第17話 物々交換
本日5話目ぢゃー!
「ロージーがあんな嘘を言うから……」
「仕方ないだろ? だってあの時点でお前が召喚獣でかつて起こった盗難事件の犯人が俺だったなんてばれてみろよ!?」
「まさか、そんな理由で宮廷魔術師である私が巻き込まれるなんて……」
とりあえずレイクサイド領カワベの町の冒険者ギルドに来ている。ワイバーン3頭で移動だ。そして最初は偽名を使って冒険者やろうと思っていた一向だったが、何故か「本名で」と書かれた手紙がエールとともにテーブルに置かれてからは口数も減り気味だ。というよりも依頼を受ける前に全員が酒を飲もうと言って誰も反対しなかったのはどういう事だろうか。まあ、僕も反対しなかったんだけど。
「そんで、どういった理由で君たちは無一文なのかな?」
「先生も大変ですねー」
「危機感が足りんっ!」
「ゴチになりますー」
「くおらぁ!!」
ニコラウスの金で全員がエールを頼み始める最初は遠慮していたマリもとくに遠慮しなくなってきた。追加の料理を頼んでいる。僕も頼もうっと。
「先生、宮廷魔術師って事は高給取りでしょ?」
ピクンとマリが「高給取り」という言葉に反応した。しかし実物を見て「ないわー」って顔をした。確かにないわー。
「天下のレイクサイド領の領主様ほどじゃねえよ!」
「そうだそうだ。領主館もどって金をとってこい」
「お前が言うなっ! タイタニス=フラット次期領主殿!」
「そんな事言ってもうちの護衛隊は全滅してたじゃないですか。まるで生首でしたよ。そしてあの恨みがましい目! 目! フラット領主館に帰ろうという気すら起きないですよ」
ニコルさんたちはおそらく特殊諜報部隊にやられたのだろう。僕らも寝首を掻かれる可能性があるから気をつけないといけない。
「ねえねえ、ヒューマ。これはどういった状況なのかな? 結局私は誰を守ればいいの?」
「とりあえずロージーだけでいいんじゃない?」
「「うぉい!!」」
タイタニスとニコラウスが息のあったツッコミをしてくる。しかし、マリは「レイクサイド」の親衛隊だからあとの二人を守る必要性は全くないよ。
「そんなことより、これからどうすんだよ?」
「ロージー、君のための旅なんだから……。仕方ないなぁ、君が必要なのは「玄武の甲羅の欠片」「朱雀の尾羽」「青竜の逆鱗」「白虎の牙」特大の「火の魔石」だね。つまり、天災級の魔物を4匹と、炎の特大魔石が必要だよ。「青竜」は生きたまま逆鱗を剥がす必要があるんだって。あの炎の魔石の特大のはエルダードラゴンからもらったやつらしいね」
ここまで説明してやるのもめんどくさい気もしたけど、ロージーは理解力が低いから仕方ない。ちゃんと説明しないと後々さらに面倒な事になるんだ。
「ふむふむ」
しかし、こっちの宮廷魔術師はどうなんだろうか。お前は教師だったんだから分かれよって。
「ヒューマ、とりあえずな、簡単に言うと何をすればいい?」
タイタニスは分かってて聞いている。僕に説明係を押し付ける気だな。
「どこにどれがいるかは冒険者ギルドの人に聞けってことだよ」
「「「なるほど!」」」
なるほどじゃないよ、なんだよ、この3人……って、マリもかよ!?
***
「今のところ、天災級の目撃情報はないようだね」
あってたまるか。あったらそれこそ天災だ。みんな大騒ぎだぞ? いっつもレイクサイド領から大量の騎士団が飛んでいくよね。知ってるよね?
「そんじゃエルダードラゴン行きますか」
こっちはリヒテンブルグ王国で目撃情報があるらしい。しかし、基本的にはリヒテンブルグ王国の騎士団が出撃するらしいのと、エルダードラゴン自体が雪原地帯からあまり出てこないから冒険者に依頼が来ることはほとんどないとの事だった。
「まあ、この際依頼じゃなくてもいいからさっさと取りに行こうぜ?」
「ロージー君、そこまでの旅費はどうするんだい?」
「それはニコラウス先生の金で……」
「断る!」
「それに、もう一つ問題があるよね?」
僕の言葉にほぼ全員が「何かあるの?」って顔をする。本当にこいつらはものを考えて生きているのだろうか?
「ロージーはウインドドラゴンの契約してないんだよ? ワイバーン2頭? 3頭でいく?」
「よし、分かった! まずはウインドドラゴンの契約からだ!」
「素材は? 取りに行く? 何がいる?」
冷静なタイタニスの言葉にロージーが固まる。
「えっと、あれの素材は……」
マリが答えそうになる。
「マリ、レイクサイド騎士団の極秘事項じゃないの?」
他の騎士団でウインドドラゴンが契約できているところなんてない。契約素材は最重要極秘事項なはずだった。
「あぶなっ!」
「ちっ」
やはりタイタニス=フラット、気が抜けない。
「でもマリが知ってるって事でしょ? タイタニスにばれないようにたくさん素材を集めて、それから契約してしまえばいいじゃん」
「でも、その中の素材で契約できるってことが分かるだけでもやばくないか?」
ロージーが意外にも冴えた疑問を投げかける。でも、そこは工夫でなんとでもなるよ。
「大丈夫、大丈夫。その変で聞いている人が同程度の価値の素材と交換してくれたりすればいいと思うよ?」
特殊諜報部隊のシェイドがいる方角をみて手を振る。ふっっとすぐに気配は消えたが、あとから「了承」と書かれた布切れが落ちて来た。
「ほら」
「すげえよ、ロージーさん所の諜報部隊……」
たしかに、これはロージーを追って来ていたアレクって人の気配だったから。シウバは副隊長って言ってたもんね。そりゃすごいだろうよ。そして、その人がこれから僕らをずっと見張っているんだろうな……ニコルさんたちも大変だな。
「そしたら逆になんでもいいから依頼を受けてしまおう。高めのランクがいいね、マリがいるから何でも受けれると思う」
こうして僕らはとりあえずカワベの冒険者ギルドでランクの高い依頼を受けることとした。そしてその素材は諜報部隊の人と交換してまずはロージーのウインドドラゴンの契約をするのだ。できればマリにもして欲しい。こそっと、ペリグリンはダメかを聞いた紙を置いておいたらダメって書かれていた。その時は気配もなにも分からなかった。シェイドを使わなかったから僕には分からなかったんだろう。
「めんどくさい! 二手に別れるぞ!」
依頼を受けだして数日したらロージーがこんな事を言い出した。