62 来訪
やっとリューさんと二人、それなりに落ち着いた生活が出来ると…そう思っていたのに…
赤く染まった地面に私は何もする気が起きずただ座り込んでぼんやりしていました。
後悔はしてもしきれません。
恩人を見殺しにしてしまった。
私はなんて最低な人間なのでしょうか。
泣きそうになるのを根性で止めました。
私に泣く価値などある筈もないのです。
何も出来ずにただ虚空を見上げてぼんやりしていると私の後ろから足音が聞こえて来ました。
リューさん!?
慌てて振り返りますがそこにはリューさんの姿は見ません。
変わりに歩いて来たのは…
ピンクの髪にツインテール、額に星型の刺青。
彼女は私を見るなり驚いて目を大きく見開いた後両手を口元へ運んだ。
「生きてたんだ!」
私はリリィに頷きました。
彼女とは真っ二つにされて以来お会いしてませんでしたから…
「今もあのドラゴンとは一緒なの?」
小さく首を横に振りました。
私は一緒ではありません。
でも…今も一緒にもう一人の私が一緒に居ます。
っと言っても彼女にはきっと理解出来ないだろうと思うので私は何も言いません。
「私…もう助からないと思って…逃げちゃって凄く後悔したの」
俯くリリィに私は何も言えないでいました。
逆の立場なら私だって彼女と同じ行動をしたに違いないと思うのです。
突然人が真っ二つにされて平然となんてしていられる筈もありません。
「生きてて本当に良かった…」
瞳一杯に涙を浮かべて下さるリリィに私は何を返して良いのかわかりません。
「今はどうしてるの?」
リューさんと一緒にと口を開きかけた所で私の真後ろから足音が響いてきました。
慌てて振り返るとそこにはリューさんが息を切らせて立っています。
ああ良かった、無事だったのですね!
「リリィ…マコトと知り合いだったのか?」
リューさんの言葉に驚いたのは私です。
お二人も知り合いなのですか?
世間は狭いですね、本当に。
「ええ、私とマコトはドラゴ…」
言葉の途中でリリィは白目を剥いてドサッと膝から崩れていったのです。
え?
私は慌ててリリィさんの側に駆け寄って腕を掴みます。
咄嗟に取った脈は…ありませんでした。
一体どうして!?
「まさか…」
リューさんはそう呟いて倒れたリリィの体を抱き起こしたのです。
体を抱き起こした後リューさんはリリィの顔を覗き込みました。
白目を剥いたままの彼女の額にはさっきまで有った筈の刺青が消えているのです。
「何が…」
理解できない私がリューさんに尋ねるとリューさんは俯いて唇を噛んでいました。
血が顎を伝います。
「契約が切れたんだ」
呟いたリューさんの言葉は私の頭の中で直ぐに処理出来る物では有りませんでした。
契約は魔族と結ぶもの。
破棄・解除は出来ないのでしょう?
「リリィの契約相手の木が焼かれた、か切られたんだ…と思う」
契約相手と命を繋ぐ。
確かブラックさんもそう仰っていました。
まるで魂を引っ張り出されたかのようにあっさりと逝ってしまったリリィ。
私はリリィの瞼を閉じさせてあげました。
志半ばでこんなアッサリと逝ってしまうなどさぞ悔しい事でしょう。
「俺は何度もリリィに説得されてたんだ、そういう風な世界がくれば理想だとも思う。だが俺は村を潰した魔王を許せない」
複雑な表情で呟いたリューさんに私は黙って聞いていました。
リリィさんはきっとどちらからも疎まれて居たのでしょう。
仲裁役というのはそんなモノです。
辛いですね…




