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53話 規格外の挑戦者と迎え撃つもの

風邪ひいてました。最近の風邪薬は症状別に処方が違うようです。

喉鼻に効くの飲んだらすごくよかったのです。

 凝縮した魔力はレーザーのように虚空を斬り裂いた。石でできた床には傷一つついていない。かといってあの威力を生身で受ける気はしなかった。

「にゃにゅにょにゅ……光鱗よ! 我が盾となり給え!」

 ナージャが魔法盾を作り出す。というか、エイルに高速詠唱を教わっていたのか……。あの子は自力で習得してたからなあ。天才か。


「魔槍よ!」

 ニーズヘッグの言霊が魔力の槍を作り出し。ゴーレムに降り注ぐ。岩の身体は砕け、崩れていった。


「ふう……脅かしよって」

 と軽口を叩いたニーズヘッグにチコが鋭く声をかける。

「まだ、まだ終わってない!」

 その一言に反応して飛びのくと、砕けた砂礫が再び形を成し、その拳を振り下ろした。

 ズズンと腹に響くような音を立てる。一瞬輝くとゴーレムは元の形を取り戻していた。


「ぱぱ、なんかね、光り方が違う石があったの」

 エイルはあの一瞬でゴーレムのコアを見抜いたらしい。

「ナージャ、探知できる?」

「んー、ちょっと時間がほしいかも。というか、エイル……」

「魔力の感知とか操作に関しては天才ってレベルですらないな」

 などと半ばあきれつつ娘を見ると、にぱっと笑っている。

「んー、んじゃ、やるかー」


 足に魔力を送り加速。すれ違いざまに唐竹割りにする。

 すぐにくっついた。袈裟懸けに両断。再びくっつく。

「コアをつぶさんと無理か……」

「ぬうううううううううん!」

 そこにニーズヘッグが割り込んで魔力弾を連射する。というか、俺を巻き込んでも気にしないくらいばらまきやがった。

 目線でそのことをとがめると、「婿殿の守りを貫くほどの攻撃なぞ我にはとてもとても」とごまかしやがった。

 さて、粉々に砕け散ったゴーレムだが、再びその姿を取り戻しつつ……は無かった。エイルが小石のようなものを手にしており、小石周辺に魔法結界を張っていた。

「エイル……?」

「なんかね、キラキラしてたからもらったの」

 ナージャが呆れたような表情をしている。

「なるほどねー。制御用のコアとは別に魔力供給用の魔石があったのねー」

「んふー!」

 大好きなママに褒められてエイルはご機嫌である。

「お義父さん。やっておしまいなさい!」

 どっかの悪役みたいな口調で依頼すると、「さーいえっさー!」と謎の掛け声で再び雨アラレと魔力弾が降り注ぐ。

 徐々にその体を小さくさせて行き、最後に魔力を失った制御コアだけが地面にカチンと音を立てて転がった。


「えーっと……うん、普通あのゴーレムの守りを突き抜くような攻撃、人間には無理ですからねー?」

 チコさんが半ば無表情に告げる。初見殺しどころかデストラップだろう。

「たぶん、ある程度の魔法使いなら、最初の階段の仕掛けには気づくんでしょうね。で、ゴーレムにかなわないことを知って戻ってきて、退路を断たれていることを知る、と」

「えげつないな」

「しかしあれだ。あのゴーレムの最初の攻撃以外は動きも鈍い。避けていけんこともなかったんじゃないか?」

「そうかもしれませんねえ」

 ニーズヘッグのセリフにチコさんが応える。この先に何があるのかはわからないけど、先に進めば何らかの希望があると思えば、それも選択肢の一つになりうるだろう。


 迷路は多少のトラップはあったがチコさんのおかげで問題なく進むことができた。

「えーっと、一応言っておきますと、わたくし人類でも最高峰のスカウトですからね?」

 ちょっとした腕利きクラスなら何度も死んでいると言外に告げてくる。

「そうだね、おかげで助かってるよ。ありがとう」

 多少のトラップなら、防御状態で突っ込めば踏みつぶせるが、それは敢えて言わないのが華というものか。いざって時に魔力が減ってて負けましたはあり得ないしね。


 そうこうしているうちに、何度か階層を降りた。階段の前にはいろんなボスがいたが、ある意味最初のゴーレムほど厄介な奴はいなかった。

「ええ、ええ、あのクラスのモンスターを一撃で消滅させるとか何事ですか……」

 チコさんの眼がうつろだ。対人ではなく、対軍クラスのモンスターであるリッチとの戦いを思い出しているのだろう。


「出でよ、我が不死なる軍団よ!」

 いきなり現れたローブを着こんだスケルトンは、杖をかざしてそう宣言した。

 すると、霊体であるスピリットや、ゾンビ、スケルトンの群れがぶわっと湧き出すように現れる。

「って、あれリッチじゃないですか!?」

「……えい!」

 ナージャが世界樹の杖から魔法を放つと、リッチ配下のアンデッドたちが一撃で薙ぎ払われた。

「……ゑ?」

 チコさんの呆然とした声が広間にむなしく響いた。


 骸骨の眼窩に灯っていた赤い光が一瞬揺らぐ。呼び出した眷属のダメージは本体にもキックバックされるそうだ。ニーズヘッグの魔力弾はリッチの結界に阻まれたが、それでも結界ごと吹き飛ばして壁に叩きつけられる。

「エイル、あのお爺さんに回復魔法かけてあげて」

「あーい! うにゅるるるるるる、りかばー!」

 リカバーは状態異常を回復する魔法の万能バージョンだ。毒、麻痺、混乱などメジャーな状態異常はよく知られているし、対応するポーションもある。

 いわゆる万能薬であるリカバーの魔法で、アンデッド化の魔法が解除された。

「GYARARARAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 リッチは断末魔だけを残して、塵と消えた。リッチがいた壁際には小さな光の玉が浮かび、天井に吸い込まれるようにして消えていったのだった。


 階段を降りると、そこは市街地だった。岩壁ではなく、整然とした市街地が見える。ただ、路地などは全て建物で埋まっており、交差点が見て取れる。建物の扉も開くことも破壊することもできなかった。

「誰か……もしくは何かの棲家ですねえ。イヤーな気配がします」

「気を付けて進みましょうか」

「そうね。念のため防御結界張りなおすね」

 ナージャが呪文を唱えだすと、どこからともなく槍が飛んでくる。その槍は防御結界を霧散させ、術者であるナージャに襲い掛かった。

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