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第十六話 久しぶりのダンジョン

「ライカさん! ライカさん! 見てください! 大きなキノコですよ!!」

「主様! こっちはぐるぐるの山菜です!」

「二人とも。残念だけど、二つとも毒があるから。食べられないよ?」


 今日は、名指しの依頼を受け、森の奥へで薬草採取をしていた。

 名指しの依頼を受けるということは、それだけ有名になったか、信頼を得ているかだ。


 僕達は、猫探しから家の手伝いまで、何でもやっているので、それなりには有名だと思う。

 まあ、違う意味で有名になってしまっているだけど。

 

 一人で《バーサクモンキー》や《クリスタルスライム》と言った上位の魔物を倒したり、ランクDとはいえ、複数人の冒険者達をも難なく撃退しているのにも関わらず、冒険者登録をしていない変わり者。


 本当は登録をしているんだけど、それはラルクとしてだからな……。ライカとしては、登録しようにも登録できないんだ。

 なので、わざわざギルドに申請すればいいものを、僕のところへ直接依頼しに来る人達が最近多い。今回の依頼も、最初はギルドに申請するつもりだったものらしい。


「ちょっと、目立ちすぎてるかな……」


 こうなってくると、ガルマのような輩がまた現れる可能性がある。そして何よりもあの三人に目をつけられているかもしれない。

 けど、今更だよな……それに。


「ライカさん! これは食べれますよ! 前に図鑑で見たことがあります!!」

「主様!! この木の実も食べれます! 主様が昔、よく食べていたものです!!」


 今回は薬草採取だというのに、それを忘れているかと思うぐらい楽しそうに山菜や木の実を採取している二人。

 

「今更後悔したってしょうがないよね……」


 後悔するんだったら、その後に何があるかを想像して、どう乗り越える方法を考えよう。

 この楽しい日々が続くように。


「あ、主様!!」


 目的の薬草を丁度見つけたところで、ミィヤと一緒に居たレンが叫ぶ。ちなみに、レンにはミィヤの護衛をしてもらっている。

 どうしたんだと、近寄っていくと。


「あれを見てください。あれはおそらく」

「……ダンジョンの入り口?」


 レンは両手にキノコを、ミィヤは片手に薬草を持ちながら、地面へ無理やりはめられた鉄の扉を見ている。

 そんな中、僕はそっと膝をついて扉を観察する。

 これだけなら、普通の扉に見えるが、横に数字が刻まれた四角形の板が置かれていた。この板が、ダンジョンの入り口である証拠。しかも、まだ誰も入っていないみたいだ。


「ダンジョンって確か、急に現れる神々が与えし試練の場、でしたよね?」


 ダンジョンの入り口を見るのが初めてなのか。ミィヤが、扉の周りを観察しながら僕に問いかけてくる。


「うん。ダンジョンは世界中に突然現れる試練の場。森や洞窟の中にこうした鉄の扉が現れるんだ」

「み、民家とかには現れたりはしないんでしょうか?」


 突然現れるという言葉に、そうなることを想像してしまったのだろう。不安そうな表情を歪ませる。

 

「今のところは、一度も民家、人が住む場所に現れたことはないよ」

「ほっ……」


 けど、これから出てくる可能性がないわけではない。もしかしたら、神々の気まぐれで、突然どこかの民家にこの扉が……。


「それで、ライカさん。どうしますか?」

「僕としては、新しいダンジョンに一番で挑戦したいけど」


 今は、依頼の途中だ。いくら冒険心がくすぶられようとも、目の前の仕事を放棄しては、せっかく僕達を信頼して名指しの依頼してくれた人に失礼だ。

 

 正直、このままダンジョンに入ってしまえば、時間を忘れてどんどん奥へと進んでしまうだろう。

 僕だって冒険者だ。まだ見ぬ未知にテンションが上がる。

 だから、ここはぐっと堪えるんだ……。


「薬草は後三つだ! 早く集めて、依頼を達成してから挑戦しよう!!」

「わかりました! このレン! 主様を一番で挑戦させるため、全力で薬草を採取します!!」


 ミィヤが持っている薬草の匂いを嗅ぎ、僕に一礼してからどこかへと走り去っていく。

 そして、三分後に戻ってきたレンの手には依頼の薬草三つが握られていた。



・・・・・



「よし。どうやら、まだ誰も挑戦してないみたいだね」


 薬草を無事に届けた僕達は、早々にダンジョンの入り口に戻ってきた。レンは、挑戦カウントを刻む板を確認して、安堵の息を漏らした。


「これで、主様が最初の挑戦者です!! このまま最初の攻略者になれるように、我が刃にて魔物どもを」

「れ、レンちゃん落ち着いて! まだ早いですよ!?」

「レン。張り切るのは良いけど、ダンジョン内では獄炎属性スキルの威力はちゃんと調整してね?」


 その場にあった木の棒を子供のように振っているレンは、僕の言葉にハッと我に返り、背筋を伸ばし元気な返事をする。


「よし。それじゃあ……ダンジョン攻略開始だ!」

「ど、どんなダンジョンなんでしょうか? はぁ……私も久しぶりのなので、心臓がバクバクしてます……!」


 扉が開き、地下へと下る階段を下りながら、ミィヤは何度も何度も深呼吸をする。

 その隣では、レンが子供のように目をキラキラと輝かせていた。僕はというと、ミィヤと同じように心臓の鼓動が高鳴っているけど、緊張しているからではない。

 楽しみでしょうがなくなっているんだ。


 元の姿では、楽しみ半分恐怖半分だった。ダンジョンは外以上に何が起こるかわからないからだ。

 ダンジョン特有の魔物や完全に殺しにきているような罠の数々。

 しかも、一緒に行ってくれる人が居なかったのもひとつの要素だったのかもね……。でも、今は違う。僕には戦う力がある。一緒にダンジョンを攻略してくれる仲間が居る。

 怖い気持ちは自然に薄れていく。

 

「まずは、一層目。洞窟か」


 ダンジョンの中は、色々と違う。例えば、僕が最初に攻略したダンジョンは、石のような灰色の壁に囲まれた迷宮のようなものだった。

 その他にも、自然溢れる階層ばかりのダンジョンだったり、今回新しくできたところのように洞窟風だったり。

 階層によって、環境が違ったり。


「おぉ……やっぱり地面に扉があったから、洞窟のダンジョンなんですね」

「とはいえ、なかなか明るいところですね。あの苔のおかげでしょうか?」


 安全ラインから僕達は、一層目の風景を確認する。僕も全てを知っているわけじゃないけど、今回僕達が潜った地下洞窟ダンジョンは光る苔が壁や岩などに生えており、ランタンなどで照らす心配がないほど明るい。


 天井は、暗く見えない。

 そこまで下りたわけではないけど、ダンジョンとは別空間にあると言われているため、もしかするともっと深いところなのかもしれない。


「二人とも、一層目だけど。周囲に警戒をして進むよ」

「はい!」

「お任せを! ミィヤ様の護衛は、このレンが命をとして勤めます!!」


 洞窟ダンジョンで、気を付けなければならないのは、天井、壁、地面から突然魔物が現れることだ。

 進んでいたら突然足をとられて襲撃された、なんてことはよくあること。それに、岩が転がってくる罠や落とし穴、落石なども要注意だ。

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