過去回想編 3日目①
光!光!
ん?なんだか声が聞こえるな・・・・・・
「起きろ光!」
「ん?大樹・・・・・・? どうしたんだ?」
「いいから早くこい!」
いつもの起床時間より早く起こされた自分は、大樹に外へ連れてかれる。
外では何台ものパトカーがサイレンを鳴らしている。
「あれ、もう出発するの? 時間にはまだなってないと思うんだけど・・・・・・?」
そんなことを言っていると、アリサさんが一台のパトカーの中から出てきた
「光くん! お、落ち着いて聞いてね、実は――」
自分はアリサさんの言葉を少し聞いただけですぐにパトカーを出すようにお願いをした。
信じられないことに、今自分の家が火事になっているとのことだった。
詳しい話はパトカーの中で聞くことにした。
「一応光くんの携帯に電話したんだけど反応がなくて・・・・・・」
携帯を確認すると何件もの着信があった。
申し訳ないことしたと自分は反省する。
着信した時間を見るに、アリサさんが火事に気付いたのは30分くらい前なのだろう。
それと見慣れないアドレスからメールが届いていた。
嫌な予感しかしない、心臓の音がバクバクと聞こえてくる。
自分は意を決してメールを開く。
<結局学校には来てくれませんでしたね、まぁいいですが。
警察の方に行っているとあなたの母親から聞きました
そっち側についてしまったのですね、とても残念です。
あ、そういえば今お母さん、大丈夫ですかね?>
無音になった。
最後の一行で世界が止まったような気さえした。
さっきから手の震えが止まらない。
携帯から目が離せない・・・・・・、差出人不明だが、検討はついている、というかもうそいつしかいない。
「光くん・・・・・・? 大丈夫? 汗すごいけど・・・・・・」
ハッ! っと我に返る
「あ、アリサさん・・・・・・いえ、だ、大丈夫です、それよりもっと速度出せませんか?」
「焦る気持ちはわかるけど、これでも限界なの、ごめんなさい」
外の風景を見ればわかるが、このパトカーは十分異常なスピードが出ている。
今の自分には焦る気持ちを抑え、祈ることしかできない。
(頼む・・・・・・無事でいてくれ母さん)
パトカーが家のある区画に近づいてくると、どこからか、煙がでているのが見える。
それが家のある方向であるのは間違いない。
自分は動揺が隠せないでいた。
「大丈夫? 光くん、すごく顔色が悪いわよ?」
「だ、大丈夫です・・・・・・その、心配で」
「そう・・・・・・、でもここで焦っていても仕方ないわ」
わかってる
「救助も向かっているはずよ、あ、もうすぐ着くわ光くん!」
わかってる!!
「不安なのはわかるけど少し落ち着きなさい」
「・・・・・・すいません」
必死に落ち着かせてくれようとするアリサさんを見て、自分は少しだけ落ち着きを取り戻す。
さきほどまで気が気ではなかった。
あのメールを見て、実際に火事になっている家を見て平常心である方が難しいと言える。
指輪の核を見ると、すごい勢いで色が変化していた。
(感情によって色が変化するんだもんな、この指輪・・・・・・)
指輪を見て、まだ自分が平常心でないことが確認できた。
パトカーが家の付近にまでくると、ひとだかりができていた。
火は2階から出ているようで、まだあまり広がってはいなかった。
あまりのひとだかりに車でこれ以上近づくことができない。
その様子をアリサさんが見ている隙に
「ありがとうございました!」
「あ、ちょっと! 光くん!」
自分は勢いよくドアをあけ、家に向かう。
ひとだかりを押しのけ、玄関付近までくると、近所のおばさんが
「あ、光ちゃん! 無事だったのねぇ、よかったわぁ でも今朝はお母さんみなかったわねぇ、まだ――」
「こら! 君! ちょっと待ちなさい!」
(母さん!!!)
おばさんの話を最後まで聞かず、人だかりを抑えていた警官を無視し、玄関のドアを開けようとする。
すると、自分がドアを開ける前に、ドアが開かれ、救助隊員と思われる人たちが煙の中から出てきた。
「!?」
先頭を歩いていた救助隊員が母を担いでいた。
救助隊員は、救急車に向かっていったので、自分もそれについていく。
救急車に乗せられた母はひどい火傷をしているのが見えた。
救急車が発車すると、すぐさま自分は救助隊員に声をかけた。
「母は!? 母は無事なんですか!?」
救助隊員から返事はない。
「え・・・・・・」
救助隊員全員がうつむいている。
「無事・・・・・・なんですよね・・・・・・?」
運んでいた先頭の救助隊員が首を横にふる。
「は・・・・・・」
「彼女が眠っていた部屋だが、自分が駆け付けたときには煙が充満していた、周りへの引火を見るに火災はあの部屋から起きたのだろう、
すでに彼女に意識はなく、呼吸が感じられなかった・・・・・・あの様子ではもう・・・・・・」
うそだ・・・、だって、まだ、俺は、なにも・・・・・・
両目から涙があふれ出してくる。
「息子さんですね・・・・・・? 彼女を見つけたとき、大事そうにこれを抱えてました。」
そう言って救助隊員から分厚いファイルを渡される。
アルバムだ。
このアルバムは自分が生まれたときから使われているもので、父が失踪してからも使い続けている。
今では自分と母だけだが、家族が二人になってから写真をとることが多くなったような気がする。
今ではそのアルバムはとても重く感じた。
渡されたアルバムには何かを挟んでおり、開くと、一面に家族三人の写真が貼られたページに母の携帯電話が開いた状態で入っていた。
自分の父は自分が物心のつく時にはもういなかった、父が失踪したことについては母は何も話してはくれなかったため、自分も聞かないようにしていた。
自分は、母の携帯電話を手に取ると、携帯の画面が光る。
そこには自分宛のメール作成画面で
「ごめんね」
と一言だけ書かれていた。
悲しい思いがこみ上げてきてそれまでこらえてきた涙のダムがいっぺんに崩壊した。
自分は泣いた、周りの目を気にせず大声で泣き続けた。
「大丈夫・・・・・・? まさかこんなことになるなんて・・・・・・」
涙も止まり、落ち着いてきたところでアリサさんが話しかけてきた。
「今日の作戦は辞退してもいいのよ?」
「・・・・・・いえ、辞退はしたくはありません、やらせてください」
後半の言葉には深く感情がこもっていた。
「そう・・・・・・、わかったわ。 こんなこと言うのも野暮だけど、私があなたのお母さんを見たとき、体に魔力の干渉があった形跡があったわ・・・・・・恐らくあれは」
「洗脳ですね・・・・・・わかってます。 心配性の母が部屋に火事になる原因なんてものは置きません」
救助隊員が火事の出所は母の部屋と言っていたため、間違いないだろう。
「洗脳をかけたのはおそらく深遊、メールで煽ることまでしてることを考えるとあいつしかいない」
沸々と黒い感情が湧き上がっていき、自分の中で怒りの炎が燃え上がる。
その時、指輪は真っ赤に染まっていた。
「だから学校へ行かせてください、自分は絶対にあいつを許せないんです、お願いします」
今すぐにでも学校に走って殴り込みに行きたい気持ちを必死で抑え込む。
ここで怒りに任せても遠ざけられるだけだろうと感じ、あくまで冷静にお願いする。
「・・・・・・わかったわ、だけどこれだけは約束して。 感情に飲み込まれてその子を手にかけてはだめよ、そうなってしまったら今度は私達があなたを追わなくてはならなくなるの、いいわね?」
「わかりました」
その返事は小さかった。
大樹達作戦メンバーはすでに準備を完了しており、アリサさんと自分がパトカーに乗ったことにより、全員が学校へ向かう。
学校奇襲作戦が今ここに開始されたのであった。
東條 光 :カラーコード:#ff0000
レッド "銀色"
R:255 G:0 B:0
才能<魔力具現化>
伊延 大樹:カラーコード:#ffff00
イエロー "蛍光色"
R:255 G:255 B:0
才能<魔力探知>
澄川 拓海:カラーコード:#191970
スチールブルー
R:70 G:130 B:180
鷺森 千里:カラーコード:#9acd32
イエローグリーン
R:154 G:205 B:50
折原 深遊:カラーコード:不明
(水色?)
R:0 G:? B:255
才能<?????>