60 勧誘
このままではいけない。
あと仲間をどれだけ増やせるか…
それが俺達のこれからを決める。
勢いで飛び出して来たのは良いが宛があるわけじゃない。
だが…方向性はある。
俺にしろガルバスにしろ水中が得意とは言えない。
勿論マコトやザルドもだ。
だからココは水中が得意な奴が欲しい所だ。
後は俺以外にも空中戦が出来る奴が居ればなお良しっていった所だな。
とりあえず一番欲しいのは水中活動できる奴だ。
森の中を通る川からも監視出来ればより強固になるしな。
とりあえず俺は海岸に下りると辺りを見回した。
静かなソコで俺は吼える。
「俺に挑んでくるような度胸のある奴は居ないか!」
返事は…勿論無い。
ここまでは予想通りだ。
明らかに自分達が不利な地上戦に出てくるのは無謀過ぎる。
勿論俺が水中戦を挑むのも同じ事だが。
そう考えながら俺は水の中へ潜っていく。
深く深く…
魔力で層を作れば短い間なら俺でも潜っていられる。
だが、それはもって一刻。
「私の縄張りで勝手な事をしないで頂きたい」
あたり構わず殺気を飛ばしているとどうやらこの辺りの主が現われた。
俺と同じ位の体格をした大きな魚。
言葉は丁寧だがその節々から沢山の棘が出ている。
掛かった。
後はコイツを痛めつけて俺が勝てれば良い。
…この水中でソレが出来るかどうか、が問題だけどな。
水中では炎を吐く事は出来ない。
少しなら出来るかもしれないが相手にダメージを与える事は不可能だと思って良い。
っとなると俺の選択肢は必然的に限られてくる。
ましてココでは俺の動きは格段に鈍い。
睨み合いを続けながら俺はどうするのが一番有利に運べるか考えていた。
俺から向っていっても確実に避けられる。
相手が来るのを待つ方が賢明だ。
だがソレは相手だって解っているのか中々動かない。
だったら動いてもらう他無い。
俺はわざと視線を少しだけずらした。
途端に向ってくる相手に爪を立てる。
深くは刺さら無かったが捕まえる事が出来た。
逃がすわけにはいかないだろ?
おもいっきり被り付く水中では勢いは殺されるが俺の牙の鋭さは変わらない。
だが暴れまわる俺と同じ体格の奴をココでいつまでも押さえつけることは不可能だ。
背中の羽を大きく羽ばたかせ一気に浮上した。
「んなっ」
慌てる相手。
だがもう遅い。
このまま丘に上げて戦えば俺の勝ちは見えている。
だが俺は水面から体一つ分だけ飛び上がった所で止めた。
元々コイツを殺しに来たわけじゃない。
そのまま口をあけ開放してやると奴は水の中に帰っていく。
…このやり方では駄目だ。
これじゃ俺はただ喧嘩を売りに来ただけになってしまう。
「俺はお前と戦いに来たわけじゃない」
水面に向って話しかける。
奴は少しだけ水面から顔を出して俺を眺めていた。
「少し協力して欲しい」
相手の返事は無い。
だが俺は言葉を続ける。
「俺は自分の森を守りたい、その為に力を貸して欲しい」
目を丸くして俺を見ている。
確かに俺は焦りすぎていた、コレじゃ勧誘というよりは征服だ。
「私はここを離れるわけにはいかない」
返ってきた返事にそうだろうなと納得する。
明らかにこの辺りの主クラスだ。
「だがお前はさっき私を殺さなかった」
主は協力しようと…答えてくれた。
ありがとう…俺はそれ以外を口にすることが出来なかった。




