過去回想編 1日目②
学校からの帰り道、自分と大樹はこれからの遊び先の相談をしていた。
「光、どこいく?」
「んー、そうだなぁ、最近行ってなかったし、カラオケとかどうよ?」
「オッケー! じゃあ飲み物買っていくか、あそこドリンクバーないし」
「りょーかい、あそこのコンビニ寄ってこうか」
そう言って、指さした方向にあるコンビニに二人は向かう。
飲み物はコンビニの一番奥の方に配置されており、入口から入ってすぐ横の通路には雑誌や生活用品がならべてある
そこを通って飲み物コーナーに行き、二人は思い思いに飲み物を選ぶ。
二人が飲み物を選んでいると、レジの方にいたお客がざわつき始めた。
「おい! 金を出せ! この店ぶっ壊すぞ!? ・・・・・・じろじろこっち見てんじゃねぇ!」
コンビニの入口で、サングラスとマスクをかけ、全身真っ黒の服を着た、身長的に高校生くらいの男が店員を脅迫していた。
(馬鹿だ・・・・・・あいつ馬鹿だろ)
見たところ丸腰だ、よくあるモデルガンのようなものはもっていない。
周りの客は唖然としており、店員なんか失笑している。
動こうとしない周りに痺れを切らしたのか
「早く金を出せっていってんだよ!」
怒鳴り散らしている。
さすがに他のお客もいるので迷惑がかかると判断し、店員はその青年を取り押さえに向かう。
店員がこちらに向かってくると、青年は右手の手のひらに左手を添えて、前に突き出した。
すると、青年の手のひらから金属バットが"生えてきた"。
否、詳しくは手のひらを乗せたときに指輪から粘着質のある水のようなものが勢いよく流れ出し、金属バットが生成された。
これはずっと手を見ていた自分だからわかることだった。
彼は指輪をつけていた、それに気づいたのは店員が動いてからだったが・・・・・・
ゴンッ! と鈍い音が鳴り、店員がその場で倒れる。
バットには血のようなものが付いているが、死んではいないと信じたい。
客の中から悲鳴があげられ、ざわつきはじめる。
「この店員みたくなりたくなかったらここにいる全員財布を俺に差し出せ!」
やばい、被害がこっちにも及んできた。
隙を見て警察に連絡か、逃げるかしないと・・・・・・
「早くしろ!」
そう言って青年はバットをレジにたたきつけて破壊する。
ざわついて動かないお客達の中で一人だけ彼に近づく。
大樹だ、手には財布を持っている。
「お、物分かりがいいじゃねえか」
その青年が財布に手を伸ばそうとした瞬間、大樹が青年の顔を思いっきり殴った。
青年は隅にあった銀行のATMまで飛ばされる。
「皆さん早く逃げてください!」
大樹が叫び、他のお客をコンビニから逃がす。
(すげーな大樹! そういえば大樹の将来の夢は警察官だったか)
大樹は親も警察官という筋金入りだ。
凄まじい正義感で自分自ら率先して行動するとは・・・・・・この状況ではとても心強い。
大樹がお客を先導し、倒れた店員含め、お客の避難を完了させた。
最後に自分、そして大樹が逃げようとしていると、背後でのびていたさっきの青年が起き上がりだした。
「大樹! 後ろ!」
大樹に向かって自分は叫んだが、大樹が気づくより早く、青年は金属バットを生成し、大樹を殴りつけた。
大樹は入口の逆の方向にあるおにぎりコーナーへ飛ばされる。
当たり所がよかったのか、少し痛がって立ち上がる。
自分はとっさに雑誌コーナーにある生活用品棚の影に隠れる。
「お前頑丈だな・・・・・・、さてはお前も指輪持ちだな!? 面白れぇ、理事長の言う"特色"がどんくらいなのか試したかったんだ
この才能<スキル>もな 見た感じお前ニュートラルか? ハハッ、残念だがお前に勝ち目はねえ、大人しく俺の実験台になってもらうぜ?」
理事長? 特色? なんだか重要なことをペラペラとしゃべっている気がする。
あの青年の指輪の色は灰色・・・・・・だが、若干ラメ加工をしたのような光沢が見える、恐らく"銀色"なのではないだろうか。
推測した後、自分は鞄から指輪を取り出し、少し躊躇いながらも指にはめる。
(うお! ほんとにこれはすごいな・・・・・・)
一言でいうと、力が湧き上がってくる、という感じだ。
指輪がどのくらいの性能があるかわからなかったため、足止めだけして大樹と一緒に逃げるつもりだったが、
この分なら自分でも気絶くらいはさせれそうな感じがした。
(たしかに大樹一人だけだったら勝ち目はなかったかもな、そう、指輪持ち一人だけならな)
青年は大樹のいるおにぎりコーナーに向かってバットの先を向けてながらまだ何か話している。
自分は気づかれないように青年の背後である入口の方に移動し、大樹にアイコンタクトを試みる。
「・・・・・・!」
大樹がこちらに気づいた!
そして真剣な表情で逃げろと口パクをしている。
その瞬間
「何してんだァ!? 俺を無視すんじゃねぇ!」
そう言って青年がバットを振りかざす。
それに合わせて自分は走り出す。
「逃げろォ!」
大樹が叫ぶ。
「はぁ? 誰がお前を逃がすかよ、さっきは無視しやがって、もういい! くたばりやがれ!」
「お前がな!」
「何ッ」
青年は振り返りこちらを見る。
自分の突き出した拳は見事に青年の顔面にはまり、青年はおにぎりコーナーに顔を突っ込む。
その後、飛んできた青年を避けた大樹が、背後からおにぎりコーナーに入り込んでいる青年の頭をつかみ、左手を腰に当てさせ、床にたたきつける。
その衝撃で金属バットは青年の右手から離れ、転がっていく。
「光!」
「まかせろ! うおおおおおおおお」
「え?」
自分は転がってきた金属バットを拾い、青年の右手・・・・・・、指輪に向かって振り下ろした
パキーンッ! 指輪の核は割れ、中の銀色の液体が溢れ出す。
バットを振り下ろした衝撃だけでは指輪自体は壊れなかったため、自分は溢れる銀色の液体の中から指輪を取る。
「よし!」
「よし! じゃねぇよ!」
犯罪者を捕まえたというのに不満そうな大樹がこっちを見ていた。
「え?」
「え? でもない! いきなりなにするかと思ったわ!」
「え・・・・・・、でもさっき名前呼んだよね?」
「それは警察を呼んでくれって意味だったんだよ!」
「そ、そうだったのか・・・・・・でも指輪壊したほうが安全じゃない?」
「それはまぁ・・・・・・そうかもしれないけど・・・・・・」
――ピーポーピーポー――
遠くからサイレンの音が近づいてくる。
恐らく逃げた客のうちのだれかが通報してくれたのだろう。
コンビニの駐車場は瞬く間にパトカーに埋め尽くされる。
「通報者からの証言と一致、あなたたちが抑えててくれたのね」
パトカーの中から長髪の婦人警官服をきた美人警官が近づいてくる。
近くで見ると、黒い髪に若干ムラがある、染めているのだろうか?
「君たち二人にいろいろお話を聞きたいんだけどいいかしら?」
おっといかんいかん、あんまり見すぎると別の意味で逮捕されそうだ。
他の警官たちはことの発端である青年を運んでいる。
「はい、まず事の始まりなんですが・・・・・・」
後ろから大樹が事件の概要を伝えた。
「ありがとう、しっかり伝えておくわね、でも私が聞きたいのはそっちじゃないの」
「「え?」」
「君たちが今つけている指輪について詳しく教えてくれるかしら?」
なんと、この婦人警官は指輪のことを知っていた。
通報者の話から指輪関連の事件だと察し、同行したのだと言う。
「実は私こうみえても異世界から来たのよ?」
なんと、この婦人警官は異世界から--
「いやいやいや、俺らをからかってるんですか?」
「あら? 信じてくれない? こんな状況になったコンビニを見ても?」
さっきまで自分達がいたコンビニは、壁やらガラスのそこらじゅうにひびがはいり、商品はもちろんのこと、レジやATMなどのコンビニの備品まで破壊されている。
これを学生一人が金属バットで行ったなどといっても誰も信じないだろう。
「「た、たしかに・・・・・・」」
「まぁ、信じてくれなくてもいいわ。 私はその指輪をバラまいた犯人を捜しているの」
「「犯人・・・・・・ですか?」」
「そう! 異世界から禁忌を盗んだ極悪人をね!」
「「はぁ・・・・・・」」
「全然信じてないわね・・・・・・、まぁいいわ、ほんの些細なことでいい、何か思い当たることはないかしら?」
そんなこと急に言われたって、指輪貰ったのは学校からだし、学校いったら深遊も大樹も指輪してたし、
さっきまでコンビニで指輪をもった学生が理事長がどうとかさらっと言ってたくらいしか自分は知らない。
「そういえば理事長・・・・・・」
「え?」
「あ、いえ、さっきのコンビニ強盗が指輪について理事長がなんだの言ってたので、犯人ではないにしろ近い立場の人かなぁって・・・・・・」
「あー、そういえばこの指輪学校から貰ったんですよ」
「・・・・・・怪しいわね」
あ、やばい、なんかスイッチはいっちゃったかな? 婦人警官の表情が変わる。
その後、いろいろ質問され、わかる限り受け答えた。
「アリサさん、そろそろ・・・・・・」
「あ、ごめんごめん」
後ろから若い男性の警官が先ほどまで自分達と話していた婦人警官に話しかけた。
(アリサさんっていうのか、そういえば名前聞いてなかったな)
「私達はもういかないといけなくなっちゃったけど、まだいろいろと聞きたいからここに連絡してくれるかな?」
そう言ってメールアドレスをもらう。
「君たちはもう帰ってもらっても大丈夫だよ、それじゃあ待たね」
「「はい!」」
自分達が返事をすると、アリサさんと呼びに来た警官はパトカーに向かっていく。
「なんか疲れたな・・・・・・、そういえば体は大丈夫か? 大樹」
「ん? ああ! 今はどこも痛まないよ!」
「そうか、よかった・・・・・・これからどう--」
プルルルル・・・・・・
大樹の携帯から電話が鳴る。
「はい、もしもし・・・・・・母さん? どうしたの?」
携帯越しからでも今どこだ、だの今何してる、だの声がダダ漏れだった。
「うん、わかった、わかってるって、すぐ帰る」
大樹は電話を切り、こちらに顔を向ける。
「ごめん! なんか親がすごい心配してさ、多分さっきのことだと思うんけど、かえって来いって言われちゃった」
「うん、多分そうだと思ったよ」
だだ漏れだったからな
「この埋め合わせはしっかりするから! また今度な!」
「おう! お前も体に気を付けろよ!」
自分は大樹とコンビニに別れた。
別れ際に見えた大樹の指輪の核は微かに黄色がかっていた。
すっかり忘れていたが、この指輪色が変わるんだったな。
思い出した後、自分の指輪を見る。
「これは紫・・・・・・?」
紫よりちょっと明るめな感じだ。
さっき銀色の液体にを突っ込んだせいか、紫の中に金属光沢のような艶ができていた。
「なんか気持ち悪いなこれ、ちょっと最初に見た血バットに色合いが似てる気が」
指輪を触りながらそんなことを考えていると、 ゴトッ という音と共に金属バットが生成され、足の上に落ちる。
「痛てぇ! ってなんだこれ!?」
足元に転がった金属バットを拾う。
先ほどコンビニ強盗が扱っていた金属バットとは違うものだった。
(あれ、もしかして・・・・・・)
色が変化したことによって、コンビニ強盗の言っていた才能というのが開花したのかもしれない。
そう思い、自分は指輪のついている右手を突き出し、金属バットを作ろうとイメージする。
しかし、何も起きる気配がない。
(イメージするだけじゃだめなのか・・・・・・?)
今度は最初にコンビニ強盗がやっていたポーズ、というか指輪に手のひらを乗せてイメージする。
すると、少し時間はかかったが、金属バットが生成された。
(なるほど、指輪の核に触れていないといけないのか、バット以外もできるのだろうか)
そう思い、今度は小型のナイフをイメージする。
バットとは比べ物にならない速度で生成された。
(小さい方が作れるのも早いのか、まぁそりゃそうだよな)
今分かったことは、大きい物体より小さい物体の方が作りやすく、核に触れていないと生成できないということだ。
生成されたものは時間が経つと消えていった。
(いろいろ実験してみたいが、ここじゃ人目につくよな・・・・・・一旦家に帰ろう)
自分は周囲を確認し、人に見られていないか確認し、安心したところで帰宅する道へと歩み始めた。
東條 光 :カラーコード:#ee82ee
バイオレット "銀色"
R:238 G:130 B:238
才能【魔力具現化】
伊延 大樹:カラーコード:#f0e68c
カーキ
R:240 G:230 B:140
折原 深遊:カラーコード:不明
水色?
R:? G:? B:?
才能【?????】