68 人の道
俺が塒に帰って来ると大変な事態が起こっていた。
塒から森にかけてへのスペースに広がる焼け焦げた跡。
上空にまで漂ってくるいやな臭い。
俺は慌てて着地すると丁度ガルバスと金色の甲冑を着た男が戦っている所だった。
もうほぼ決着はついたようで締め上げられた男がうめき声を上げている。
メキメキと骨の潰れる音が響きガクンと男がうな垂れた跡もガルバスは締め上げるのを止めなかった。
怨みをぶつけるかの様な行為に俺は少し不思議に思って塒の方に視線を向けると左腕を火傷で動かせないほどダメージを受けたマコト。
そしてソレをささえるようにザルドが横に立っていた。
「ブラックさんお帰りなさい」
激しい痛みを伴う筈のマコトが俺に向けて無理に笑顔を作る。
それがまた痛々しくて見ているのが辛い。
「マコトお前それは……」
マコトは不老不死だが負った怪我が一瞬で直るわけじゃない。
だが俺の魔力を送れば少しは回復が早くなる筈だ。
そう思ったのにマコトは首を横に振った。
「大丈夫です……人間は火傷で命の危機に陥るのは体の40%を占めた時片腕なら20%程度、ブラックさんの魔力は温存しておいて下さい」
馬鹿な事言うな!
俺は自分の一度懐に入れた奴が大怪我させられて黙って居られるような性分じゃねーんだよ。
例えそれがお前じゃなくてザルドやガルバスでもだ。
遠慮を続けるマコトをザルドに押さえつけさせ無理やり魔力を送る。
回復魔法はロクに使えないがマコトの体の半分は俺の魔力で出来ているからその量が増えれば体の再生も早くなるだろう。
「ブラックさん……」
右腕なら一瞬で直ったかもしれないが俺が魔力を送ってもマコトの左腕は少しマシになる程度だった。
潰れた甲冑の男をガルバスがドサリ解放する。
俺は怒りをぶつける所を見つけられずほぼ形の残っていない男を踏み潰した。
「一体何があったんだ?」
ガルバスが俺の問いに答えた。
どうも5人組の人間が攻めて来たがかなりマコトの作戦が上手く行き全員倒したのだと…
その間にマコトはいつの間にか火傷した方の腕に布を巻きつけていた。
何時も思うがこういう手際は良いな……
「私こう見えても日本ではそれなりに……なのに今は……」
呟いた言葉は擦れて殆ど聞き取れなかった。
マコトはあまり自分の過去を語りたがらない。
俺も過去を話したいかと聞かれれば正直あまり言いたくないのが本音だしな。
無理に聞く事はしなかった。
だが思い詰めた表情に少し心配になる。
「どうした?」
訊ねてもマコトは首を横に振るだけ……そしてうそ臭い笑顔を浮かべた。
「ただ……少し私に覚悟が足りてなかった、それだけの事です」
そう笑うマコトの手は震えている。
「ちょっと冷やしに行ってきますね」
川へと向うマコトをザルドが支えた。
ふらふらした足取りのマコトにかける言葉が見つからない。
覚悟が足りなかった……か。
それは俺もかもしれない。
ガルバスと死体を片付けながらまだ考えが甘かった事に気が付いた。
俺が居ない時にココを襲われたら次は怪我だけじゃなく死者も出るかもしれない。
最近来ていなかった所為かどこか誰も来ないだろうと高を括っていた。
だがガルバスの報告を聞いて背筋が凍った。
今回の5人の他にウォズを殺した奴もこの森に来ていてソイツにやられた魔物の死体が放置されていたと言う。
……
言われて気配を探るがウォズの魔力はこの森にも溢れていて中々見つけられない。
木を隠すなら森の中というわけか。
かなり集中して探ってみたがどうにもはっきり解らない。
俺も察知はあまり得意じゃないからな。
仮にソイツを見つけたとして下手にココから離れるのは危険だ。
マコトは左腕が碌に使えないしガルバスも彼方此方に傷を負っている。
ザルドは見た感じ無傷に思えるが……
今俺がココを離れて襲われたら一溜まりもないだろう。
ッチ。
思わず舌打ちをしてしまう程イライラが収まらない。
俺は自分の物を傷つけられるのが一番腹が立つ。
どんな魔法を使っても一度死んだ奴は生き返らない。
もしマコトがガルバスが…ザルドが死んでいたら俺はコイツを踏み潰すだけじゃ済まなかっただろう。
実際今だって気が済まない。
ガルバスは器用に潰した死体から使えそうな物をより分けていた。
魔力を増幅をする宝石のついた杖に甲冑の破片。
それから剣に槍…と。
杖は一見便利そうに見えるが俺達の中に魔法攻撃をする奴が居ない今は宝の持ち腐れだ。
まぁ今後使う事が出来る奴が来るかもしれないから一応置いておくか。




