59 覚醒
私に出来る事をする。
それ以外に道は残されていません。
だから…
ブラックさんが塒を飛び出して行って半日程してからザルドさんは目を覚ましました。
焦点の合わない目で私の顔を暫く眺めていましたが10秒もしない内にフッと笑っていつも通りに話出しました。
「お互い生きてたんだな、良かった」
安心したように笑ったザルドさんですが私の後ろにいるガルバスさんに気が付いた途端その表情が強張ったのです。
考えれば当たり前の事。
「今日からこのガルバスさんも一緒に暮らす事になりました」
私が告げるとザルドさんは何か言いたげに口をパクパクと動かしていますが全く言葉になっていません。
ですが言いたい事はわかります。
私も同じ気持ちでしたから。
「え…あ、そういやブラックさんは?」
後ろのガルバスさんが気になるのか話題を変えてブラックさんの事を尋ねてきます。
それも多分ザルドさんにはショックな話題には違いないだろうと思いますが…
「ブラックさんは勧誘に行かれました」
私の言葉にザルドさんは目をこれでもかという位見開いて驚いています。
そうですよね。
今まで私たちは3人ここで平和に過ごしてきました。
ザルドさんだって人間に恨みはあるんでしょうが、今の生活が楽しいと二人で畑を作っている時に言って下さいましたから。
「ブラックさんが…?」
私は大きく頷いてザルドさんの腕を掴みました。
「その間私たちはココを任されました、ザルドさん一緒に頑張りましょう」
私たちと強調しましたが正確にはガルバスさんが任されたのです。
けれど…私たちだって負けてなんて居られません。
「北の方に嫌な臭いがする…見て来よう」
私がザルドさんと話しているとガルバスさんが突然呟きました。
嫌な臭い?
「お気を付けて」
振り返ってそう言うのが私の精一杯でした。
戦闘能力ではどうやったって私達二人がかりですら敵わないのです。
何か…何か方法を考えねば…
「ザルドさんブラックさんは戦争を始めるつもりのようです」
そうなれば私達のような者達はどんどん立場が無くなっていくでしょう。
このままでは良くないのです。
「そうか…だったらマコト、この前言ってたアレ作ろうぜ!」
ザルドさんの言葉に私は右手を口元に当て少し考えていましたが…
確かに他に良い手は浮びません。
かなり危険なので準備はしつつも躊躇っていたのですが、この前の木炭の粉も元々はアレの為に準備した物です。
火薬。
そう黒色火薬を作ろうと思っているのです。
ブラックさんやザルドさんと話している内に解ってきたのですがこの世界には銃は勿論の事火薬も存在しません。
だからこそゆくゆくは火縄銃のような物を作れればと思っています。
火縄銃を舐めてはいけません銅の板すら貫く威力だったと昔本で読んだ記憶があるのです。
ただ…その構造自体はあいまいな記憶ですが。
まぁその前に黒色火薬を作れなければ意味がありません。
いつもブラックさん連れて行って貰う温泉の近くで硫黄を拾えた事がこの計画を思いついた切欠でした。
硝石はあまり綺麗な取り方をしなかったので深くは思い出したくもありません。
黒色火薬についてはまだ学生の頃読み漁った小説にちらりと出てきた製法なので私も作った事も無いですし、正直出来上がった物がそれで完成したかどうかもわからないのです。
もっと色々な事に興味を持っていれば…と今更ながら後悔してしまいます。
黙り込んでしまった私をザルドさんは覗き込んで笑いました。
「まぁやってみようぜ!諦めるのはそれからでも遅くない…だろ?」
ザルドさんの言葉に私は元気付けられて一歩を踏み出す決意が出来ました。
何もしないよりは何かした方が良いに決まってます。
明るく笑うザルドさんにはいつも元気付けてもらってばかりです。
最初に仲間になって下さったのが彼で良かったと心底感じます。
そうと決まれば早速私たちは準備に取り掛かりました。
ガルバスさんはまだ戻ってきてないので丁度良いですし。
塒の外で木炭を削って大量の粉を作っていると苦い顔のガルバスさんが戻ってきました。
何かあったのでしょうか?
無視したい所ですがそうもいきません。
私は作業の手を止めてガルバスさんに訊ねました。
「森の中腹にワグナの死骸が捨ててあった。そいつは同じウォズ様の部下だった仲間だ」
ワグナさんという方が森の中で死んでいた?
一体どうして…
「解らない、だが刺し傷だらけのあの体から見ても殺された事は間違いない」
殺された!?
この森の中…で?
「微かにウォズ様の魔力を感じた、ウォズ様を殺した奴がワグナも殺ったに違いない!」
興奮状態のガルバスさんはワナワナと震えている。
ウォズさんを倒した人がこの森に!?
と…言う事は普通に考えてもブラックさんを倒しに来たのでしょう。
ワグナさんの件は宣戦布告だとしか思えません。
「俺は森を一周してくるが…そいつがココにくるかもしれない。油断はするな」
その言葉に私とザルドさんは頷きました。
ここを任された以上私達がやるしかないのです。




