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悪と呼ばれた私  作者: える
覚悟の違い
67/69

67 草の音

聞こえてくる音、だんだん迫ってくるそれ。

それでも私達はここを守ると誓ったのです。



ザルドさんと談笑していると突然森の方からガサガサと草の根を掻き分ける音が響いてきました。

……たとえ何が来ても一緒にココを守ろうと誓ったばかり。

早速作ったばかりの布袋を掴みます。

視線だけで会話し、お互いに頷きました。

段々近づいて来るその音に私とザルドさんの冷や汗が止まりません。

所が草の根をかき別けて現われたのはガルバスさんでした。


「どうした?二人とも凄い汗だが……」


ホッとすると同時に体の力が抜けました。

このままではいけませんね。


「合言葉を決めませんか?」


私の提案に二人はキョトンとしました。

けれど……毎度こう緊張させられたのでは堪ったものじゃありません。


「塒の外から気配がしたら『今何時ですか?』……と私が叫びます」


そうしたら『オヤツの時間』と答えてください。

と説明するとやはり不思議そうな顔でしたので少しだけ付け加えました。

やり取りは少し意味不明な位の方が想像出来ないでしょう?と。


「なるほどな……わかった次からはそうしよう」


あっさりとガルバスさんも了承して下さりこうして合言葉が決まったのです。


「そう言えばガルバスさん森の様子はどうでした?」


ウォズさんを殺した敵がこの森に忍び込んでいるとガルバスさんは断言していました。

だからこそ私達は警戒を強めていたのですから。


「いや、残念ながら見つける事は出来なかった。アイツの持つ剣は既に魔剣と化しているからな気配で追えるかと思っていたんだが……」



ガルバスさんは独りごちていましたが私は言っている意味がよく解らず隣に居たザルドさんに視線を向けて見ましたが彼も首を傾げるだけです。

仕方ありません。

私は意を決してガルバスさんに訊ねてみました。


「どういう事ですか?」


私の質問にガルバスさんは気を悪くした様子も無く説明して下さいました。


「奴の剣はウォズ様を初め沢山の魔族の血を吸っている。主に心臓を貫いて、な。

心臓こそが魔力の源そこに触れさせる事によって魔力を削り取り蓄積させているんだ」


要約すると心臓を貫くと魔力を吸って剣がパワーアップという事ですね。

倒せば倒すほど強くなる……考えれば厄介な相手です。

出来れば早めに手を打ちたい所ですが……

考え込んでいる私の後ろでガルバスさんが叫びました。


「侵入者が入って来た!」


え?何処ですか? 

私とザルドさんは辺りを見回しましたが敵は見えません。


「まだ森の中腹だが……5つ?人間の臭いを感じる」


五人も!? 

例の勇者でしょうか。


「こちらに向っている様だな」


淡々と話すガルバスさんに私とザルドさんはお互いを見つめて頷きあいました。

焚き火を準備し火薬をできるだけ手元に持って来る。


ガルバスさんに私達の作戦を話して後ろに隠れて頂くことにしました。

相手が怯んだ所に奇襲をかけて頂こうという作戦です。


大丈夫、きっと上手くいく。


私は自分にそう言い聞かせ何度も深呼吸を繰り返しました。


「どんどん近づいて来ている。後半日もあればここに来るかもしれない」


半日。

長いようで短いその時間に火薬の他に投げれる石なんかも出来るだけ手元に持って来ました。


出来る事……出来る事。


それだけを考えていましたが今まで戦った事の無い私が何かなんてそう思いつきません。


「俺はコレも使う、マコトは使えるか?」


ザルドさんからそう言って渡されたのは長弓。

何時の間にこんな物を作っていたんですか!?


「俺、元々はコイツで狩りもしてたし結構得意なんだぞこう見えても!」


えっへんと腰に手をあてて威張るザルドさんに思わず噴出してしまいました。

なんとなくイメージ的に赤鬼さんが弓って感じしないでしょう? 

まぁこれは単なる偏見なんですけどね。


残念ながら弓道部に入っていたわけでもない私が1~2時間練習した所でまともに戦えるとは思えません。

2~30回打たせてもらいましたがまっすぐすら飛ばず今回使うのは早々に諦めました。


「臭いが近い……そろそろ来るぞ!」


ガルバスさんの声に私達はもう一度作戦を打ち合わせました。

まず真っ先に私が出て会話を試みます。

その間塒の奥にザルドさんは隠れたまま弓で相手を狙い、ガルバスさんは森の入り口付近の穴で待機。


向こうが引いてくれれば良し。


あくまで戦うと言うのなら……


ガルバスさんが穴の中に隠れて数分もしない内に草の根が揺れる音が聞こえて来ました。

私は最後にザルドさんの方を振り返り……大丈夫、彼の目がそう言ってるのを見て少しだけ安心したのです。

後ろ手に布袋を3つ隠し持って塒から3歩だけ進んだ位置で私は敵を待ち構えて居ました。


現われたのは明らかに勇者!といった5人組。

先頭をきって現われた男は槍を握ったパンチパーマのいかつい男。

その直ぐ後ろに剣を握ったスキンヘッドの男と高そうな金色の甲冑を来た男が続きいかにも魔法使いです!と言わんばかりの長い帽子を被った背の高い男。


回復担当と思われる女性が最後に見えました。


「いらっしゃいませ。」


にっこりと笑顔で話しかけてみました。

相手の5人は私を見てとても驚いているようでした。

まぁそうでしょうね、魔王を倒しに来て相手がこんな人しか居ないのでは拍子抜けも良いトコロでしょう? 


「どういうことだ?」


リーダーらしき金色の甲冑を着た男が静かに私に問いかけました。

良かったどうやら一応言葉は通じるようです。


「何もお構いできずに申し訳ありません。早速ですがお帰り下さい」


相手は私を警戒してはいるようですがまだいきなり襲い掛かってくるような真似はしてきません。

このまま黙って引いてくれれば一番なのですが。


「ここに魔王が居る事はわかっている…魔王は、黒いドラゴンは何処にいる!?」


スキンヘッドの男が苛立った声でがなり立てる。


「ココには居ません」


私の言葉に5人全員が顔を合わせ頷きあいました。

……この空気は嫌な予感しか感じません。


「隠し立てしても解っているんだ!どうやらお前も手先のようだな容赦しないぜ!」


甲冑の男が叫ぶと全員が武器を構えました。

これは……駄目ですね。

次話 グロ要素が入ります。

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