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第十二話 騒動の終わり

 特異体である《クリスタルスライム》へと飛びかかった僕は、まず試しとばかりにスキルを発動する。


「〈ライトニングスラッシュ〉!」


 雷を纏った刃で《クリスタルスライム》を縦に切り裂く。

 スライム系は、核を壊せば倒すことができる。

 大体は、外から見えるのだが、《クリスタルスライム》の核はどうしてか見えない。

 これだけ透明な体をしているのになぜ?


「やった!」


 硬い体だと知っていたミィヤは、真っ二つになった《クリスタルスライム》を見て素直に喜ぶ。

 が、そんなに甘くはなかった。

 核を壊せなかったからなのか、すぐに体がくっついてしまう。そして、そのまま攻撃へと移る。


 にょきっとクリスタルが何個か生えたと思えば、僕へと向けて飛ばしてくる。

 僕の体ぐらいある物体だ。

 僕は大丈夫だろうけど、ミィヤやガルマに当たったら大変なことになる。それはガルマの怪我を見れば明白だ。


「さて、どうやって倒そうかな……」


 飛ばしてくるクリスタルをミィヤ達に当たらないように砕きながら、僕は思考する。

 これまでも魔物のようにただ切ったりするだけじゃだめだ。核を確実に破壊できる攻撃じゃないと……。


「だったら」


 飛ばしてくるクリスタルのひとつを砕かず、そのまま《クリスタルスライム》へと蹴り飛ばし、僕は跳躍する。

 一瞬にして真上を取ったことで、相手は僕の姿を見失ったようだ。

 そのため視界に入るミィヤ達を狙う前に、僕はスキルを発動する。


 雷を球体になるように収束させ、それを対象目掛けて、ぶん投げる。


「〈雷鳴の鉄槌〉!!」


 《クリスタルスライム》の巨体をも軽く包み込むほどの雷の球体だ。

 それはまさしく神の怒りを表現したかのような威圧感。

 バチバチと弾ける雷は、まるで生きているかようだ。


「うひゃあっ!?」


 ガルマの治療を終え、巻き込まれないように離れて見ていたミィヤが衝撃波で吹き飛ばされそうになっていた。どうにか近くの木にしがみついて、堪えているようだけど……やり過ぎたかな?


 一応、このスキルは雷属の中でも上級に近い中級のスキルだ。

 僕もさすがに、上級はやり過ぎだと思って中級にしたんだけど。


「……さすが特異体。あれを食らっても生きているとは」


 軽いクレーターができ、周囲の草木も吹き飛ぶほどの威力だったのにも関わらず、《クリスタルスライム》は生きていた。

 外皮が硬かったためか、ギリギリのところで核は全壊しなかったらしい。今にも核を中心に集まろうとしている。


「これで終わり、だね」


 集まる前に僕は核へとトドメを刺した。

 あっ、ナイフから短剣へと変わってる。もしかして、興奮してたのかな? まあ仕方ないことだ。

 冒険者なんだから、見たことのないものを前にしたら興奮しないわけがない。


「お? ちゃんと魔石も出てきたな。それに……へぇ、吹き飛んだクリスタルが消えてない。これも特異体の性質、なのかな?」


 本来なら、魔物は倒されると体がマナとなって消滅し、魔石と素材だけが残る。

 けど、今回は吹き飛んだ体が地面に突き刺さったままだ。

 これほどのクリスタルだ。アクセサリー店なんかに売ったらいい値段で売れるじゃないか? それに強度も申し分ない。

 武器や防具なんかにも使えるはずだ。


「ら、ライカさーん? 終わりましたかぁ?」


 先程の強過ぎる衝撃で怖くなったのか、茂みからひょこっと頭を半分だけ出して様子を伺っているミィヤ。

 もう大丈夫だよと、優しく教えると口を開けたまま近づいてくる。


「こ、これライカさんが、やったんですよね?」

「うん、まあ……相手が相手なだけにちょっと強めのスキルを使ったんだけど」


 周囲の状況とミィヤの反応を見ればわかる。これはやり過ぎたと。


「ずっと接近タイプだと思っていましたけど、遠距離系も凄いんですね! 改めて感激しました!!」

「あはは、ありがとうミィヤ」


 そんなこんなで、色々あったけど、騒動はこれで終わりだ。この後、周囲を調べた結果。僕が倒した《クリスタルスライム》が原因で、他の《スライム達》が森に大量発生したようだ。


 《クリスタルスライム》が、我が物顔で森へと進行する度に、《スライム》達が逃げる。

 同じ《スライム》でも、個体が違うと驚異になることもあるということか……それに加えて、今回はガルマ達という冒険者達の襲撃もあってより一層大変だった。当然ガルマ達は、拘束してからハーバの警備兵に引き渡した。


 これで、もう襲われないことはない…と思いたいけど、無理があるかもね。

 ガルマみたいに、あの三人に執着している者達は多い。もしかしたら、その人達がガルマのように襲ってくる可能性がある。

 それにしても、まさか今回の襲撃はガルマが計画したことだったなんて。てっきりあの三人が命令でもしていたんだと思っていたけど。


 そうそう。《クリスタルスライム》が残したクリスタルは、一部だけ回収して、それ以外はどこかへ売ろうと思っている。

 純度の高いマナが凝縮されたクリスタルだ。

 色んなところで高く売れるだろう。



・・・・・



「へー、ガルマ捕まっちゃったんだー。まあ、当然だと思うけど」


 カトレアは、実家の自室でいつもの二人を招き入れ、菓子を食べながら、最近の出来事を軽い気持ちで話し合っていた。

 実家ということもあり、いつもの武器や防具などは一切装備しておらず、胸元や脇などがこれでもかというほど見えるようなラフな格好だ。


「いつかやるとは思っていたけど、本当にマリアンのためにやらかしちゃうなんてね」


 当然、遊びに来ていたユーラやマリアンも同じく私服に身を包み、完全なるお休みモードだ。

 

「罪な女だよね、マリアンって」

「そう言われましても、あの人が一方的に好意を寄せてきていたたけで、私はずっとお断りしていたのですが」

 

 本当にうんざりしていたのだと言わんばかりに、深いため息を漏らし、紅茶で心を落ち着かせるマリアン。

 そんなマリアンを見て、ベッドに寝転がっていたカトレアが、こんなことを話し出す。


「ところでさ、暴走したガルマって、あのフードを狙ってたんだよね?」

「はい。そう聞いていますが」

「どこで聞いたんだか……でもまあ、これでストーカー一人が消えたから良いじゃない」


 と、ユーラが蜜菓子を噛りながら微笑む。三人の中でも、特にマリアンを好きになった者達は過度なストーカー行為が多かった。

 その中でも、筆頭と言えるのが今回捕まったガルマだったのだ。


「そうですね。でも、困りました。今回のがきっかけでまた騒動が起きないか……もし起こったとすれば私にも被害が及ぶ可能性が……はあ」

「色々聞かれちゃうからねぇ。そんな時間があったら、私はショッピングがしたいよ」

「あたしも同意。これ以上問題が起きたらあたし達が騒ぎを起こしているみたいになっちゃうから嫌なのよね……」

「可愛いって罪だよねー」


 その後も会話に花を咲かせた三人は、二時間後に服屋へとショッピングに出掛けるのであった。

この話で一旦一区切り。

次章からは、ちゃんとざまぁ要素が出てる予定です。少々お待ちを……。

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