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6話 魔物の軍団

 村はざわめいていた。ひとまず広場にみんなが集まってくる。


「僕が様子を見てくる! 誰か一緒に来てくれないか?」

 

 マークの呼びかけに、村人は顔を見合わせるだけだ。冒険者が瀕死になってたどり着いたという事実はそれほどに重くのしかかっていたのだ。

 だから、と言うわけではないけど、思わず俺は手を挙げていた。

「アレク、ありがとう」

「いいさ。それに死ぬ気はない」

「そう、だな。新婚さんを死なせたら僕がナージャに恨まれる」

「後釜に座ろうなんて思ってないだろうな?」

「ないない。それにナージャが絶対にうんって言わないから!」

 ふと気づくとナージャは真っ赤になって俺を見ていた。とりあえず表情をキリッと引き締めて頷いておく。

 そのやり取りに、村人の間からも少し笑いが漏れた。


 最終的に、自警団から3人が手を挙げてくれた。カシムを先頭に駆け込んできた冒険者の来た方向、南の街道を走る。

 北から吹き下ろす風は俺たちの背中を押してくれている。ただし、風上と言うことは鼻の利く魔物がいた場合不利に働く。

 無言で歩を進めるが、やはり不安の感情が大きい。言葉がないのも、口を開けば弱音を吐きかねないと思っているからだ。

 そしてしばらく進むとわずかに声が聞こえてきた。カシムが手を横に伸ばし止まれと合図する。そして街道の脇に身を隠した。


「いったん隠れよう。俺は先を見てくる。いざってなったら合図を送るから、頼む」

 マークも無言でその指示に従い、身を隠す。カシムは敢えて草の生い茂る街道脇を進んでいく。実に器用に、平地を歩くかのような足取りで、偵察に向かった。


確かに視界が開けている分見つかりやすい。オオカミなどの場合、こちらが先に見つかることで包囲されたりする場合がある。

 カシムほどの速度は出ないが俺たちも彼の後を追うように歩を進める。そして、しばらく進むと、剣戟と雄たけび、そして悲鳴が聞こえてきた。


 舌打ちのような音が聞こえ、ふと上を見ると、カシムが木の上から弓を構えている。彼の目線の先を追いかけると冒険者の小隊がゴブリンやオークと戦いを繰り広げていた。

 円陣を組み、真ん中に後衛職や、負傷者をかばっているようだ。魔物たちはその円陣を取り囲むように攻め立てている。

 そして、円陣の中央にいる見慣れた顔を見て俺の頭に血が上った。


 カシムが矢を放つと同時に俺も剣を構えて走り出す。背後からマークが呪文を唱える声が聞こえていた。

 

 無我夢中で剣を振るい、ゴブリンを切り倒す。カシムの正確無比な狙撃で、すでに数体のゴブリンが頭に矢を受けて倒れていた。

 さらに、自警団のメンバーのグレイが槍を振り回してオークと渡り合う。両手持ちの斧を振り回し、雄たけびを上げるガレス。

 そして俺は喉も張り裂けろとばかりに大声をあげた。

「ゴンザレスさん!」

 そして彼の目がこちらを向いた瞬間驚愕に染まった。

 それはそうだろう。俺は冒険者時代、モンスターと切り結ぶことなんてほとんどなかった。いつも後方支援に徹し、弓を放つだけだった。

 けど、今、俺はゴブリンにためらいなく刃を振り下ろし、斬り捨てている。そんな姿に驚いたのだろうか。


「援軍だ! てめえら気合い入れろ!」

 ゴンザレスさんの雄たけびに周囲の冒険者たちが歓声で応える。

 こちらに戦力を集めて一気に囲いを突破しようとしていた。


 俺は夢中で剣を振るう。火事場のバカ力と言うやつか。全く恐怖を覚えることもなくゴブリンたちを倒してゆく。

「今だ、全員続け!」

 剣を持った比較的身軽な冒険者が外から攻撃を受けて手薄な方角に向けて斬り込む。その両脇に弓や魔法が打ち込まれ、包囲を分断することに成功した。

 そして追撃に来ようとする魔物の群れに対して、マークが大技を叩き込んだ。

「逆巻け風の刃よ! 螺旋の理、暴風となりて敵を切り裂け! サイクロン!」

 

 つむじ風が巻き起こり、それに触れたものは容赦なく両断される。1日1回しか使えないマークの切り札の魔法だ。

 

「GURURAAAAAAAAAAAAAAN!」

 必死で走る背後から大きな声が聞こえた。それはただ聞いているだけの俺ですら怖気を振るうような、全てを支配するような声。

 その声をきっかけに魔物の追撃は止んだ。


「キング種が現れたか……」

 いつの間にか俺の隣を走っていたゴンザレスさんがぽつりと言った。

「ゴンザレスさん……」

「話は後だ。負傷者もいるからな。すまんが村への案内、よろしく頼むぜ」

「はい!」


 こうして、ゴンザレスさん率いる冒険者パーティは無事とはいいがたいが村にたどり着くことに成功した。

 しかしそれは、モンスターの軍勢との戦いの始まりを告げることを意味していたのだ。


 回復魔法とポーションなどで態勢を立て直す。先日狩った猪も解体され、焼き肉になって冒険者たちの腹を満たした。

 

「GYAOOOOOOONN!!」

 再びキング種と思われる亜人の叫び声が上がる。

 同時にゴブリン、オークなどの亜人種のモンスターが村を包囲し始めた。

 弓を扱えるものは柵の後ろから矢を射かけて敵を倒す。しかし当たり所が悪ければ足を止めることもできずに柵に取りつかれる。

 槍や斧を振るって柵ごしに魔物を倒す。冒険者たちもここを破られたら後がない。悲壮な表情を浮かべながらも、次々とゴブリンたちを倒していく。


 俺は櫓から矢を放っていた。カシムほどの腕はないが、それでも弓の腕は自警団の中でも上の方である。

 そして高いところから見ているだけに敵の動きがよくわかる。そう、気づいてしまった。亜人種の中にひときわ大型の魔物がいることに。


「トロールがいるぞー!」

 その言葉は味方に動揺を生んだ。それでもいきなり現れて柵を破られでもしたらその場で総崩れになるだろう。

 であるならば出現を知ってもらった方がいい。そう思った。

 魔物の群れは南側からきていた。と言うことであれば、北に行けばまだ逃げられる、そう思っても仕方がない。

 そう考えた一部の冒険者は更なる絶望に出会うことになった。

 すでに魔物の群れは北に回り込み、トロールがこちらにも配置されていたのである。

「もう、ダメだ」

 冒険者数名がその知らせを聞いてへたり込んだ。


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