過去回想編 3日目②
「作戦開始時刻は遅くなっちゃったけど、作戦変更はなし、いいわね?」
「はい」
学校へ向かうパトカーの中、作戦についてアリサさんと軽い会議をした。
(絶対に許さないからな・・・・・・覚悟しろ深遊)
パトカーが学校へ着くと、自分達の付近にいたパトカーからは、大樹達三人、他のパトカーの中からは次々と武装した警官出てくる。
自分がパトカーから降りると、ふと見られている感覚がし、学校の屋上を見る。
そこには手を振っている深遊の姿が見えた。
(あいつ・・・・・・!)
「よし、それではまずシールドをもった警官が先頭に――」
アリサさんが説明をしている横を突っ切り、全速力で走りだす。
「「「光!」」」
アリサさんや大樹達の声が聞こえたが、自分は振り返ることもなく無視する。
そのまま学校の玄関を正面から入る。
学校の下駄箱がある玄関には、見える範囲で指輪持ちと思われる三人の男女がおり、こちらの侵入に気づいたようだ。
「な!? そこのお前止まれ!!」
自分は彼らを無視し、階段で屋上へ向かう。
「ま! 待て!」
彼らが追いかけてくる。しかし、
「は・・・・・・・早い」
「ここからは上に任せよう、これ以上人を入れるわけにはいかない」
「・・・・・・そうだな」
その三人は途中まで追いかけてきていたが、指輪の性能の差なのか、まったく追いつかれる心配もなく自分は屋上に繋がる最上階へと登って行った。
廊下には誰もいない、不気味なほど静かだ。
しかし、屋上へのドアがある最後の階段に近づくと、指輪持ちと思われる二人の男子、さらに奥のドアに立っている一人の女子がいた。
(あのドアの先に深遊が・・・・・・!)
そう感じた瞬間、また強い怒りが湧き上がってきた。
屋上のドアへ向かって階段に駆け上がる。
自分の存在に気づいた二人の男子がこちらに向かってくる。
「なんだお前!? 止まれ! 悪いけどこの先は誰も通すなって言われてんだよ!」
向かってきた一人が階段の途中から飛び掛かってきた。
「どけ!」
自分はメリケンサックのようなナックルダスターを生成し、飛び掛かってくる顔へ思いっきり拳を打ち込み、階段から叩き落す。
「うっそだろ・・・・・・」
「邪魔だ!」
次いでその後ろから駆け下りてくる男子の太ももに向かって生成したナイフを投げつける。
「がぁっ!」
ナイフが命中したその男子は出血している太ももを抑えながら階段を転がり落ちてゆく。
自分は背後を見ることなく、屋上のドアにいる女子の目の前まで迫っていき、若干血のついた拳を振り上げる。
「ヒィィ! 殴らないで殴らないで殴らないでごめんなさいごめんなさいいいいいいいい」
さきほどの戦闘を一部始終見ていたドアの前にいる女子が悲鳴をあげながらしゃがみ込み、そのまま階段を顔から降りて行った。
自分は気にせず構えた拳をドアに向かって放ち、鍵のかかった屋上のドアを破壊した。
「もうちょっとさぁ、まともに入れないの?」
深遊だ。
彼女を視界に捉えた瞬間凄まじい怒りがこみ上げ、拳を振り上げて飛び掛かる。
「おっと、せっかちだなぁ、ちょっと話くらいしようよ」
そう言って深遊は消える。
「"お母さんはどうだった?"」
「!?」
背後に現れた深遊に気づき、ナイフを投げる。
「"その様子だとダメみたいだったんだね"」
ナイフを避けた深遊が、真横に現れ囁く。
「ふざけやがって!」
「"残念だったね、親孝行はしっかりできたのかな?"」
自分を煽るように攻撃をしては、消え、死角から現れては嫌味を囁いてくる。
さきほどから体がどんどん重くなっているのを感じる。
下手をすると意識を失ってしまうのではないかと思うほどに。
「うーんと、そろそろかな? それじゃぁ――」
「光! そいつの言葉を聞くんじゃねえええ!」
屋上のドアのあったところから大樹が叫んだ。
「大樹! なんでここに!?」
「ッチ、あと少しだったのに」
大樹がこちらへ近づいてくる。
「馬鹿やろう! お前を追いかけに来たに決まってんだろ!」
自分は大樹に思いっきり殴られる。
「ってぇ! なにすんだよ!?」
「これはアリサさんの分だ!」
大樹はそう言い放ち、深遊の方を見る。
「あと深遊・・・・・・じゃないな、悪魔! お前のことはすでに聞いている、俺らに"言葉の矢"はもう通じると思うな!」
「悪魔? 言葉の矢? いったいなんの――」
「俺が説明する前にお前が先に突っ走ったからだろ! 親父が教えてくれたよ!」
どうやら大樹の親父さんは深遊と面識があったらしい。
その時に深遊の能力を知る機会があったようだ。
「洗脳の根底にあったのが言葉の矢だ、矢が突き刺さるとそこからやつの魔力が入り込んで、俺らの魔力は下手すりゃ壊死する」
「な!?」
言葉が攻撃手段なんて・・・・・・それは気づかなかった。
「素晴らしい! 私の能力を解明したご褒美に教えてあげましょう、演技をするのも疲れましたしね。」
「演技? お前は洗脳されていたのではないのか・・・・・・?」
「洗脳? はて、いったい何のことでしょう? あぁ、申し遅れました、私はソロモンの72柱の1柱、レラジェと申します。」
深遊・・・・・・ではなく、レラジェは貴族のような礼を見せる。
「私はこの世界の言語という弓を持ち、この体に召喚されました、あの方はこの世界の再誕を望んでいます」
彼女、いや彼・・・・・・だろうか、何を言っているのかまったく理解できなかった。
「やつの話を聞くな! 矢が飛んでくるぞ!」
「おっと! そうだった!」
「心外ですね、せっかく話してあげているというのに・・・・・・」
レラジェはひどく顔を歪ませている
「わかりました、聞く気がないというのならあなた達にはここでお別れさせていただきます。」
そう言って、レラジェは姿を眩ませた
また同じ戦法がくると感じ、自分は身構える
すると大樹が突然、
「光! 後ろだ! 後ろにナイフを投げろ!」
「え? あ、あぁ!」
大樹に言われ、とっさにナイフを投げる。
すると、背後からナイフの刺さったレラジェが膝をつきながら現れた。
「うっ・・・・・・グフッ、なぜだ、お前は私が見えるのか!?」
「あぁ! 見えるさ、お前の水色の魔力が移動するのがな!」
「ック・・・・・・しかもこれは退魔の"銀"、なるほど・・・・・・あなた方がベレトを退けたのも納得です」
レラジェは刺さったナイフを抜き、投げ捨てる。
何か引っかかるようなこと言っていた気がするが、矢を恐れ無視する。
「これは誤算でした、いいでしょう、ここは一旦退いてあげます。 この屈辱、忘れませんよ・・・・・・覚えていなさい!」
レラジェはいかにも小物というセリフを吐き、姿を消した。
大樹が言うには、別の校舎-理事長室のある校舎-の方へ向かっていったという。
「今すぐに向かうぞ!」
「それはアリサさん達と合流してからだ、いいな?」
「・・・・・・はい」
大樹にたしなめられる。
絶対に怒られるだろうなぁと思いつつ、他のメンバーとの合流を目指す。
満足はしていないが、仇に一矢報いてやったということで自分は少し落ち着きを取り戻していた。
屋上から降りるとき、自分の真っ赤だった指輪は赤紫色に落ち着いていた。
東條 光 :カラーコード:#ff00ff
マゼンタ "銀色"
R:255 G:0 B:255
才能<魔力具現化>
伊延 大樹:カラーコード:#ffff00
イエロー "蛍光色"
R:255 G:255 B:0
才能<魔力探知>
澄川 拓海:カラーコード:#191970
スチールブルー
R:70 G:130 B:180
鷺森 千里:カラーコード:#9acd32
イエローグリーン
R:154 G:205 B:50
レラジェ :カラーコード:#00ffff
シアン
R:0 G:255 B:255
才能<転移魔術>