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第19話 早朝の騒ぎ

はっはっは、本日7話目だ!

もうこうなったどこまで行けるか挑戦か!?

 次の日、たまたま朝早く起きていた僕は宿の外を散歩してみたりしていた。今日からリヒテンブルグ王国へ向かうとなれば、この土地ともしばらくお別れである。感慨深いものがあるよ。

「ヒューマ君! ヒューマ君!」

 すると、どこからか僕を呼ぶ声がしてきた。どこかで聞いた声だ。

「こっちだ、ヒューマ君!」

 声のする方角を見てみると、そこには木からぶら下げられたニコルさんと部下たちの姿が……。


「良かった、ヒューマ君! これをほどいてくれないか!?」

「ニ、ニコルさん……どうしたんですか?」

 いや、なんとなく分かるけど。

「いや、レイクサイド特殊諜報部隊にまた負けてね。こうやって吊るされちゃったんだよ」

 だろうね。縄を切って降ろしてあげる。しかし、その後は予想外だった。

「行けっ、お前たち! ここが俺が防ぐ!」

 縄を切られて自由になった瞬間にニコルさんの部下たちが宿に向かった。そしてニコルさんは僕を妨害しようとして立ちふさがる。僕は追いかける気なんて全くないのに。

「恩を仇で返すようで申し訳ない! しかし、フラット領にはタイタニス様が必よ……ごふあぁぁぁ!!」

 そして後ろからワイバーンにむんずっと掴まれて上空へつれさられるニコルさん。後方ではニコルさんの部下たちが同じ目に合っている。

「おのれぇぇぇ!! タイタニスさまぁぁぁぁ!!」

 どっぼーんどっぼーん、という音と共にため池の方で人数分の水柱が立った。あのワイバーンは特殊諜報部隊の人が召喚したんだろうなと思う。僕は何もしていない。

「さあ、朝ごはんの時間かなっ?」

 今日はどんな一日になるんだろうか。



「おはようヒューマ、さっき外で変な音と叫び声がしなかった?」

 宿に戻るとみんなが朝ごはんのために階下に降りてきていた。

「おはようタイタニス、僕は聞いてないなぁ」

 タイタニスは若干眠そうだった。更に眠そうなのがニコラウスである。あれは強制的に起こされた顔だ。

「おはようヒューマ。それより、昨日の夜は町に酔っ払いの二人組が怪鳥ロックを仕留めて肉屋に持って来て、自分たちの分以外は寄付しちゃったんだって。それで町はロックから揚げ祭りで盛り上がってたそうよ。依頼を受けてた冒険者のパーティーは泣いてたけど」

 マリがご飯をもりもり食べながら言う。あ、僕にもご飯入れてよ。

「それで昨日の夜はうるさかったのかよ!」

 ロージーも元気そうだった。

「美味かったですよ。あの依頼受けなくて良かったな」

「あぁ!! 先生! なんで言ってくれなかったんだよ!」

 ロージーがニコラウスに対して抗議する。そしてその音量のせいでニコラウスは頭痛がひどくなるようだった。

「ロージー様も奥方様に似て怪鳥ロック好きですものね」

「似るとか関係ない美味さだろう!? まだ残ってないのか!?」

 朝から怪鳥ロックのから揚げ食べるの? ちょっと重くない?

「さすがにあの騒ぎだったからな……げぷっ。あぁ、食い過ぎに飲みすぎだな」

「先生!?」

 自分を置いて祭りに参加していたニコラウスがロージーに怒られている。

「今日はついにリヒテンブルグ王国へ向かう日だね」

「結局、私のウインドドラゴンで向かう事にしたのよ!」

 ロージーは僕の召喚もあるからという理由で今回はマリのウインドドラゴンに全員が乗る事になった。鞍を装備する魔道具がそっと枕元に置かれていて、マリがへこんだのは仕方ない。


 ***


 世界的ブランド「クロウ」。装備品においてこれに比肩しうるのはこのブランドの筆頭親方であるクロウの師匠がいる「レイクサイド製」くらいのものである。そして、その「クロウ」が作り出す装備品の数々はその性能においても、外観に置いても高い評価を受けている。例えば、初期の頃の装備品であるが最高傑作のひとつとも呼ばれている「邪王の黒籠手」である。かの「勇者」フラン=オーケストラが扱ったそれは、使用者の腕が傷つくという副作用こそあるものの、魔石から絶大な魔力を武器に付与することで相手を焼き殺す最強の籠手である。その副作用を恐れたクロウがこれ以降は威力重視のものを作っていないがために、これを越える籠手は存在しないと言われている。素材に使われたのはティアマトを始めとする高ランクの魔物の素材であり、それを完璧なまでの装備品に昇華させる腕は世界広しと言えども「クロウ」に勝る所はない。


「そして、どうせなら、何か買いに行こうぜ。金が足りなかったら何か依頼を受けよう」

「ロージーさんにしては意外とまともな提案……」

「んだと、タイタニス! お前だって、見てみたいだろ!?」

「えぇ、ですけど首都リヒテンブルグじゃなくて港町ランカスターに行かなければ」

 ランカスターか。でも、そういった旅もよさそうだよね。

「マリはどう? 何か欲しいも……マリ?」

「えへへへ」

 マリが完全にあっちの世界に行っている。やっぱり「クロウ」で欲しい物が沢山あるに違いない。特に義父の籠手の話なんかは有名だもんね。

「私はあんまり、興味ないんだけどなぁ」

 ニコラウスは魔術師だから装備品にはあまりこだわらないんだそうだ。でもその後でタイタニスにデビルモスの黒ローブの話をされたら興味深々になってしまった。そして僕たちの旅の目的地に寄り道が加わることになる。



「おい、ちょっと二日酔いが酷いから先にリヒテンブルグに行ってるぞ? 何? あいつらランカスターに寄るって話してるだと!?」

「おいおい、朝からうるせえよ。頭痛ぇ」

 何故か酒場の近くのごみ置き場で起きる二人。

「ちょっと、黙ってろ。おい、ジーロ。ロージー様もマリーもおそらくウインドドラゴンはかなり早い。逃げられるんじゃないぞ? 分かったな……なに? お前にペリグリンはまだ無理だ」

「あーあ、ジーロ可哀そうに」

「くそっ、昨日お前に付き合ってあんな事するんじゃなかったな」

「楽しんでただろぉ? で、次はどこ行くんだ?」

「ランカスターだと。その後はリヒテンブルグだ」

「……え、マジ?」


「やはりお前もハルキ様から任務受けていたか……」

「あ……ばれた?」

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