七話 ダンジョンで見つけたのは
「〈ダークアサシン〉!」
素早さがある蝙蝠の魔物である《シャドウバット》へと、刃と化した闇を伸ばし、切り裂いていく。
「ミィヤ様! 伏せてください!!」
「は、はい!」
そして、ミィヤを襲おうとした一体をレンが木の棒を鋼の刃と化した武器で切り裂いたところで、静寂に包まれる。
現在僕達は、五階層まで危なげなく進んでいる。ここまで進んできて、わかったことが三つほどあるのだが。
まず、ひとつにここはそこまで魔物のレベルは高くないということ。あの三十層ある迷宮ダンジョンだと、五層辺りの平均レベルが十五なのに対し、今攻略しているダンジョンの平均レベルは七になる。
そして、次にわかったことは、ここまでずっと似たような風景が続いていることから、このダンジョンはそこまで深くはないかもしれない。
まあ、僕も本で読んだり、じいちゃんや他の冒険者達をから聞いたことだからはっきりと断言はできないけど。こういう平均レベルが低く、五層まであまり代わり映えしないダンジョンは大抵深くても十層までとなっている。中途半端に六層や七層という時もあるようだけど……ここはどうかな?
で、三つ目にわかったことは。
「ふむ。これは【アイライト鉱石】ですね。お? こっちは【ミドレン鉱石】じゃないですか!?」
地下洞窟ダンジョンということもあり、鉱石が豊富に採れる。これにはミィヤも大興奮だ。
見つけては、ひょいひょいと青や緑の鉱石をカバンの中に収納していく。
「ここは所謂ボーナスダンジョンみたいなところなのかな?」
「ボーナスダンジョン、ですか?」
「うん。時々出てくるみたいなんだ。敵がそこまで強くなくて、階層もそこまでない。けど、挑戦者達が喜ぶようなことが起こるダンジョン。それがボーナスダンジョンなんだ」
しかも、ボーナスダンジョンの凄いところは、他のダンジョンと違って挑戦回数があること。
ある一定回数挑戦すると、ダンジョンが消滅するんだ。
そのためボーナスダンジョンを見つけた者達は、我先にと何度も何度も挑戦したり、他の挑戦者達を遠ざけそうと考える。それだけボーナスダンジョンとは、凄いものなのだ。
「おぉ! では、もしここがそのボーナスダンジョンなるものならば早いところ攻略、もしくは手に入れられるものを手に入れませんと! もしかすると、どこかに隠し部屋のようなものがあって、お一人様限定のような宝が!」
キョロキョロと、どこかに隠し部屋へと続く場所がないかと興奮した様子で探すレン。
ミィヤも鉱石を回収しながら、壁をぺたぺたと探っている。
「隠し部屋、か」
確かにダンジョンにはよくあるギミックだけど……そう簡単に見つかれば苦労は。
「ひょわあっ!?」
「ミィヤ様ぁ!?」
「ミィヤ!?」
僕は、数多あるスキルでどうにかならないかと思考した刹那。
崩れた壁にミィヤが転がり入っていく。
慌てて駆け出す僕とレン。
「あいたたた……」
どうやら大した怪我はなく、どこかへと転がっていったこともないようだ。こういう壁が突然崩れて、どこかへと転がっていく罠があるため僕達は心の底から安堵する。
「ミィヤ、大丈夫?」
ちょっと頭を打ったのか。砂煙が舞う中で、頭を擦っているミィヤへと僕は手を差し伸べる。
「す、すみません。ご迷惑をおかけして……」
謝罪の言葉を述べながら、ミィヤは手を掴む。ぐいっと引っ張り、ミィヤを立たせたところで、僕は奇妙な光があるのに気づく。
かなり小さい青い光? いや、距離があるからそう見えるだけなのかな?
「もしかして、私のドジが隠し部屋を見つけてしまった!?」
「な、なんという幸運!」
「……よし。僕が調べてくる。二人は何かあった時のためにここで待機してて」
こくりと頷く二人を見て僕は〈ゴールドサークル〉を発動させながら、光輝く方向へと進んでいく。
周囲への警戒を怠らず、三分ほどでそこへ辿り着いた。
「これは」
小さな部屋だった。大人が四人ほど入れるぐらいの。そんな部屋の中央に突き刺さっていたものを目にした僕はなぜこんなものが? と疑問に思いつつも、手を伸ばす。
どうやら罠ではなかったようだが、僕はなんだか変な気分で二人のところへと戻っていく。二人は当然のごとく、何かを持ってきた僕を見て期待を胸に近寄ってくる。
「ライカさん! 一体何が……へ?」
「あ、主様。もしかして、それが」
うん。二人が動揺するのもわかる。だって、如何にもって感じの部屋にあったのは……。
「うん。この先にあった部屋にあったものだよ……」
「なんでスコップ?」
そう。僕が持ってきたのは、なんの変哲のないスコップ。特に黄金でできている! とか、魔石で強化されている! とかもなく。
見た目はどこにでもあるようなただのスコップ。
けど、僕は信じている。だって、こんな如何に隠し部屋ですよって、ところを通って、如何にも! って部屋に一本だけあったんだ。もしかしたら、何か特別な素材でかつ特別な製法で作られたスコップかもしれない。
「……硬い」
試しにダンジョンの壁や地面に使ってみるも特に凄いと思える感覚がない。
普通だ。普通のスコップだ。
これは神様に馬鹿にされているのだろうか? そう思い始めたところで、ミィヤが僕と同じようにダンジョンの壁にスコップを刺し込むと。
サクッ……。
え? 僕がやった時は、硬い岩に弾かれる感じだったのに。ミィヤの時は、まるで砂場にで差し込んでいるかのようにスコップの先が刺さっている。
「あ、あれ? なんで?」
やった本人もわからない現象のようだ。その後、レンも同じくスコップを使うが結果は僕と同じ。
このことから、ミィヤと違うところを考えると……まさか。
「このスコップって、ドワーフしか使えないんじゃないのかな?」
ドワーフと言えば、自ら鉱石を採取したり、穴を掘って洞窟などで生活する。大抵のドワーフは、地属性スキルなどを利用して穴を掘ったりするらしいけど……それに、ミィヤはドワーフだけど。
でも、それしか思いつかないんだよなぁ……。
「見てください! 壁にくっついている鉱石もこうやってスコップで周りの岩ごと!」
今までは持参したツルハシやレンのスキルで作った小型のツルハシで周囲を削って採取していたのに、謎のスコップを手に入れたことで一動作だけで採取できてしまった。
これにはミィヤはほくほくである。
「鑑定のスキルがあればそのスコップが何かわかるはずだけど……」
三人とも鑑定のスキルを使えないので一体どんなスコップなのかがわからない。なので、僕は今はスコップのことは置いておいてダンジョン攻略を最優先にしようと頷く。
「よし! 二人とも! 早めにダンジョンを攻略して、その謎のスコップを鑑定してもらいに行こう!!」
「これで色んな採取が楽になりそうです!」
「主様のご命令とあらば! うおおおっ!! そこを退けぇ! 魔物のどもぉ!!!」
とんでもないアイテムを手に入れテンションが上がりまくりのミィヤとダンジョン攻略のため出てくる魔物の達を次々に蹴散らしていくレン。さて、このダンジョンは何階層まであるのかな?




