66 火葬
空へ帰っていく、あなたの意思を私は継げませんが……きっと誰かが継いで下さることを祈っています。
これしか私には出来る事が無いのです。
「埋めてやろうか」
リューさんの言葉に私は彼女が亡くなった事を改めて思い知らされました。
こちらに来てから人が亡くなる場面に立ち会ったのは初めてですから……
いえこれは言い訳ですね、私は単純にリリィさんが亡くなった事を認めたく無かったのです。
「ココでは土葬が普通なんですか?」
同じ土葬にするにしてもリリィさんの帰りたい場所はここでは無いでしょう。
私の質問に首を傾げるリューさんに土葬が通じなかった事に気が付きました。
「私の所では遺体を焼いて火葬するんです……空へ上っていけるように」
まぁ理由は色々ありますが伝染病などで亡くなった場合の土地への汚染や単純に量を減らすなんて意味も大きいですけどね。
そんな事を口にはせずリューさんの方をみると少し驚いた表情をしていました。
「空へ、か……そうすれば森へ帰れるのかもな」
見上げながらポツリと漏らしたリューさんに私は小さく頷きました。
それにしてもリリィさんもまだ若いのに……こんな事になってしまうなんて……
私がそう呟くとリューさんが目を見開いて驚いていました。
「若い……?俺より上かそう変わらない歳と思うけどな」
え?リリィさんって成人されてたんですか!!?
勝手にもっとお若いかと思ってましたよ。
でも私の国では50代以下で亡くなれば『まだお若いのに……』と言われるのが普通ですので問題ありません。
「リリィさんの意思を継ぐ人は現われるでしょうか?」
私の言葉にリューさんは難しい顔をしました。
……そうですよね。
自分にだって出来ないのにこんな事を言う私はどうかしてるに違いありません。
火葬する前にせめて何かお花でも手向けようと思ったのですがシロツメクサしか周囲には見当たりませんでした。
リリィさんには地味過ぎてあまり似合いませんがこれも仕方ありません。
せめてもとリューさんと一緒になって数を揃えてみました。
これで少しは華やかに見えるでしょうか?
私は一度家に戻って……他人の家を探るのは気が引けましたが探していたハサミを見つける事が出来たので持ち出してきました。
不思議そうな顔をするリューさんを尻目に私はリリィさんの長い髪を切って遺髪を纏めました。
「これ位は届けてあげようかと思いまして……」
そう伝えましたが本当は臭いを少しでも抑えたかったと言うのがあります。
人を燃やすと凄い悪臭がします……日本と違って火葬環境の整ってないここでは相当でしょう。
爪や髪などのタンパク質が特に臭いの原因になるので少しでも取り除いておこうかと……
「そうか」
けれどいつかリリィさんの故郷へ持って行ってあげたいとは本当に思っているんですよ。
私には特にしないといけない事も無いですし、ね。
薪でリリィさんを被って火を付けました。
想像以上の臭いに吐き気がしてきましたが私が言い出した事。
咳き込むのを耐えながら上がっていく煙をリューさんと眺めていました。
何も言葉を発さないリューさん。
遺骨はやはり村の中から頂戴した瓶の中に少し入れました。
「リューさん、リリィさんの森の場所ってご存知ですか?」
私の質問にリューさんはとても驚いた顔になります。
「マコトは知らないのか?」
……どうやらこちらの世界ではリリィさんの森はとても有名なようです。
そういえばブラックさんも知ってるような口振りだったような気がします。
「ええ、宜しければ地図かなにか描いて頂ければありがたいんですが……」
図々しいとは思いつつお願いしてみるとリューさんはため息を一つ。
「俺も行くよ」
え?
そうして下されば確かに私は助かりますが……




