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第14話 神の怒り

「ロージー様はいいとして、まだラーメンが完成していないというのにヒューマ君を連れ去られるのはダメですね」

 気づいたらシウバが後ろにいた。その手にはなにやら毒々しい色の瓶が……。

「さあ、ロージー様。これを飲んでください」

「なんだよ、その禍々しい液体は!?」

「これは特性のドーピング薬です。普段はもっと飲みやすい物に改良を加えて副作用もでないようにしてるんですけど、これは緊急事態用の効果最優先の……」

 シウバがさらっとひどい事を言っている。ラーメンのためにロージーの体を犠牲にするつもりだ。

「いやだ! そんなの飲まな……げふっ、あっ! ごくごく」

 そして無理矢理飲まされてしまった。シウバも同じ物を飲んでいる。

「マキシマムマジック!!」

 そして魔力上昇の上級補助魔法をかける。ロージーの体からあり得ないほどの魔力が漲ってくるようだった。

「げふっ、なんだ、これ……」

「さあ! あの無粋な連中の召喚獣をことごとく滅するんだ、ヒューマ君!」

 どこから取り出したのか、二本の剣を持ちつつ自分にも補助魔法をかけて行くシウバ。その顔から本気度が伝わってくる。

「し、仕方ねえ。行くぞ! ヒューマ!」

「ああ、僕が究極だ!」



 ***



「やりすぎた」

「うん、やりすぎだな」

「これ、シウバさんが悪いですよね」

「いや、ヒューマ君じゃないかな?」

「いや、どう考えてもヒューマだろう」

 今までではありえない量の魔力があふれてしまったもんだから、つい本気を出してしまった。翼を生やした例の形態である。

 100騎を越えるワイバーンと50体を越えるアイアンゴーレムを5分くらいで強制送還させたもんだから、騎士団の皆さんはドン引きだ。最終的にシルキット将軍のフレイムバーストレインを完封してしまったのがいけなかったらしい。ミセラ嬢の乗ったアイアンゴーレム以外の召喚獣はすでにいない。シウバさんも結構派手にやっていた。途中からシウバさんの正体がばれてたみたいだってけど、ラーメンのためならなんでもするとか叫んでいたな。


「な、なんなのよっ!」

 すでに泣きそうになっているミセラ=レイクサイド。後ろの方では領主館周辺がボロボロになっており、そのショックでオクタビア様が失神寸前になっている。

 次の瞬間、ミセラ嬢の乗っていたアイアンゴーレムが送還された。あれはわざとだろう。そして地面に降り立つミセラ=レイクサイド。さらに前方に召喚されるミスリルゴーレム。

「うぉい! ミセラの奴いつの間にミスリルゴーレムを!?」

 ロージーが驚いてるけど、ミセラ嬢はかなりいっぱいいっぱいの様子だ。対してロージーはあの年だったら余裕でミスリルゴーレムくらい召喚できていただろう。僕がいなければ。

「お兄様! 絶対連れて帰るんだから!」

 ミセラ嬢の召喚したミスリルゴーレムが突進してくる。

「ロージー、どうする? やっちゃってもいいの?」

「いや、どうしようか……」

 半分涙目になってこちらを睨んでくるミセラ=レイクサイド。いや、僕は君のお兄さんに召喚されてる召喚獣だからさ! 恨むんならお兄さんをね!

「さすがに手を抜くとやられちゃう相手だし、仕方ないよね」

 ミスリルゴーレムが拳を振りかぶる。その動きは今の僕には遅いくらいだ。

「よっと」

 拳をなんなく躱し、右の爪でミスリルゴーレムの腹部を切り裂いた。瞬時に強制送還されるミスリルゴーレム。そしてそれを見て泣き出すミセラ嬢。後ろの騎士団員たちもどうすればいいのかが分からないようで、何故かロージーコールが始まっている。

「「「ロージー=レイクサイド! ロージー=レイクサイド! ロージー=レイクサイド!」」」

「さすがは、ミセラ様のお兄様であり、我らの領主様だ!」

「ミセラ様が羨ましい、こんなお兄様がいるなんて!」

 数名がロージーをたたえつつもミセラをフォローする。さきほどまで泣いていたミセラがすこし泣き止んだ。もしかして、ブラコン?


 しかし、ここで薬の効果がなくなったのか魔力が減るのが分かる。

「あ、効果がなくなったか」

「みたいだね。あれ? ところでシウバさんは…………」

 言いながら背筋に凍った感覚が走る。これは殺気か? この究極の召喚獣である僕が死を意識するなんて!

「やばいっ!」

 ロージーが蒼い顔で叫んだ。

「逃げるぞっ! 俺を担いで全速力で行け!」

「えぇっ!?」

 わけも分からずにロージーを担ぐ。そして飛び立とうとした。しかし、生存本能が一瞬それを踏みとどまらせる。そして、踏みとどまらなければそこにいたであろう場所が跡形もなく吹き飛んだ。よく分からん光線で。これはまずい。もし魔力が上がった状態だったとしても耐えきれそうにない攻撃だ。


「てめぇ、うちのみーたん泣かせるとは覚悟はできてんだろうなぁ!?」


 そこにいたのは何故か菜箸を持っている「大召喚士」ハルキ=レイクサイドであり、その人物が肩に乗っているのは天使型最強召喚獣である「ゴッド」であった。こいつ、僕と同じくらいに究極なんだよね……。12枚の羽根を持った5メートルを超える巨人であり、その神々しさはまさに神と言ってもいいくらいである。「羽あるし、神じゃなくて天使じゃないの?」 って聞いてから召喚獣の異世界で声をかけてこなくなったんだよ。貧弱なロージーの想像力が奴に勝てるかと言われると心許なく、さらにさっきの戦闘で魔力がない。というよりも、人のくせに「ゴッド」を召喚できるとか、どういうことだ!? あいつは召喚できない残念召喚獣じゃなかったのかよ!


「「「ハルキ=レイクサイド!! ハルキ=レイクサイド!! ハルキ=レイクサイド!!」」」

 騎士団員の皆さまは手のひらを返してハルキコールに夢中だ。そしてシウバいないんだけど?


「えぇい! クソ親父め! いけえヒューマ!」

 ロージーの残りの魔力が僕に注がれる。


 そして、その後の記憶がないままに僕は召喚獣の異世界の送り返された。シウバ許さん。


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