64 焼失
なくなった。
面倒な奴だと思っていた。
けれどソイツに希望を持っていた事も否定できない。
さて次は…
そんな事を考えながら飛び上がると嫌な煙が目に入った。
何かが燃えている。
急いで煙の方へ向う。
この方角は確かリリィの森が…
俺が着いた頃にはもう既に遅く森の半分が焼け落ちていた。
必死で消化したが元々俺は炎を出すのは得意だが消すのは苦手だ。
三分の一以下になった森を眺めながら俺は奥へ目指す。
この森一番の大木。
禄に話した事もないが噂は色々転がって来た。
俺の背丈よりも何倍も大きいソレはとても目立つ。
真直ぐ進むだけで見つけるのはとても簡単だった。
「お前が…リリィの言っていた…」
森の一番奥に有った為か火はココまで届いて居ない。
『…リリィには悪い事をしてしまいました』
俺はソイツの言う事が理解出来ずに眉を寄せた。
『リリィは私とではなく森の中腹にある木と契約させて居たのです』
その言葉でハッとした。
チラリと後ろを振り返る。
中腹はもう燃えてしまってない。
っと言う事は…
『目立つ私は狙われる事が多い、そう考えての事だったのですが…』
抑揚を感じない冷たい声だ。
一応探ってみたがリリィの魔力を感じる事はもう出来なかった。
『私の失敗でした優しい子でしたのに』
その言葉すらどこかうそ臭く感じる。
俺はこれ以上コイツと話していても無駄だと感じてこの森を飛び去った。
マコトと暮らしだして人間と魔族が平和に暮らせれば良いと少しだけ思うようになった。
俺から歩み寄る気は無かったが人間の方から折れてくれれば…
それにもう俺から歩み寄る事は許されない。
そういう立場に俺はもういるのだ。
リリィには少し…ほんの少しだが期待していた。
あれだけ一生懸命な奴だからいくらか人を動かしてくれるかもしれないと。
違う方向でも動かしては居たが。
森から飛び去りながら俺は次の目的地の事だけを考える事にした。
考えを変えないとな…
そうは思うが落胆する気持ちは簡単には無くならない。
駄目だ、この想いに引きづられても面倒なだけだ。
この森を燃やしたのははっきりと解らないが恐らく人間だ。
大きな魔力を感じないからな。
馬鹿なヤツらだと思う。
俺達とまともに戦って勝ち目なんかある筈無いだろうに、それすら理解できないとは…
小さく息を吐き出し目を閉じ周りの感覚に集中する。
遠くから聞こえてくる波の音。
流れる風。
森の葉音…
感覚に集中する事によって一度考えを落ち着け冷静な俺が帰って来る。
今俺がすべき事それは…




