第十三話 卵から生まれたのは
ここから新章です! 新キャラが出ます!!
「……困った」
「困りましたね」
僕達は困っていた。
《スライム》大量発生、ガルマ襲撃の騒動から早三日。いつものように僕が泊まっている部屋で朝食をとろうと、ミィヤが訪れたのだが……僕があるものを見詰めて固まっていたので、一緒に眺めることに。
視線の先には、僕の身長半分ほどの大きさまでに成長したあの卵がテーブルに置かれていた。
しかもだ。
さっきからびくぴくと動いている。そう、つまりは今にも生まれそうだという予兆を示しているんだ。
なので、困っている。
正直まだどんな卵なのかわかっていないんだ。あれから、時間があれば図書館などにも寄っては、色んな図鑑で調べたり、わかりそうな人達に聞いているんだけど、それでもさっぱり。
まあ、まだ生まれないだろうと今まで通りに過ごしていた。
けど、その結果がこれだ。
油断してた。まさか、ここまで大きくなるなんて。
しかも今にも卵から何かが生まれそうな状況にある。
「ら、ライカさん。何が生まれるんでしょうか?」
「魔物、だと思うけど」
正直魔物だと断定するのは早計かと思っている。でも、それしか可能性がないんだ。
もしこれがドラゴン……だったりはしないだろう。さすがに三十層からドラゴンが生まれる卵が手に入るなんてことはまずないだろう。けど、見たことのない卵だし、ドラゴンは卵から生まれるって言われてるし……ど、どうなんだろ?
「あっ! 見てください! 卵にひびが!?」
ミィヤの言う通り、卵にひびが入った。そこからにょきっと何故か刃のようなものが。
「あれって……やっぱり《バーンブレードウルフ》の卵、だったのかな?」
ひびから生えている刃には見覚えがある。手に入れた場所から考えてもやっぱり《バーンブレードウルフ》の卵だったのかもしれない。
「《バーンブレードウルフ》と言えば《ウルフ》の中でも上位種にあたる魔物ですよ! もしそれを使役できたのなら、凄いことです! 後、もふもふしたいです!!」
「それは僕も同感だ。お? 一気に出てくるみたいだ」
そうこう話しているうちに、飛び出ている刃が卵を切り裂き、光が一気に放出。
視界が真っ白になるほどの光だ。
それが収まったので、そっと目を開けて確認すると。
「ーーーあれ?」
「お、おぉ?」
唖然。
まさにその一言に尽きる。完全に予想外だ。てっきり小さくて、もふもふしていて、つい抱き締めたくなるような魔物の赤ちゃんが生まれるとばかり思っていた。
でも、違った。
テーブルの上に居たのは、僕達の視界に映っているのは……。
「お、女の子?」
「みたいだけど……ただの女の子じゃないね。獣の耳と尻尾が生えてるから獣人ってことになるけど」
テーブルの上で眠っていたのは、裸の女の子。それも、獣の耳と尻尾が生えている可愛い女の子だ。
髪の毛は、黒髪……というか、それに赤が混じりあっているような不思議な色をしている。あれ? そういえばさっきの刃がどこにもないような?
「どどどどどどうしましょう!? 魔物かと思ったら女の子が産まれちゃいましたよ!?」
「お、落ち着いてミィヤ。とりあえずこの子を起こしてみよう」
「は、はい」
まさか卵から女の子、人が生まれるなんて。これは、誰にも予想できないし、理解できないわけだよ……。
「ねぇ、君」
と、声をかけた刹那。
ぴくっと体が動き、目を覚ます。そして、ころっと床へと転がって、僕の足下で肘をつく。
身長は、今の僕より少し小さいぐらいだろうか? てっきり、あのサイズの卵から生まれるから赤ちゃんかと思っていたけど……。
「おはようございます、そして初めまして。主様」
「あ、主?」
これまた予想外の展開だ。まさか、見ず知らずの女の子にいきなり主と呼称されるなんて。
それに、恥ずかしくないのかな? 裸のままなのに。僕は、元が男なだけに恥ずかしい。なるべく視線を彼女の顔に向けるようにして話そう。
「はい、我が主。卵の中から今か今かと、この日が来るのは待ち望んでおりました」
「……とりあえず話を聞かせてもらうよ。えっと、名前はなんて言うのかな?」
「私に名前はありません。種族名もない存在ゆえ、呼びやすい名を主様がお付け下れば、私はその名を誇りに生き続けます」
まあ、そうか。卵から生まれたんだもんな。名前がないのは当たり前か。けど、種族名がないのはおかしい。
しかも、彼女はそれを理解している。というか、卵の中からもう自我があったんだよな……本当に何者なんだろう、この子? とりあえず、それを知るために名前をつけなくちゃだね。
今か今かと、本当の犬のように尻尾を振って待ってる。可愛い。
「じゃあ……うん。今日から君は、レンだ」
「レン……ありがたく頂戴致します! これから私はレンと名乗り、主様の下僕として命尽きるその時まで」
「えっと、レン。まずは服を着ようか?」
このままだとまともに話もできない。
「いえ! 服など必要ございません! 主様と同じになろうなどと恐れ多いです!!」
えぇ……そんな理由で服を着ないとか、本当に変わった子だな。
仕方ない。あんまり命令とかしたくないけど。
「レン。これは主としての命令だ。ちゃんと、下着と服を着用すること。というか、僕のことを思ってくれてるなら、むしろ着てほしい」
裸の女の子と一緒なんて、どんな噂がたつか……。それを聞いたレンは頭を深く下げる。
「申し訳ありませんでした! さっそく主様にご迷惑をおかけするとは!! このレン! 今すぐ服を調達して参ります!!」
などと言って、裸のまま部屋を飛び出そうとするので、僕は後ろからがっちりとレンを拘束する。
「待った。服なら、ミィヤのがあるからそれを着てくれ。ミィヤのことは……僕のことを知ってたからわかるよね?」
「は、はい! 主様を信頼するご友人だと認識しております!」
「よろしい。じゃあ、ミィヤ。さっそくで悪いんだけど、レンに下着と服を貸してやってくれないかな?」
このままだと、完全に変態と見なされて捕まってしまう。
「わ、わかりました! あのレン、ちゃん? 私についてきてください」
「わかりました、ミィヤ様。では、主様。しばしの別れですが、すぐに舞い戻りますゆえ!」
そんな大袈裟な。
なんだかんだ遭ったけど、騒がしい朝はまだまだ続きそうだ。一人になった僕は、そう簡単に疲れないはずなのに、ベッドに倒れる。
……大丈夫かな? これから。
「わー! わー! レンちゃんの尻尾、思っていた以上にもふもふです!」
「お、お止めください……! この身は、全て主様のもの! さすがのご友人でもーーーふあっ!?」
まあ、もふもふできるからいいかな?




